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【第20章】喧嘩祭り編

20-34【明日を求めて】

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俺は森の中から一角鬼五匹を連れてきて玄関前に縛って並べた。

それにボロ屋敷の三階から二角鬼と、地下から三角鬼、四角鬼、五角鬼も連れてきて玄関前に並べる。

大怪我を負っている鬼たちにはヒールまで掛けてやる。

そして、手足を縛り上げたギレンを爪先で突っつきながら言った。

「なあ、ギレンのオッサン。こいつらを人間に戻してもらえないか~?」

手足を縛られ横になっているギレンが述べる。

「分かった、術を解く。だから俺の両手を自由にしてもらえないか。指で印が組めないと術が唱えられないんだ」

「ああ、分かった。その代わり、余計なことをしたらクロスボウで頭を射抜くからな」

俺はギレンの頭にラージクロスボウ+2を突き付けながらキシリアにロープをほどくように指示した。キシリアが一旦ギレンの両手を自由にしてやる。

するとギレンは指を絡めて印を組むと呪文を唱え始める。

「ぅぐぐぐ……」

ギレンの呪文に鬼たちが苦しみだした。気を失う者も居た。だが、みるみるうちに鬼たちの般若のような表情が緩んで穏やかに変わって行った。その顔はまるで成仏できたかのようにも伺える。

「おお、人間に戻ったぞ」

鬼だった一人が言う。

「ここは、どこだ……?」

「ガルマルの町外れに有るギレンの屋敷だ」

「ギレン……。呪術師のギレンか……」

「そうだよ。あんたら、記憶は有るかい?」

「確か俺は、畑を取られた恨みを晴らすために……」

そこまで言ってから男は俯き口を閉ざしてしまった。自分が他人を呪った記憶は残っているようだな。

「まあ、いいさ。深く考えるなよ。だからさ、人生をやり直せ。次は誰かを呪うなよ。今回みたいにろくなことにならないぞ」

俺は鬼だった連中のロープをほどいて解放してやった。そして、ギレンを縛り直すと皆でガルマルの町に帰る。

縛っているギレンはキシリアが乗ってきた馬に背負わせて運んだ。

「じゃあ、たっしゃでね~」

ガルマルにあるリリィの酒場亭の前で鬼だった連中と別れた俺は、馬の背中で腹這いに背負わされているギレンに言った。

「じゃあ、俺たちはドズルルの町に帰ろうか~。お前、ギデンに突き出されたら牢獄に幽閉だってさ~」

「ぐぐぅ……」

ギレンは悔しそうに地面を見詰めていた。するとキシリアが言う。

「アスラン様、申し訳ないですが、ギレンお兄様の身柄は私に任せてもらえませんでしょうか……」

「どう言うこと?」

「ギレンお兄様を王都の魔法学院に連れて行こうと考えております」

「なんでさ?」

「魔法学院の学院長とは話が付いているのですが、お兄様を呪術師の講師として迎え入れて貰う予定です。兄様さえ良ければ……」

「なるほど、それは名案だな。この世界だと呪術はレアな妖術なんだろう。ならば魔法学院で研究したら人の役に立つかも知れないしな。でも、ギレンはそれでいいのか?」

「幽閉されるよりましな話だな……」

「でも、俺はギデンになんて報告したらいいんだ?」

「そのままで構いません。私がギレンお兄様を王都の魔法学院に連れて行ったで……」

「まあ、お前らがそれでいいなら、俺は構わないよ。何せそもそもがお前らの家の家族問題だったんだからさ~」

「感謝します、アスラン様」

「じゃあ、最後にギレンに訊くけどお前の力で俺に掛けられている呪いを解除できないか?」

するとギレンが首を傾げた。

「何を言ってるんだ。キミに呪いなんか掛かって無いだろ?」

「いやいや、よ~く見てみて、俺は女神アテナに呪われているからさ!!」

ギレンが眉無しの強面を俺の顔に近付けながら凝視した。ジィーーーっと見詰める。

「いや、やっぱり呪われてなんていないぞ」

「畜生!!」

やっぱり糞女神の呪いは呪いじゃなくてペナルティーなんだ!!

呪術師でも解けないペナルティーなんだ!!

「わ、分かったよ。サンキューな……」

俺は肩を落として力無く手を振った。するとギレンとキシリアの兄妹は、馬にニケツで町を出て行った。

「はぁ~……」

俺は深い溜め息を吐きながらリリィの酒場亭に入って行った。店の中ではお客たちが静かに酒を煽って居る。

「さて……」

俺はカウンター席に腰を下ろすと女将さんに飯を注文した。

「なんか、すげ~油っ濃い肉料理を頼むぜ。今日はやけ食いがしたい気分なんだ」

「はいよ~」

俺は糞女神の言葉を思い出していた。

確か女神のペナルティーが解けるのは、レベル100になった時のボーナスだって言ってたよな。

俺、まだレベル49だよ……。

レベル100まで、まだ半分も越えていないのに、まだまだレベルを上げないとならないのか……。ちょっとキツイ話だよね。

何より、まだまだエロイことをするのに倍以上頑張らないとならないのがキツイよね……。

「はい、お待ちどうさん。分厚いステーキだよ~!」

「サンキュー」

俺はカウンター席で肉に齧り付きながら誓った。

「よし、明日から頑張ろう!」

とにかく、絶対ペナルティーを解いてスバルちゃんとエロイ夫婦生活をイチャイチャとエンジョイするのだ。それが唯一の希望である。

あたたたった……。心臓が……。エロイ期待だけで呪いが痛むぜ。

「マジでエロイのが恋しいわぁ~……。ステーキ、うま……」

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