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あやしや菓子屋にいらっしゃい③
しおりを挟む俺は経理部で仕事している。
先程の同期は営業部で、他の同期もバリバリ仕事をして地位を固めているが、俺はそういうのに興味がない。誰かと競争なんて疲れるだけだ。
「柏原くん、おはよう。」
「おはようございます。」
女性が多い部署だが、僕みたいな人は彼女たちの射程範囲内に入らない。そこも気楽でいい。
恋愛がしたくないわけではない。友だちの結婚に焦ることもある。でもじゃあ、そんなに結婚したいかと冷静に考えるとそうでもなかったりする。
「何か考え事ですか?」
「え?あぁ、ちょっとね。」
「へぇ…。」
隣の席の彼女、金田さんは少し納得していない様子だが話したところでどうにかなる話でもないというか。俺自身もどうしたいとかなく、ただ驚いただけなので話しようがない。
金田さんは俺の一つ下の代で入ってきた社員で、よく話しかけてくれる。優しくて明るい人だから、俺以外とも話しているんだけど。
仕事を始めて数時間経って、コーヒーを買っていないことに気づいた。
後で買いに行くか。
新年度が始まったばかりで、教育係にこそならなかったがその分の仕事がこちらに回ってきている。
できれば糖分を補給したいところだが、運動が好きではない上にオフィスワークだからひどい運動不足になっている。糖分の過剰摂取は控えている。
女子がどうとかより、太るのは自分が許せない。
「柏原さん、お昼の時間ですよ。ランチ行きませんか?」
「お誘いありがとう。でもキリがいいところまでやってからお昼取るから。先に行ってきていいよ。」
「え~、待ってますよ。」
「いいよ、申し訳ない。」
「そんなこと言って、いつも断るじゃないですか。」
落胆させたいわけじゃないのだけど、彼女狙いの男は多い。一緒にご飯にでも行ったら、夜中に背後を気にしないといけなくなる。そんなのは真っ平ごめんだ。
ビル内のカフェでランチをしつつ、その後に飲む用のコーヒーを購入することにした。
端っこのテーブルに腰掛けるとポケットに入れてきた金平糖を出した。
「すいません、ここいいですか?他に席がなくて。」
「どうぞ。…あ。」
「こんにちは。」
向かいの席に座ってきたのは、昨日の菓子屋の店員だった。それにちゃんと見てみたら、他に空いてる席はたくさんある。
つまり、彼女は俺がいる席にわざわざ来たんだ。
「昨日ぶりですね。店内に持ち込みはどうかと思いますよ?」
金平糖を見ながら、面白そうに言う。
「私はうちの店のものを持ってもらえて嬉しいですけどね?すいませ~ん!」
「はい。」
「サンドイッチください。もう頼まれました?」
「俺は頼みました。」
「そうですか。じゃあ、以上です。」
「かしこまりました。」
こうして見ると、昨日のどこか儚くて怪しい雰囲気の彼女とは違って、明るくてハツラツとした印象を受ける。
「同じビル内で働いでいたんですね。」
「えぇ、今朝見かけてびっくりしちゃいました。」
ニコニコと笑う目の前の女性は、本当に昨日と同じ人なんだろうか。
「昼も夜も働いてるんですか?」
「まぁ、そうなりますね。あっちは家業なんです。」
「家業?」
「はい。」
あんなところに、家業と言えるほど長い期間お店があっただろうか。
「お待ちしてますから、また来てくださいね。」
「…はい。」
怪しい店ではあるけど、身元ははっきりしているようだし。もう1度くらい行ってもいいだろう。
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