憧れの騎士は幼馴染

都築稔

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もう懲り懲りよ。

初めての社交界だけど、こんなに朝早くから準備するとは思っていなかった。

朝の4時ごろに起こされ、まずはバラの花びらが入ったお風呂に入れられた。いい匂いの石鹸で身体中洗われたと思ったら、いつの間にか香油をぬりたくられてマッサージ。バッキバキの私の身体を揉みほぐし、浮腫が取れたすべすべもちもちボディにしてくれた。

ここまででお昼時くらいになっていたように思う。それでもご飯を食べる暇はなく、私のお腹の音はメイドたちに無視された。

「お姉さまぁ~。」

様子を見に来たお姉様に助けを求めた。

「ふふふ、綺麗になるのは大変なのよ?もう少し辛抱なさい。」

そうして、夕方ごろになってやっとご飯にありつけた。

だというのに。

「うぅ~、コルセットを締めすぎよ。これじゃあ苦しくてあまり食べれないわ。このままじゃ、倒れちゃう。」

領地で伸び伸びと過ごした私は、こんなにキツくコルセットを締めたことなんてなかった。噂には聞いていたけど、これほどとは。

「大丈夫よ、1日くらい。それにパーティーでも料理はあるわ。少しずつ食べたらいいのよ。」

そんな器用なこと、私はできないわ。ただでさえ、緊張しているというのに。しかも、お相手は初めましての方じゃないの?そんな呑気なこと言えないわよ。

諦めて、お姉様の言う通りに少しずつ食べることにした。無理して吐くのも嫌だし、だからといってお腹が空いて倒れるのも嫌。そんなことになったら恥ずか死ねるもの。

「それで、お母様のお呼びした殿方はいついらっしゃるの?」

「もうそろそろじゃない?」

お姉様は自分のアクセサリーを選んでいて、まともに相手してくれない。

パーティーに来てくれないよりマシだけど、私は初めてなのよ?もう少し緊張ほぐしに付き合ってくれてもいいと思うわ。


コンコンコン

「シュリー、僕だ。入っても大丈夫かな?」

「ダイアンだわ。大丈夫よ!」

お姉様の旦那様、私にとってはお義兄様がお姉さまを迎えにやってきたようだ。

「おぉ、スミレちゃんも久しぶりだね。デビューおめでとう。」

「ありがとう。ちっともめでたい気分じゃないけどね。」

「もう、そんなこと言わないの。」

この雰囲気、このままここにいたらめんどくさいことになりそうね。

お姉様とお義兄様は結婚して5年は経つけど、今でもラブラブ夫婦なのだ。このままいてお熱い空気に当てられて、気まずい思いをするのはごめんだわ。

「じゃあ、また後でね。」

「えぇ、お相手の方によろしくね。」

よろしくったって、どんな方かも知らないのにさ。あぁあ、嫌になってきた。このまま逃げちゃおうかしら。

でも、私にそんなことをする勇気があるわけない。代わりに、気分転換をと思って庭を歩くことにした。

せっかくのドレスを汚さないように歩くのは神経を使う。
そろりそろりと歩き、花を眺めていた。

だから、後ろに人が来ていることに気づかなかった。

「おい、」

「え?」

パッと振り返った私は、バランスを崩した。

「危ない!」

気づいたら、男性の腕の中にいた。
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