憧れの騎士は幼馴染

都築稔

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「あ、ごめんなさい。この高さのヒールに慣れていなくて。」

慌てて男性から離れた。

「い、いや。大丈夫だ。」

恥ずかしくて、すぐに顔が上げられない。

「スーは大丈夫か?どこか怪我でもしたのか?」

私が下ばかり見ていたからだろう。男性は焦ったように、私の肩を掴んだ。

「…スー?」

久しぶりの呼び名に、混乱する。この呼び方をするのは一人しかいないわ。

「リート?」

「リ・イ・トな。」

顔を上げると、少し見覚えのある顔が懐かしい笑顔を向けていた。

「いいじゃない、間違えてるわけじゃないわ。」

「…まぁ、いいけど。」

夕焼けのせいだろう。少し赤く染まった彼の顔を見て、私も赤いんだろうと思った。

「久しぶりだね。」

「そうだな。どっかの誰かが領地から出てこないから、会えなかったもんな。」

意地悪なことを言っていても、彼の顔はとっても優しい。だからこそ、本心ではないことが容易にわかった。

「何それ。酷くない?」

「会いたかった。…待ってたんだから、それくらい言わせろ。」

幼馴染からストレートに気持ちを言われて、照れない人がどこにいるだろう。しかも、実に9年ぶりに彼と会うのだ。

…イケメン細マッチョ、ドストライクに成長してるし。

金の髪に水色の瞳、戦場で魔物をビシバシ倒してる騎士とは思えない甘いフェイス。
幼い頃から領地内でも女性の視線を独り占めしていた。

私はなぜかこの人の父親、つまりは領主様に剣術を教えてもらっていた。彼も一緒に練習していたので、嫌でも仲良くなった。女性たちは私たちが仲良くしていても何も言わなかった。そう、当時は私たちが結婚する可能性はゼロだったから。

ちなみに、私の初恋は別の人だ。

「待ってたって言われても。手紙もないし、そんなこと私は知らないわ。」

他の女の子にもこんなこと言ってるのかしら。知らないうちに、彼は軟派になったのだろうか。

「確かに、勝手に待ってたけど…。それくらい今日が楽しみだったということだよ。」

クゥン…と鳴く、金色の大型犬が見える。

私は小さい頃から、彼のこの表情に弱い。

「…私も、久しぶりに会えて嬉しいわ。誰が来るか教えられてなかったから、あなたみたいに前から楽しみにはできなかったけど。」

照れ臭くて、少し早口で言ってしまったけど聞こえてるだろう。

「うん…それでもいいよ。嬉しい。」

ストレートに気持ちを話せるところは尊敬するけど、私は硬派な人がいいのよね。

「じゃあ、行きましょうか。」

「あぁ。」

ほら、と腕を差し出され、おずおずとその腕を掴んだ。

お父様以外のエスコートはこれが初めて。緊張する。その相手が、たとえ軟派な幼馴染でも。
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