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しおりを挟む「お父様。私、見つけたの。」
「何をだ?」
王都から帰ると、すぐさま父の書斎を訪ねた。
「私、ムンルアナ卿と婚約します!」
そう宣言すると、お父様は盛大にむせてしまった。
あら、お父様に娘の婚約の話は刺激が強かったかしら。
「・・・なぜ彼なんだ。」
「なぜって・・・。」
「あんなに甲冑の騎士とやらにこだわっていたではないか。」
「そうだけど、私だって現実をみようとしてるんんだから。」
「それで、ムンルアナ卿か・・・。」
考え込んでしまったお父様。
せっかく娘がその気だというのに、何が問題なんだろうか。
もしかして、彼にはすでに良い方がいるのかしら。そんな話は聞いたことはないが、ずっと領地に引きこもっているので届いていない噂があってもおかしくない。
「・・・スミレの気持ちはわかった。でもすぐに答えは出せない。」
「なぜですか?」
「家同士の話だからだ。」
まぁ、そうですけど。私の家と彼の家って対立関係にないのに。
私の知らない何かがあるのかもしれないし、強くは言えない。とりあえず、反対されなかっただけでもよしとしよう。
「わかりました。」
「悪いようにはしないから、安心しなさい。」
「ありがとう。」
お父様のことを疑ってるわけじゃないわ。でも、どうしても歓迎されないとわかるとがっかりもしちゃうわよね。
事がとんとん拍子に進むと思っていたわけじゃないけど、気持ちと現実の違いって難しいわよね。
一度舞い上がってしまった気持ちを落ち着かせようと、庭に出ることにした。外の空気にあたれば少しは頭も冷えるだろう。
「お嬢様、おはようございます。」
「おはよう。」
庭師見習いのトニーが話しかけてきた。歳の近い彼とは、よくここで話している。
「・・・どうかなさったんですか?」
「どうして?」
「お嬢様は何かあって時に、こちらにいらっしゃいますから。」
「さすが庭師ね。」
「見習いですけどね。」
そう、話すなんて言っているけどただ彼に愚痴を聞いてもらっているだけだ。優しい彼はいつも話を聞いてくれる。彼と結婚したら良いんじゃないかと思ったこともある。
「運命と思ったのよ。」
「また甲冑の騎士様の話ですか?」
「違うわよ。」
「え!」
何よ、トニーまで。そりゃあ、今までの私の行動が悪いんだけども。
「私だってそろそろ夢を見てるだけじゃダメだと思っているの。」
「運命とか言ってるくせに?」
「何か言った?」
「いいえ、何にも。」
できるなら、今だって甲冑の騎士様と結ばれたいわよ。でも初恋って叶わないっていうじゃない。良い人ほどお相手が決まるのだって早いだろうし。
私が知ってる情報なんて、第二騎士団に所属しているということくらいよ?そんな私が彼と知り合えるなんて思わない。
「それで、お相手は誰なんですか?」
「ムンルアナ卿よ。」
「侯爵家の方ですか。まぁ、家格的に無理ではない方ですね。」
「なに、他に問題があるみたいな言い方。」
「いえ、たいしたことではないのですが・・・。」
「なによ。気になるわ。」
トニーは少し考えた後、やっぱりやめときますと言葉を濁した。
「途中で辞めないでよ。」
「性格に問題があるとかではないので大丈夫ですよ。」
う~ん、トニーが私に嘘をついたことはないれどそういう問題じゃないのよね。
「どうしても教えてくれないの?」
「そんなに知りたいんですか?」
「えぇ。」
「ムンルアナ卿はリイト様をライバル視されているそうです。」
「リートを?なんで?」
「家格的にも、年齢的にも、能力的にもですかね。お二人とも容姿が良いですし、同じ騎士団に所属しているから比べられることも多いみたいですよ。リイト様は相手にしていないみたいですけど。」
ということは、リートの方が少し実力は上なのかしら?
「それで、なんでそれが気になるのよ。」
「あー、お嬢様にこの話は早かったですかね。」
「ちょっと、どういう意味よ。」
「そのままの意味ですよ。」
もっとわかるように話してくれたっていいじゃない。ケチね。
「どうせ私はこんなこともわからない子どもよ。」
「拗ねないでくださいよ。」
「じゃあね。」
トニーに話を聞いてもらってスッキリするつもりが、さらにモヤモヤしちゃったわ。
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