将来、悲運な結末を迎える令嬢は幸せに生きる

都築稔

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店主のぼやき

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「お父様、どうでしょうか?」

制服に似合うもクソもないからな?

目の前のご令嬢が不安そうに父親に尋ねている場面で、こんなことを思う私は性格が悪いんだも思う。

「アメリア、とっても似合ってるよ!」

父親が涙でも流しそうな勢いで娘を褒めている。

どうやら制服を買うのは初めてだそうだが、この歳で初めてって訳アリとしか考えられない。「普通、初めての制服は8歳なんですよ」とか「え、初めてなんですか?!」なんて反応はやぶ蛇だ。思っても顔に出さないのがプロってものよね。

「そうだ、ミリー。他にもドレスを買っていこう。学校に行ったら、お茶会に招待されることをあるだろうからね。」

そう言って父親が華美なドレスを娘に勧めているが、学園ではそんな華美なドレスを着るのは何かパーティーが会った時くらいだと、平民の私でも知っている。学園は平民も通うから、お茶会に誘われてもそんなドレスは着ない。成人した貴族のお茶会じゃないんだよ。わかってんの?おっさん?

・・・とか思っても、聞かれない限り言いません。顔にも出しません。だってこの人すごく娘を激愛してそうだし、そういう人ってクレーマーになりやすいのよね。平民を卑下してる貴族もいるし、娘の前では優しそうなこの人も私の前では違うだろう。

私はただの服飾店の店員。店を潰されても、いきなり切りつけられても、多分誰も助けてくれない。ならば面倒事は回避するに限る。

「でもお父様・・・こんな綺麗なドレス、私に似合うかしら?それに私、お友だちもできるか不安ですわ。」

不安そうなその顔も、男の情欲や庇護欲を掻き立たせるような容姿をしといて何言ってるんだろう。

艶やかなピンク色の髪、翡翠のような瞳、掴めば折れそうなほど細い腕と脚に合わない健康的な白い肌。

病弱でやっと学園に通えるようになったと言われても、すぐ嘘だとわかるような健康そうな体。活発で天真爛漫な表情。

・・・どちらにしろ、私には関係のない人ね。

「大丈夫さ。うちは男爵家とはいえ商会を持っている。邪険にされたら言いなさい。上の身分の人だろうと、戦う力くらいは持っているから。」

「お父様!!ありがとう!大好き!」

娘に抱きつかれて、デレデレの父親。

私は一体、何を見せられてるんだろう。あー、早く帰りたい。

「さぁさぁ、ドレスを選びなさい。欲しいものを買ってあげよう。」

それにしても・・・商会を持ってる男爵家、エストランリア男爵か。この国のトップレベルの商会、エストラン商会の商会長をしていると聞いたことがある。

「どれも素敵ですね・・・お父様はどれが似合うと思いますか?」

「そうだなぁ、どれもとてもよく似合うと思うけど・・・このライトグリーンのドレスなんてどうだい?ミリーの瞳と同じ色だよ。」

「まぁ、とっても素敵だわ。私、これがいい!」

どこからどう見ても仲の良い親子なんだけど、なんか違和感あるのよね。いつも仲良い兄妹で来る貴族令嬢なんかは、見てるとほっこりするのに。何が違うのかしら。

この親子は、この後何着か試着して帰って行った。たくさん購入してくれたので、こちらとしてはありがたい。

正直、見てて嫌悪感すら抱く瞬間もあった。だから早く帰ってほしかったが、こんなに買ってもらっちゃ何も言えない。問題を起こしたわけでもないし。

私の好き嫌いで客を選べるわけじゃないからね。仕方ない。

あー、このストレスをあの可愛らしいご令嬢で癒されたいわ。次はいつ来店してくれるのかしら。
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