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2人の気持ち
しおりを挟むルカ様におとぎ話として話されたゲームシナリオの話。正直、すごくドキドキした。私の目の前にいる人たちの私の見る目が変わったりしないか、それがすごく不安だったのだ。
でもお兄様は強く否定してくれましたし、他の方もシナリオ通りに動くことは今のところなさそうだ。シナリオの強制力はあまり働いていないのかもしれない。
「リア、あんな風に君のことを暴くことになって申し訳ないと思ってる。本当にごめん。」
お話が終わり、2人きりになるとルカ様は再度私に頭を下げた。
「お話の前にも謝ってくださったではありませんか。それに、ルカ様のことです。私を心配してお調べになったのではないですか?」
そう聞くと、頭を上げた彼は嬉しそうに笑った。
「言わなくても、リアにはわかっちゃうか。その通りだよ。君が心配だった。何か1人で抱え込んでいる様子だったから。」
第一に私のことを考えて、私のためなら、きっと世界までも手に入れようとする男だ。彼が味方でいる限り、私は怖くない。
「ありがとうございます。」
「それにしても、僕は個人的に1つ聞きたいことがあるんだ。」
「なんでしょう?」
いつになく真剣な顔をしたルカ様。どうされたのかしら?
あ、シナリオではルカ様はエミリアのことを好きだったけど現世では・・・
視線を感じて寒くなってきたわ。これは想像しただけでも怒られちゃう内容ね。
「僕達の未来を知っていて、僕のことをわかっていて、それでも君が僕を選んだ理由はなんなの?」
真剣に、切実な思いを込めた目を向けられる。ここで答えを間違っちゃいけない気がする。
「リアは、僕のことなんでもわかってるって感じてた。それは、出会う前から僕のことを知っていたからだろう?もちろん、今までが演技でないことはわかってる。ただ、どうして僕に近づいたのかと思って。」
いつもより早口で、饒舌に説明された。
ゲームシナリオ内で、彼はエミリアを絶対的に好きだ。それは実際、今も変わらない。
エミリアが「死にたくない」と思った時、真っ先に味方につけるべきはルカ様だろう。それはエミリアに気持ちがあってもなくても。
「私とルカ様の出会いは偶然です。シナリオ内で第3王子とエミリアの出会いは描かれていません。だから漠然と学園に入ってから出会うものだと思っておりました。」
そう、あの日本屋さんで出会ったのは本当に偶然だった。
「そして私がルカ様に近づいたのは・・・」
「近づいたのは?」
「・・・前世から、ルカ様のことが好きだったからです。」
自分で言っておきながら、すごく寒いことを言った気がする。本当のことなんだけど。
「僕が好きだった?」
「はい、そうです。ゲームをしながら、なんでエミリアはルカ様のことを見ないのか不思議でした。私なら、一途にルカ様を好きでいるのにって。」
「嘘ついてない?僕に都合が良すぎる。」
「私だって!前世を思い出した時、私に都合がいいと思いました。まだ婚約者が決まる前で、悪事を働く前で・・・何も気にすることなくルカ様に夢中になれる状態がそろってたんですもの。」
この気持ちは誤解されたくない。ずっとずっと好きだったんだもの。他の何を隠していても、ルカ様に向けている気持ちだけは本物だった。
ルカ様は、ジッと何かを見極めるように私の顔を見つめていた。
「・・・わかった。リアを信じる。・・・なんて、最初から君の気持ちを疑っていた訳ではないんだけど。僕も少し不安になってしまって。リアの口からききたかったんだ。」
彼らしくない、自信のなさげな微笑みを浮かべて。
「ありがとう。愛してる。ここにいるのが君でよかった。」
ギュッと抱きしめられた。
私はこの世界に生まれてからずっと、なんとなく疎外感を感じて生きてきた。でもやっと、私という存在を許して、受け入れてもらえた気がする。
ルカ様を好きでよかった。
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