【急募】バッドエンド

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予備校見学

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 二日経って土曜日、運良く由奈とのサプライズはなく俺は予備校の前に立っていた。見学の予約も入れた。四月から見学する一年生は珍しいらしく、見学の枠はかなり空いていた。というか、見学してから入る学生自体珍しいのかも。お母さんがついてこなかっただけマシか。高校生になってまで全て親付きで行動するのは嫌だ。買い物くらいならいいけど。

 あれ、この時期って反抗期だったっけ? 二十八歳になると反抗すること自体子どもっぽくて恥ずかしいと思うけど、たしかこの辺で人並みに反抗期があった気がする。と言っても、ただいまを言わなかったり、ご飯中無言だったくらいだけど。

 可もなく不可もなく、由奈以外に関しては地味な人生を送ってきたなぁ……。

「すみません、見学申し込みしていた堀塚ですけど」
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」

 少人数制のここは学校みたいに担任的な役割をしてくれて、勉強はもちろん受験への不安に対するアドバイスをしてくれた。三年生の夏休みにはお守りだと神社で買ったえんぴつも配られた。特に社会の先生が気さくで、予備校のわりに楽しかった思い出が沢山ある。それぞれ勉強が忙しくて生徒同士が仲良くなることはなかったけど、先生の顔はよく覚えている。

「教室の中に入ることはできませんが、各クラスの様子を窓から見学ができます。お好きなクラスの講義を聞いてみてください。その後当校の説明をさせていただきます」

「はい。有難う御座います」

 有難く自由にさせてもらう。こういうのはあれこれ傍について説明されるより、自分のしたいようにした方がいい。

 先生、先生のクラスは~……おっと。

「あ、ごめんなさい」
「いえ、こちらこそ」

 俺の他に見学者がいたらしい。

――あれっこの人……。

 分かった。高橋さんだ! マジだ、偶然だなぁ。すごい確率。でも、見学だからここって決まってるわけじゃないもんな。

 ぶつかりそうになった謝罪だけしてその場を離れる。一度目の人生では友だちじゃなくて、三度目で出会って四度目でまた、か。そんな人初めてだ。繰り返すたび経験と違うことが起きていく。もしかして、一度目も同じ予備校で、顔を知らなかったから友だちにならなかっただけなのかもしれない。

 まあ、由奈とは関係の無いことだから気にしないでおこう。

 お、先生のクラスだ。元気そうって当たり前か。歴史やってる。そうそう、教え方も上手いんだよな~。もう一度習えるの楽しみかも。ただし大学受験。お前はダメだ。二度と受けたくない。親からのプレッシャーは無かったけど、難しい大学ばかりだったから受験自体は大変だった。

 万が一、大学落ちたらどうしよう? それとも、落ちた第一に今度は受かったらどうしよう!? もし高校、大学と人生やり直す場合乗り越えなきゃいけない大きな壁になる。

 できるなら第一志望に行ってみたいけど、そっちに行ったら行ったで出会う人たちがみんな違うわけだから全然違う未来になってしまう。

 でも、由奈と付き合わないならそういう人生になってもいいっちゃいいか。うーん、ただなぁ。就職先も変わっちゃうかもしれない。今の仕事気に入ってるんだけど。

 悩む。ただ、悩めるというのはそれだけ選択肢があることで、過去の俺からしたら贅沢な話だ。それだけ余裕が出てきたのかも。

「有難う御座いました」

 説明が終わった瞬間お礼を言い、ささっと予備校を出る。

 誰もついてきてない。そりゃそうだ。

 さっき、隣の席が高橋さんだった。ちらっとこっち見られたのはぶつかりそうになった男だと思われたからだよね。見学者が二人だけだったのもあると思う。なんか些細なことで疑心暗鬼になっちゃうな。一度見られただけで気にするの、自意識過剰な構ってみたい。
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