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第一章
ギルド
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しばらく行くと、大きな門が見えた。思いがけず、発展した都市にたどり着いてしまった。リルはげんなりした。
「人がいっぱい……」
できれば小さな町で、魔法を生かして大工仕事などを手伝えればと思っていたが、そうはうまくいかなかった。
歩くだけで人酔いしてくる。山に引きこもり四年は伊達ではない。
「仕事ってどうやって探せばいいんだろう」
ただ歩き回っても、当然仕事は舞い込んでこない。
「ねえ、あなた冒険者?」
と思ったら違ったらしい。突然声をかけられた。振り向くと、軽量な装備に剣を腰に差した女性が立っていた。
「冒険者というか、仕事を探していて」
「ちょうどよかった。その可愛いウォルフ連れてるってことは魔法士よね? 手伝ってほしい仕事があるの」
横にいるチョコを見遣る。あまり目立ちたくないので、今は大型犬程度の大きさに変えている。
──魔法士って魔物を引き連れてたりするのかな?
いまいち分からないが、そう言われたということはそうなのだろう。
「すぐに離れる予定なので、そんなに時間がかからない仕事なら」
「ありがとう! こっちよ!」
手招きされ、ついていく。
「私はミリィ。あなたは?」
「リルです」
「今日来たばかり?」
「うん」
ミリィは冒険者を生業にしているらしい。とはいってもまだ半年経ったばかりの新人だという。
突き当たりまでまっすぐ行くと、一軒の店が見えた。
「ほら、あれがギルド」
「ギルド……」
なんとなくどこかで聞いたことがある。しかし、ここで詳しく聞くのは怪しまれるかもしれない。リルは黙って中に入った。
店の中はまるでゲームの世界だった。
冒険者の恰好をした者たちがあちこちで盛り上がり、張り紙を見つめる者、受付で何やら手続きをする者。見慣れない光景にリルは眩暈がした。
「あれなんだけど」
ミリィが一枚の張り紙を指差した。
「崖崩れが起きた道の整備?」
「そう。うちの村に続く道なんだけど、報酬が魔物退治とかより少ないから希望者が現れなくて」
「人が通れるようになればいいの?」
「うん」
リルは頷いた。
「なら簡単だ。やるよ」
「やった! すぐ手続きしましょ」
満面の笑みのミリィが張り紙を剥がして受付へ急ぐ。受付にいた女性がにこやかに紙を受け取った。
「こちらですね。承知しました」
隣で身分証明書らしきものを提出しているのを目撃して内心焦ったが、リルが求められることはなかった。どうやら代表者が提示すればいいらしい。身分証明書など当然無いのでほっとした。
受領書を受け取ったミリィとともに店を出る。崖までは半日歩くと言われた。リルは提案した。
「歩くと時間がかかるから、風魔法で飛んでいこう」
「え、と、飛んで?」
「あ、嫌だった?」
「ううん! 全然!」
ミリィはぶんぶん首を振った。嫌ではないなら話は早い。リルが風魔法を自分たちに施す。
「わ、わ、浮いたッ」
「ごめん。もしかして、飛ぶの初めてだった?」
今まで魔法が使えるサイとしか生きてこなかったので、世の中の常識がどの程度なのか全く分からない。リルが謝ると、ミリィは両手を大げさに振った。
「謝らないで! 慣れてないだけだから!」
慣れていないのなら止めようかと提案したが、ミリィが拒否したため、結局飛んでいくことになった。怪我をしないよう、リルが強さを調節してゆっくりな飛行だ。横で一緒に飛ぶウォルフを見て、ミリィが顔を固まらせていた。
「人がいっぱい……」
できれば小さな町で、魔法を生かして大工仕事などを手伝えればと思っていたが、そうはうまくいかなかった。
歩くだけで人酔いしてくる。山に引きこもり四年は伊達ではない。
「仕事ってどうやって探せばいいんだろう」
ただ歩き回っても、当然仕事は舞い込んでこない。
「ねえ、あなた冒険者?」
と思ったら違ったらしい。突然声をかけられた。振り向くと、軽量な装備に剣を腰に差した女性が立っていた。
「冒険者というか、仕事を探していて」
「ちょうどよかった。その可愛いウォルフ連れてるってことは魔法士よね? 手伝ってほしい仕事があるの」
横にいるチョコを見遣る。あまり目立ちたくないので、今は大型犬程度の大きさに変えている。
──魔法士って魔物を引き連れてたりするのかな?
いまいち分からないが、そう言われたということはそうなのだろう。
「すぐに離れる予定なので、そんなに時間がかからない仕事なら」
「ありがとう! こっちよ!」
手招きされ、ついていく。
「私はミリィ。あなたは?」
「リルです」
「今日来たばかり?」
「うん」
ミリィは冒険者を生業にしているらしい。とはいってもまだ半年経ったばかりの新人だという。
突き当たりまでまっすぐ行くと、一軒の店が見えた。
「ほら、あれがギルド」
「ギルド……」
なんとなくどこかで聞いたことがある。しかし、ここで詳しく聞くのは怪しまれるかもしれない。リルは黙って中に入った。
店の中はまるでゲームの世界だった。
冒険者の恰好をした者たちがあちこちで盛り上がり、張り紙を見つめる者、受付で何やら手続きをする者。見慣れない光景にリルは眩暈がした。
「あれなんだけど」
ミリィが一枚の張り紙を指差した。
「崖崩れが起きた道の整備?」
「そう。うちの村に続く道なんだけど、報酬が魔物退治とかより少ないから希望者が現れなくて」
「人が通れるようになればいいの?」
「うん」
リルは頷いた。
「なら簡単だ。やるよ」
「やった! すぐ手続きしましょ」
満面の笑みのミリィが張り紙を剥がして受付へ急ぐ。受付にいた女性がにこやかに紙を受け取った。
「こちらですね。承知しました」
隣で身分証明書らしきものを提出しているのを目撃して内心焦ったが、リルが求められることはなかった。どうやら代表者が提示すればいいらしい。身分証明書など当然無いのでほっとした。
受領書を受け取ったミリィとともに店を出る。崖までは半日歩くと言われた。リルは提案した。
「歩くと時間がかかるから、風魔法で飛んでいこう」
「え、と、飛んで?」
「あ、嫌だった?」
「ううん! 全然!」
ミリィはぶんぶん首を振った。嫌ではないなら話は早い。リルが風魔法を自分たちに施す。
「わ、わ、浮いたッ」
「ごめん。もしかして、飛ぶの初めてだった?」
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「謝らないで! 慣れてないだけだから!」
慣れていないのなら止めようかと提案したが、ミリィが拒否したため、結局飛んでいくことになった。怪我をしないよう、リルが強さを調節してゆっくりな飛行だ。横で一緒に飛ぶウォルフを見て、ミリィが顔を固まらせていた。
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