貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

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第四章

成長

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 リルがチョコを見つめる。しゃがみ込み、体にそっと触れた。

「きっとチョコにもあるんだろうな。今までの魔物の感じからすると強い個体か、大きい個体か、そのどちらかだと思うけど」

 触ってみても分からない。微力な魔力は流れているが、量は違えどどの魔物にも魔力が存在するのでその証明にはならない。

「魔力が強くなると、魔石が出現するとか……なんてね」

 ここに知識がある者がいない以上、考えても正解は出てこない。仮に正解だとしても、それが正解かどうか確かめる術が無いのだ。

「あんまり興味はないけど、魔石って価値があるみたいだしこうやってまた出てきちゃったし、いちおう調べておいた方がいいかな」

 王都で本屋を探すか、ギルドに寄ることがあれば聞いてみることにした。ただし、それは兄の件が落ち着いてからだ。

「説明する前に変な形でまた再会するのは嫌だからね」

 初手で逃げてしまったのがいけなかった。何か悪いことをして逃げ回っていると思われてもおかしくない。今冷静に考えればあの時説明すればいいと分かるのに。ただ、正直なところ、兄のことを全然知らないのだ。どのような性格でどのようにリルを思っていて、さらに言えば声すら記憶に無かった。それくらい接点が無かった。だから、何が起こるか想像もつかなくてあのような行動に出てしまった。

 次回はしっかりこちらの言い分を聞いてもらえる場を作り、万が一拒否されても交渉できるものを持って挑む。自分だけの自由な生活を守るために越えなければならない試練だ。

 しばらく散歩を続け、魔石が五つになったところで別荘に戻った。途中でコウの群れを発見できたのが一番の収穫だ。あれだけいれば、リルが食べ尽くしてしまう心配はない。

「そろそろ休憩……」
「ギャオ」
「えぇ……うん、いいよ。やろっか」

 昼食を食べて昼寝をしようと思ったら、元気が有り余っているチョコから手合わせをお願いされた。断ろうと思ったが、いつもこちらの予定にチョコを付き合わせているので、たまのお願いくらいは叶えたい。

「全力で来ていいよ」
「ギュウゥ」

 リルが提案すると、チョコの体がみるみる大きくなった。そのままでもリルの背ほどあったが、今はその倍ある。

「だいぶ成長したね。いいこいいこ」
「ギャウッ」

 褒められたチョコがくるりと回る。

「じゃ、始め」

 リルが構えた。チョコが前足を蹴る。音速で飛び込んできた。

「おおッ速い!」

 以前より格段に強くなっている。最近手合わせをしていなかったので、余計そう感じるのかもしれない。

──ううん、気のせいじゃない。たまに魔物を退治していたけど、経験値が上がったのかも。単純に体格も良くなっているし。

 リルと一緒におらず野生のウォルフのままだったら、あの山のボスだっただろう。家族の成長に胸が熱くなる。
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