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私は転生した
ぼっち飯
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一心不乱にまっすぐ歩いていると、聞き覚えのある音がした。前回と同じく勝手にステータスが表示される。
[胡威風
レベル:110
法術師レベル:170
聖人レベル:-500000
悪人レベル:100000
装備:剣「清洗」、突殺 ]
「あれ、聖人レベルかなりマイナス減ってる。悪人レベルも」
首をひねる。何かしただろうか。そういえば、龍魔神と遭遇してから一度もステータスを開いていなかった。龍魔神を結果的に追い払ったからか瞑想をしたからか、はたまた今しがた夜のお誘いを断ったからか、全部かもしれない。何はともあれ死亡フラグに直結しているレベルが改善されるのは良いことだ。
「レベル110か……新兵よりはいいけど、将軍クラスにはまだほど遠いな。一番低い将軍でも1000は超えてたはず」
そんなことを考えていたら、騒がしい声が聞こえてきた。きっと奥の部屋が食堂だろう。胡威風が顔を出すと、ぴたりとその声が止んだ。入り口近くにいる者たちが労いの言葉をかけるので適当に返事をし、空いている椅子に座った。間もなくして、ぽつりぽつりと会話が再開される。しかし、先ほどよりずっと小声だ。
――気まずい!
運ばれてきた夕食を確認する振りをして、気づかれないよう周囲に目線だけ巡らせる。明らかに自分が現れた所為で雰囲気がどんよりしてしまった。そこまで嫌われているのか、それとも単純に将軍クラスの人間がいて緊張しているのか。どちらにせよ、胡威風が楽しい会話を弾ませる食事を取ることは難しいらしい。この体の人間は、部下に慕われていなくて今まで辛くなかったのだろうか。
しょんぼりと食べ始めると、陳雷が小走りで近づいてきて拱手した。
「東将軍。今日は助けて頂き、本当に有難う御座いました。いつもは自室で召し上がるので驚きました。軍の普段の様子を確認されているのですか? さすがです」
「ああ……外でのことなら気にしないでいい」
――視線が痛いわけだよ……なんで昼間はアイツ食事に誘ってきたんだ。もしかしてアイツの部屋で食べるっていうことだったのかも。はぁ……今度から部屋で食べよ……。
それにしても陳雷は一番虐げられているはずだが、こうして寄ってきてくれるとは、よほど肝が据わっているか、そうでなければ極度の天然ということになる。と思っていたら、そそくさ帰られてしまった。仮にも命の恩人に対して礼を示しただけだったらしい。ぼっちになってしまった。
落胆と緊張で、せっかくの味が全く分からない。風邪を拗らせた時の味覚に似ている。この状況では仕方のないことだ。
味わう暇も無くさっさと食事を終わらせ、盆を料理人へと返した。随分驚いた顔をされた。辛い。胡威風、いくらなんでも嫌われ過ぎではなかろうか。
とぼとぼ廊下を歩く。レベルに気をとられていたが、今日からずっと自分が胡威風で過ごさなければならないことを再確認させられた。悪人度を下げるとともに、部下に慕われる人間になりたい。せめて、すれ違っても悲鳴を上げられない人間になりたい。
自室に着き、寝台へ崩れ落ちるように倒れた。枕を抱えてごろごろ転がる。
「……もふもふ。もふもふを浴びて癒されたい!」
出来れば猫と兎を所望する。寝台はぬいぐるみで寝がえりがうてないくらいいっぱいにしたい。室内を見回すが、ぬいぐるみの代わりになりそうなものはなかった。仕方なく布団をまるめて抱き枕にする。一日でどれだけ寝れば気が済むのか、自分でも疑問に思う程眠気は正しくやってきて、胡威風はそのまま深い眠りに落ちていった。癒され不足で、その日の夢は大量の兎に突進される夢だった。
「ふふ、かぁわいい……兎ちゃんは肉球が無いんだよねぇ……」
[胡威風
レベル:110
法術師レベル:170
聖人レベル:-500000
悪人レベル:100000
装備:剣「清洗」、突殺 ]
「あれ、聖人レベルかなりマイナス減ってる。悪人レベルも」
首をひねる。何かしただろうか。そういえば、龍魔神と遭遇してから一度もステータスを開いていなかった。龍魔神を結果的に追い払ったからか瞑想をしたからか、はたまた今しがた夜のお誘いを断ったからか、全部かもしれない。何はともあれ死亡フラグに直結しているレベルが改善されるのは良いことだ。
「レベル110か……新兵よりはいいけど、将軍クラスにはまだほど遠いな。一番低い将軍でも1000は超えてたはず」
そんなことを考えていたら、騒がしい声が聞こえてきた。きっと奥の部屋が食堂だろう。胡威風が顔を出すと、ぴたりとその声が止んだ。入り口近くにいる者たちが労いの言葉をかけるので適当に返事をし、空いている椅子に座った。間もなくして、ぽつりぽつりと会話が再開される。しかし、先ほどよりずっと小声だ。
――気まずい!
運ばれてきた夕食を確認する振りをして、気づかれないよう周囲に目線だけ巡らせる。明らかに自分が現れた所為で雰囲気がどんよりしてしまった。そこまで嫌われているのか、それとも単純に将軍クラスの人間がいて緊張しているのか。どちらにせよ、胡威風が楽しい会話を弾ませる食事を取ることは難しいらしい。この体の人間は、部下に慕われていなくて今まで辛くなかったのだろうか。
しょんぼりと食べ始めると、陳雷が小走りで近づいてきて拱手した。
「東将軍。今日は助けて頂き、本当に有難う御座いました。いつもは自室で召し上がるので驚きました。軍の普段の様子を確認されているのですか? さすがです」
「ああ……外でのことなら気にしないでいい」
――視線が痛いわけだよ……なんで昼間はアイツ食事に誘ってきたんだ。もしかしてアイツの部屋で食べるっていうことだったのかも。はぁ……今度から部屋で食べよ……。
それにしても陳雷は一番虐げられているはずだが、こうして寄ってきてくれるとは、よほど肝が据わっているか、そうでなければ極度の天然ということになる。と思っていたら、そそくさ帰られてしまった。仮にも命の恩人に対して礼を示しただけだったらしい。ぼっちになってしまった。
落胆と緊張で、せっかくの味が全く分からない。風邪を拗らせた時の味覚に似ている。この状況では仕方のないことだ。
味わう暇も無くさっさと食事を終わらせ、盆を料理人へと返した。随分驚いた顔をされた。辛い。胡威風、いくらなんでも嫌われ過ぎではなかろうか。
とぼとぼ廊下を歩く。レベルに気をとられていたが、今日からずっと自分が胡威風で過ごさなければならないことを再確認させられた。悪人度を下げるとともに、部下に慕われる人間になりたい。せめて、すれ違っても悲鳴を上げられない人間になりたい。
自室に着き、寝台へ崩れ落ちるように倒れた。枕を抱えてごろごろ転がる。
「……もふもふ。もふもふを浴びて癒されたい!」
出来れば猫と兎を所望する。寝台はぬいぐるみで寝がえりがうてないくらいいっぱいにしたい。室内を見回すが、ぬいぐるみの代わりになりそうなものはなかった。仕方なく布団をまるめて抱き枕にする。一日でどれだけ寝れば気が済むのか、自分でも疑問に思う程眠気は正しくやってきて、胡威風はそのまま深い眠りに落ちていった。癒され不足で、その日の夢は大量の兎に突進される夢だった。
「ふふ、かぁわいい……兎ちゃんは肉球が無いんだよねぇ……」
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