[完結]姫聖女に恨まれ冤罪で処刑宣告された聖女と嫌われ者の優しい魔術師の処刑回避作戦

雨宮ユウリ

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三人の会議

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私、ルシウスさん、そしてマイアおばあちゃんは、礼拝堂の中心に集まっていた。周囲には正気に戻った騎士と神官6人も立っている。

「さて、今後なんですけど……マイア様は洗脳前後の記憶はどこまで残っておられますか?」

ルシウスさんが口火を切る。マイアおばあちゃんが正気に戻ってくれたとはいえ、まだまだ気は抜けない状況だった。

周囲の騎士たちも緊張しているのか、場は張りつめていた。

「あら、マイア様なんて、そんなにかしこまらなくてもおばあちゃんでいいわよ~」

「いえ、そんな……」

おばあちゃんがやけに明るい声を出した。騎士たちを気遣って雰囲気を変えようとしているのかもしれない。

「そうねえ。朝早くに国王陛下がイザベラ様の様子を見に来ていらっしゃったのよ。そのときイザベラ様の様子がおかしくて……止めに入ったところからちょっと記憶が曖昧ねぇ」

「おそらく、その時に国王陛下とマイア様が魅了にかかってしまったのでしょう。王家の血筋であられる陛下と、聖女のマイア様以外はそこまで悪魔の力への抵抗力がありませんから。その後一気に洗脳が進んだのかと」

「油断しちゃってたわねえ。まさかあんなに力が強いなんて。代償は相当重いはずよ」

(やっぱり、本当にイザベラ様は悪魔と契約してるんだ……)

いくら聖女のお勤めに不真面目だったからと言って、悪魔と契約するなんて。

悪魔は強い願いを持つ人の元に現れる。人の命とか本人の寿命とか、莫大な金銭とか、大きな代償の代わりに願いを叶える力を人に与えるのだ。

悪魔の力を得た人は契約者とか魔女と呼ばれて、大抵の場合見つかったら即投獄、そのまま死刑になる可能性すらある。

「契約者への対応は基本的には聖女様や神官の領域でしたよね。普段はどうされているんですか?」

「そうねえ。最近はあんまりいなかったけれど……。私たちが必要になるほど強力な契約者の場合は、まず接触する全員に改めて神の御加護をお祈りするの。その後、神官たちが契約者の動きを抑えている間に私たち聖女が悪魔の力を封印するわ。ただ……私では今のイザベラ様の魔力に打ち勝てない」

「つまり、セリーナ様が封印を行うしかない……」

ルシウスさんが私のことを見つめる。別の方法を探した方がいいのではないかとでも言いたげだった。

「……やります!」

「ごめんなさいね、セリーナ。ここ最近は契約者の事件もなかったのに、初めての任務からこんな一大事」

(確かに、おばあちゃんみたいな経験はない。けれど、やるしかない。ルシウスさんに助けてもらってここまでこれたんだし)

「いいえ、大丈夫です。聖女ですもの。勤めは果たします」

「ふふ、本当に頼もしくなったわね。なら、私はセリーナに負けないように、捕縛の方に力を注ぎましょうか。貴方たちもお願いね」

マイアおばあちゃんが四人の神官に声をかけた。マイアおばあちゃん担当の神官たちだ。神官たちは綺麗に揃った礼をする。

「わかりました。セリーナ様がイザベラ様の力の浄化、マイア様と神官の方々が捕縛ですね。僕は捕縛の補助と、もし洗脳された人々がいたらそちらの足止めをします。騎士のお二人は聖女様方の護衛を頼めますか?」

ルシウスさんが真剣そうな顔で話をまとめる。こうして何かを考えているときの表情を見ると、礼拝堂で助けてくれたときのような、じんわりとした安心感を感じてしまう自分がいた。
 
「まずイザベラ様の力が使えなくなれば、あとは何とかなると思います。問題は正気の状態でもイザベラ様と陛下がどう動くかわからないところですが……」

「それは大丈夫よ。陛下……オスカーがなんか言っても私がなんとかするもの。神官長も叩き起こしてくれるんでしょう?」

マイアおばあちゃんの笑顔の奥に修羅が見える気がする……。

「それは……助かります。行動は素早い方がいいでしょう。準備ができたらイザベラ様の元に向かいましょう」
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