陰キャ系ぐふふ魔女は欠損奴隷を甘やかしたい

豆丸

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その魔女危険につき④

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 自分に優しくするのも全てモニターの為だったのだーー裏切られたとギイトは思った。

 そう思うこと事態、ギイトの甘さが招いた結果。胡散臭い魔女をかすかでも信用した自分の愚かさだ。
 決して二度と信用するものか!悔しくてギイトはぎりりと歯を噛み締めた。


「…具体的にモニターとは何をすればいいんだ?報酬は出るんだろうな?」
 奴隷が自由になるには幾つか方法がある。
 虐げられ死ぬか自死を選ぶか、自分で自分を主人から買い取るかである。
 大体が高額の自身の金額が払えず死ぬまで使役されるが、ギイトは僅かな可能性を選んだ。

「ぐふふ、もちろんギイトに報酬は出しますよ……。
 本当は生体義装具を作成するより魔界喰虫を大陸に召喚した術者を殺したいんですけどね…全くしっぽが掴めません」 

「……術者を殺すことに意味があるんだな?」 

「さすがギイトです!
 意味がありまくりなんですよ。術者を殺すとですね。時空間の歪みが修正して魔界喰虫に食べられた部位が戻るんです!!」 

「ーーっ!欠損部位が復元するのか?」

「そうなんです。残念無念全て元通り。美しい欠損が損なわれちゃうんですよ」 
 サクヤは大袈裟に頭を降った。

「…魔界喰虫に喰われた連中は泣いて喜ぶだろうな」 
 欠損が回復する…純粋に羨ましいとギイトは思った。 

「ぐふふ、普通の生体義装具に慣れたところで次は、ギイト専用に戦闘用に特化させた、この義足と義手を完璧に使いこなして下さい!
 そして、剣術大会で大活躍して生体義装具を大々的に世の中に宣伝してほしいんです。魔界喰虫の被害者は軍隊関係者がほとんどですから、絶対に儲かりますよ~」
 山積みの金貨を思い浮かべ、気持ち悪い笑みでサクヤは笑う。

「ちっ、金の亡者が」

「まあまあお金は大事ですよ。
 ぐふふ、私の願いが叶ったらギイトのお願い、何でも聞いてあげますからね」


「ーっ!本当か?嘘じゃないだろうな?」 
 

「ゲフゲフ…心外ですね。そんなに信用出来できないなら、誓約書を書きますよ」
 魔女はいぶかしむギイトの目の前の何も無い空間から、誓約書の紙とペンを引っ張り出すとその場ですらすらと書いてギイトに手渡した。 

 契約書を穴が空きそうなほど凝視し、不利益がないか確認すると、ギイトは固く誓ったーー絶対に自由になってやる。その為なら何だってしてやると。
 



 ◇ 


「ーーっ。はぁはぁ。ぐっ、クソが」
 
 ギイトの巨体が、がくりと地面に突っ伏した。 
 
 重いーー。
 手足の自由が全く効かない。所狭しと魔方陣の描かれた銀色の手足が不気味に光る。ギイト専用の戦闘用生体義装具だった。
 体中がバラバラになりそうだ。生気を全て持っていかれるような脱力感。
 生体義装具の連結部から鋭い痛みが断続的に体中に走る。

 虫のように地面を這う、苦痛に呻くギイトをニヤニヤ顔の魔女が見下ろす。

「…がっ、はぁッ。体が千切れそうだ。だ、騙したのか?魔女が!」

「ぐふふ、人聞きの悪い。
 戦闘用生体義装具は馴染むまで時間がかかります。    神経経路を魔方陣で無理やり連結して、3倍の筋力を使えるように強化してますから激痛ですし、魔力も大量に消費します。それに強靭な生体義装具自体が本体を取り込もうとしますから意志をしっかり保って下さいね」 

「は?取り込もうだと?うぐぁ!」 
 連結部の皮膚がふるり波打ち、義装具が熱く大きく震えた。 

「はい、取り込んで本体を支配しようとするんです。ぐふふ、生存本能です。
 滾るますね!生物的に優れた者にしか従がわない!誇り高いんです。まるでギイトみたいにです」 
 
 どこに興奮する要素があるのか?はあはあと鼻息荒い魔女が言う。

「ほら、ギイト。しっかり意志を保たないと形が変化しちゃいますよ」
 生体義装具がギイトの本来の手足を取り込もうと形を固形から液状化させた。もはや義手、義足ですらない。元義装具だった物はスライムのように蠢き、硬直する体を伝い這い上がってきた。

「変化??
 こんな危険な義装具があるか!安全に使えないだろうが!!」 

「ぐふふ、なにぶん戦闘用ですので安全性は度外視なんです」 
 クネクネしつつ、恥ずかしそうに顔を赤に染める魔女に殺意が沸く。


「度外視どころの話しじゃないだろう!別物だ!ふざけるな」
 
「ぐふ、ぐふ、大丈夫です。
 ギイトならきっと生体義装具を御して自分の唯一無二の武器に出来ますよ」 


「おいっ!クネクネするな。服の中に入るな!変な場所を触るな!
 ぐっ、なぜ尻を狙う?魔女の差し金か?く、止めろ!ぐおおおーっ!!」
 
 憐れなギイトの悲鳴が裏庭に響いた。 


 大切なを犠牲にした彼が、戦闘用生体義装具を文字通り手足として征するまで、たいした時間は掛からなかった。


 



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