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その奴隷危険につき①
しおりを挟む戦闘用生体義装具を使いこなしたギイトは、長い戦場生活で培われた戦闘力を多いに生かした。
破竹の勢いで地方の小さな剣術大会から優勝をし続け、半年後には優勝者しか出場権のない大きな都市部の大会に出場し優勝するまでになった。
生体義装具を駆使し活躍するギイトのお陰で、義装具は話題になり生体義装具に問い合わせが殺到した。
サクヤは戦闘用生体義装具は強靭な精神、体力がないと意志を保持出来ず危険と判断し、販売しなかった。それでも、通常の生体義装具でも細やかな動作が行え十分に日常生活が送れた。剣を振り、走ることさえ出来る。軍関係者を始め欠損を持つ人たちの注文を受け始めた。
ニチャアとほくそ笑むサクヤに対してギイトの表情は晴れない。
生体義装具を忠実に再現するからと奴隷として買われた初日、サクヤに欠損部位を舐められたことが頭を過ったからだ。
『ギイトの皮膚の味、臭い、熱、感触、形、成分……きちんと覚えましたからね~。ぐふ、えふっ、楽しみに待っててください』
ーー生体義装具を作るために、他の男の欠損も舐めるのか?
長い舌を指差し不気味に笑う魔女ー。黒い瞳を潤ませ、うっとりと陶酔した恍惚の表情で執拗に欠損部位を這う熱い舌。
ーーだらしない顔を他の男にも見せるつもりか。
嫉妬なのか独占欲なのか、腹の底からじわりじわり滲み出る苦い感情。ギイトは面白くなかった。
剣術大会に出場するため地方を旅した。泊まるホテルは奴隷と同室。町に繰り出しても魔女はギイトにいちいち意見を聞くのだ。何が食べたいのか?見たいものがあるのか?行きたい場所があるのか?と。
それがギイトは不思議でならない。俺は奴隷だ。ただ命令すればいいのだ。
意志を尊重され大切にされていると錯覚させたいのか?前に言ったようにただの愛玩用か?
ギイトは、父も母も家族の暖かさも知らない。判断が付かなかった。
「ぐふ、今夜も舐めていいですか?」
「……ああ」
半年経っても就寝前、サクヤにギイトは欠損部を舐められ続けていた。
奴隷の俺に拒否権はあるのか?
拒否したことにより魔女が豹変しギイトを虐げない保証はない。
欠損部を舐めるだけでそれ以上は進まない行為。いや、嬉々として欠損部を舐めること自体が異常なのだ。しかし、毎夜行われる儀式のような行為にギイト自身が慣れて受け入れてしまっていた。
ギイトも妙齢の雄である、込み上げるモノがある。雄が熱を持ち緩く立ち上がりそうになるのを歯を食い閉め耐えた。
気づかない魔女は自分が舐めて満足すると耐えるギイトを抱き枕にし、あっさり寝てしまう。
ギイトは魔女が寝ついた後にこっそり後始末をしていた。
戦闘用生体義装具に変わってからも夕方になると義足義手は外され、栄養液に漬け込まれる。
魔女に豪華な夕食を餌付けされ、そのまま拐われようにお風呂場に連行される生活は変わらない。
「ぐふふ、ぐふ、ギイト痒いところはありますか」
今もこうして体の一部以外洗われている。
「……くっ」
魔女の小さな泡だらけの手がお尻を洗う。魔女はお尻の穴は洗ってくれるが、ギイトの雄を洗わない。
いつもスポンジをギイトの左手に持たせ大事な所は自分で洗うように促すのだ。
奴隷館で性的玩具にされてきたギイトは、雄芯に強制的に触れられ、精を絞りとられる行為に憎悪と嫌悪感を持っていた……その筈なのだが……。
小さな手が後ろの袋を掠めギイトの雄芯が震える。耐えていたギイトの雄が緩く頭をもたげても「ぐふ、生理現象ですか?落ち着いてくださいね」と、目を細めるだけでサクヤは雄芯に触れようともしない。
(……なぜ触れない?
欠損部には興奮して鼻息荒く、散々触れては舐めるクセ!男の俺には興味がないのか?)
魔女に性的玩具にされたいわけではないが、雄だと思われていないことが妙に悔しいのだ。
ギイトの葛藤に全く気づきもしない魔女に日々苛立つようになった。
そんなある日、魔女の工房に来客が来た。とうとうギイト以外に生体義装具を作成するのだ。
その日ギイトはサクヤから週に一度の休暇日だった。
モニターのお給料の他に剣術大会賞金の半額を支払われ、大会後の臨時休暇も与えられた。
既にギイトの首から逃亡予防の重い首輪は既に外され、お互いの居場所が解るお揃いの耳環を付ける条件で、町と屋敷の自由な行き来を許可されていた。快適な衣食住と外出の自由、ただの奴隷には勿体ないほどの厚待遇。それでもギイトの気分は晴れない。
(ふんっ……俺が逃げられないと知っているから自由にさせているだけだ)
奴隷の首輪で縛らなくとも、生体義装具のメンテナンスが必要なギイトは所詮サクヤから離れられない。仮初の自由、どこに行こうと最終的に魔女の側に帰るしかないのだから。
外出する気にならないギイトは、魔女に手伝いを申し出た。
俺じゃなくて誰の欠損でもいいのだろう?
魔女がどんなまぬけ顔で他の男の欠損を舐めしゃぶるのか見てやる。
俺の前で良い主人の皮をかぶっている魔女をただの淫乱女として蔑み、純粋に憎くむことが出来る。
この胸に救う苛立ち、焦燥をどうにかしてしまいたい。
「ぐふふ、休日なのに仕事熱心な奴隷ですね。奴隷の鏡なギイトにご褒美を考えないとです」
ギイトの葛藤を微塵も知らない魔女は呑気に答えたのだ。
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