悪役令嬢の面の皮~目が覚めたらケモ耳旦那さまに股がっていた件

豆丸

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プレゼントを貴方に

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 いきなりの妻呼びに、私の心は有頂天に。旦那さまが認めてくれるなら、いくらでもフェラチオを捧げますよ!顎が外れたっていい!むしろ外れてこそ愛。

「はうっ!旦那さま大好きです。私、留守番頑張ります」 

「……っ、そ、そうですか、お願いします」  

「あはは、ヴィヴィアンさんっておもしろくなったね。シオン隊長良かったですね、大好きだって!あーっ、俺も美人妻に言われたいな~」 

「う、うるさいです!タスクに言うわけありません」 

「え~っ、俺だってもふもふの獣人だしチャンスはあるよね?耳としっぽ好きなだけ触っていいからさ」タスクさんは私に目配せをした。 

 え?好きなだけ、もふもふさせてくれると! 
 ちょっと……どころでなく心引かれつつも旦那さまの視線が鋭利なナイフのように痛いので、丁重にお断りさせて頂きました。 
 
  
 二人を見送り、シリウスくんと庭園で遊びます。 
 今日は、定番の追いかけっこです! 
 待て~待て~っと追いかけて、ぎゅうと抱き締めるとシリウスくんはゴロゴロ鳴いて喜びます。 
  
 毎日のようにシリウスくんと訪れる庭園は、色とりどりどりの四季の花が咲き誇り。小さな温室と、小さいな東屋、真ん中に小川も流れる素晴らしい庭園です。庭師で体の大きな厳ついお爺さん熊獣人ワタルさんの努力の賜物。 
 ワタルさんは若い頃紛争で右目を失くし、傷ついた所を旦那さまのお義父さんに助けられたんだとか。
 見た目から取っつきにくそうですが、シリウスくんを見守るその瞳はとても優しくて。 
 
 シリウスくんは生まれてから一度も人型に変化したことがなく。子猫のままは脆弱で無防備、病気にもかかりやすい。しかも、お姉さんの実家公爵家から物理的にも命を狙われていた。 
 警護の手厚い屋敷から外出したことが数える程しかなく。不憫に思った旦那さまがワタルさんに命じ、庭園を整備させて。少しでもシリウスくんが寂しくないように。体を動かし体力がつけられるよう にと。 

 シリウスくんの獣耳は旦那さまと同じ銀色の毛皮に黒い水玉模様。 
 絶対人型は旦那さまに似てかっこいいんだろう。 

 獣人のお医者さまの診察によれば、シリウスくんが人型に変化出来ないのは、心理的負荷と愛情不足が原因らしい。 
 この世に産まれて直ぐに母親のお姉さんから存在を否定され、無視され続けてきた。 
 公爵家から命も狙われて、シリウスくんの小さな心はどれだけ傷つけられてきたのだろう。 
  
 遊び疲れて、お膝元で眠るシリウスくんをそっと撫でた。手にあわせてピクピク動く猫耳。ピンクの柔らかい肉球。小さな寝息。左右違う長さのヒゲ。くるんと長いしっぽも。どれも、みんな愛おしいのに。
 私にいつでもくっつきたがるのは、不足した愛情を充電するためかな? 
 中身は別人のママで良ければ、幾らでも充電していいからね。 
 
 シャーリングさんが旦那さまの好きなタイプを『家族思いの女性』と、私に教えたのはシリウスくんを大切にしてほしいから。『家族思いの女性になろう作戦』は、本当はシリウスくんの為だよね?
 
 シャーリングさんに騙されたと怒る気持ちはもちろんない。私……シリウスくんのことも好きだもの。  
  
 ふっと湯浅家の父母を思い出す。 
 仲良い家族が煩いと思ってた。でも離れて初めて二人の深い愛情に守られていたとわかる。
 
 私も、シリウスくんを守りたいな。 
 そして、旦那さまとシリウスくんと三人で幸せ家族になるんだ。 

 よしっ!『幸せ家族になろう作戦』決行です! 
 まずはシリウスくんのお誕生日プレゼントを考えないと。 
 三年分のプレゼント何にしようかな~? 
 シリウスくんの好きな毛玉とかかな?首輪は赤が似合いそうだけど……旦那さまに怒られそう。 
  
 どうせなら喜んでほしい。遠巻きに私とシリウスくんを慈悲深く見守る乳母のミミさんにアドバイスをお願いしよう。  
 
「ミミさん改めてご相談があります!」  
「お、奥様か兎の私にどのようなご相談がおありでしょうか?」
 お姉さんからシリウスくんを守ろうと何度も叩かれていたというミミさんの兎耳がビクッと震えた。
 中身が変わったと説明して謝罪したけど、そんな簡単には信じられないし怖いよね。 

「シリウスくんに誕生日にプレゼントを贈りたいんですが、ミミさんはなにがいいと思いますか?シリウスくん欲しい物ありますかね~?」 

「プ……プレゼントですか?お、奥様が?」 
 信じられないと肉に埋めれた目が見開かれたよ。 

「ええっと、ケーキは一緒に作る約束をしたのでケーキ以外で。ちなみに、出来たら2つ用意したいです!ミミさんが嫌じゃなかったら手伝ってくれませんか?」 

「………2つと言うのは」 

「今さらですが、今までの誕生日の分です」 
 プレゼントでシリウスくんの心の傷が埋まるとは思わないけど。
 
「お、奥様……」 
 ボタボタとミミさんの目から大粒の汗じゃなくて、涙がこぼれ落ちた。 

「そ、それでしたら……プレゼントは1つで十分ですので、我が子の、シリウス様のためにファーストシューズを手作りしていたたげないでしょうか?」 

 え?ファーストシューズって確か……赤ちゃんが歩き出し初回に履く、柔らかい靴のことだよね。 
  
 一番下の弟が履いていたと記憶にあるけど…素人に作れるの? 
 私、ちまちました繊細な縫い物が苦手で玉結びすら出来ないけど……大丈夫かな? 

「奥様の愛情のこもったファーストシューズを見たら、シリウス様も履いて歩きたいと。きっと思われます!ですからどうか、お願いします。奥様~っ!」 
 苦手なはずの私の両手をぐっと握り、滂沱の涙を流すミミさんに今さら無理です~っと言えるわけもなく……。 

 ミミさん全面協力のもとファーストシューズを手作りすることになりました。  

 誕生日来週なのに間に合うのかなーっ!?
 

 
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