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第三章 過去世界
幕間 陽気な医師の主語り
※シェルミカ達が不思議な世界に飛ばされ、数日経った後の話。ミハイル視点。
最近、殿下の様子がおかしい。ユイナート殿下も、セシリオ殿下もだ。人が変わってしまったと言われても納得するほど、ふるまいが変わっている。
まず、ユイナート殿下。彼は無表情で、世界全てがつまらないというような表情を常に浮かべていたが、今はどうだ。シェルミカ様の前では、微笑みを浮かべているではないか。初めて彼の笑顔を見た時、私は飛び上がりそうなほど驚いた。絵師に描きとらせて保存しておきたいと思ったほどだ。それに、シェルミカ様の前であれば言葉遣いが丁寧なのだ。彼が敬語を使っているところなんて、陛下の前以外では見たことがない。
シェルミカ様がいなければ、彼の微笑みは消える。ただ、以前のように世界全てがつまらないといった表情ではなく、色々と面倒だからとりあえず無表情を浮かべている、という方が適しているだろう。無表情は無表情でも、異なるということは私にはわかる。 そしてセシリオ殿下。彼はいつも明るく笑顔で、皆もつられて笑みを浮かべてしまうようなそんな温かい方だったが、今はどうだ。彼の笑みはどこに消えた。冷たい視線をして他人を睨んでいる彼を見た時、私は思わず声が出そうなほど驚いた。彼にあのような視線を向けられたら、萎れてしまう者もいるだろう。
今までは殿下達の表情や雰囲気で彼らの見極めをしていた者達は動揺を隠せていない。いくら双子とはいえ顔が全く一緒ということはないが、同じ表情をしている時はほんとうにそっくりだ。見極めがつかないのも当然のことだろう。
「アルビー。調子はどうだい?」
「ミハイルか。別段問題はない」
休憩時間に気分転換で庭園を歩いていた時、見慣れた赤髪の少年を発見した。彼はアルビー、ユイナート殿下の護衛騎士を志望している。私は彼の隣に並び、共に散歩をすることにした。
「最近のユイナート殿下のこと、どう思う?」
「……人が変わられたようだ、と言えば正しいのだろうか。私が見たことのない表情を浮かべる殿下をよく目にするようになった。ただし、シェルミカ様がいらっしゃる時だけであるが」
「そうだよね。最初は殿下がシェルミカ様に惚れたから変わったのだと思ったけど……」
人は恋をすれば変わると言うが、あのユイナート殿下が恋によって大きく変わるとは思えない。
変わったことは、彼らの表情だけではない。彼らの関係も大きく変わったのだ。
「ユイナート殿下とセシリオ殿下は、相変わらず顔も合わせようとしないよね」
「ああ……。殿下達は時折手合わせをしていらっしゃったが、それは一切なくなった。セシリオ殿下が訓練場にいらっしゃることはあるものの、殿下がいない時に限る」
以前からも二人の間での会話が多かったとは言えないが、今ではめっきりとなくなった。セシリオ殿下がユイナート殿下に沢山話しかける、という形だったので、セシリオ殿下が話されなくなると会話もなくなるのだろう。
私はどちらかといえばユイナート殿下と関わることが多い。彼は言葉少なく、他人との会話を好んでいないようにも見える。しかし、今は会話が続く。「ユイナート殿下、こんにちは。本日はどちらへ?」「……ああ」で終わっていた会話が、「ユイナート殿下、こんにちは。本日はどちらへ?」「……ああ。訓練場で体を動かす」と、返事をしてくださるようになったのだ。とても嬉しいことだ。
セシリオ殿下とも話すことは多いのだが、今は少ない。というより、殿下が私を含め、他人を避けている。以前は王城内を歩いていたら何度も見かけていた彼の姿は、最近では全く目にしなくなった。普段どこにいらっしゃるのか、噂は聞こえてくるもののはっきりとは分からない。
「そういえば、トア達から聞いたのだけど。ユイナート殿下がもっと強くなったって」
「そうだ。不思議なことに、我々の前で体を動かそうとしなかった殿下が、最近では積極的に訓練場で体を動かしていらっしゃる。剣筋も洗練され、動きに無駄はない。我々の士気が上がっている。私も殿下のように強くなりたいものだ」
「へぇ……。やっぱり、ユイナート殿下は変わったのかもしれないね」
色々と含みをもたせてそう言うと、アルビーは目を瞬きながら私を見た。私は軽く笑って誤魔化す。
ユイナート殿下は言葉が足りないところが多いのに加えて頭の回転が速く、大人であっても彼の真意を見抜くことは難しい。彼とセシリオ殿下の性格は大きく異なっているように見えるが、実は似た者同士なのだ。彼らは衝突することも多いが、両者共に互いのことを信頼し、信用している。素晴らしい関係だと私は思っている。
ただ……今の彼らは、すれ違いが行き過ぎて溝が深くなっているようだ。大喧嘩でもしたのか分からないが、私はお二人の傍で見守ることにしよう。
「……殿下達には、幸せになっていただきたい」
「同意するよ。私達は、いつまでも殿下達の味方でいようね」
最近、殿下の様子がおかしい。ユイナート殿下も、セシリオ殿下もだ。人が変わってしまったと言われても納得するほど、ふるまいが変わっている。
まず、ユイナート殿下。彼は無表情で、世界全てがつまらないというような表情を常に浮かべていたが、今はどうだ。シェルミカ様の前では、微笑みを浮かべているではないか。初めて彼の笑顔を見た時、私は飛び上がりそうなほど驚いた。絵師に描きとらせて保存しておきたいと思ったほどだ。それに、シェルミカ様の前であれば言葉遣いが丁寧なのだ。彼が敬語を使っているところなんて、陛下の前以外では見たことがない。
シェルミカ様がいなければ、彼の微笑みは消える。ただ、以前のように世界全てがつまらないといった表情ではなく、色々と面倒だからとりあえず無表情を浮かべている、という方が適しているだろう。無表情は無表情でも、異なるということは私にはわかる。 そしてセシリオ殿下。彼はいつも明るく笑顔で、皆もつられて笑みを浮かべてしまうようなそんな温かい方だったが、今はどうだ。彼の笑みはどこに消えた。冷たい視線をして他人を睨んでいる彼を見た時、私は思わず声が出そうなほど驚いた。彼にあのような視線を向けられたら、萎れてしまう者もいるだろう。
今までは殿下達の表情や雰囲気で彼らの見極めをしていた者達は動揺を隠せていない。いくら双子とはいえ顔が全く一緒ということはないが、同じ表情をしている時はほんとうにそっくりだ。見極めがつかないのも当然のことだろう。
「アルビー。調子はどうだい?」
「ミハイルか。別段問題はない」
休憩時間に気分転換で庭園を歩いていた時、見慣れた赤髪の少年を発見した。彼はアルビー、ユイナート殿下の護衛騎士を志望している。私は彼の隣に並び、共に散歩をすることにした。
「最近のユイナート殿下のこと、どう思う?」
「……人が変わられたようだ、と言えば正しいのだろうか。私が見たことのない表情を浮かべる殿下をよく目にするようになった。ただし、シェルミカ様がいらっしゃる時だけであるが」
「そうだよね。最初は殿下がシェルミカ様に惚れたから変わったのだと思ったけど……」
人は恋をすれば変わると言うが、あのユイナート殿下が恋によって大きく変わるとは思えない。
変わったことは、彼らの表情だけではない。彼らの関係も大きく変わったのだ。
「ユイナート殿下とセシリオ殿下は、相変わらず顔も合わせようとしないよね」
「ああ……。殿下達は時折手合わせをしていらっしゃったが、それは一切なくなった。セシリオ殿下が訓練場にいらっしゃることはあるものの、殿下がいない時に限る」
以前からも二人の間での会話が多かったとは言えないが、今ではめっきりとなくなった。セシリオ殿下がユイナート殿下に沢山話しかける、という形だったので、セシリオ殿下が話されなくなると会話もなくなるのだろう。
私はどちらかといえばユイナート殿下と関わることが多い。彼は言葉少なく、他人との会話を好んでいないようにも見える。しかし、今は会話が続く。「ユイナート殿下、こんにちは。本日はどちらへ?」「……ああ」で終わっていた会話が、「ユイナート殿下、こんにちは。本日はどちらへ?」「……ああ。訓練場で体を動かす」と、返事をしてくださるようになったのだ。とても嬉しいことだ。
セシリオ殿下とも話すことは多いのだが、今は少ない。というより、殿下が私を含め、他人を避けている。以前は王城内を歩いていたら何度も見かけていた彼の姿は、最近では全く目にしなくなった。普段どこにいらっしゃるのか、噂は聞こえてくるもののはっきりとは分からない。
「そういえば、トア達から聞いたのだけど。ユイナート殿下がもっと強くなったって」
「そうだ。不思議なことに、我々の前で体を動かそうとしなかった殿下が、最近では積極的に訓練場で体を動かしていらっしゃる。剣筋も洗練され、動きに無駄はない。我々の士気が上がっている。私も殿下のように強くなりたいものだ」
「へぇ……。やっぱり、ユイナート殿下は変わったのかもしれないね」
色々と含みをもたせてそう言うと、アルビーは目を瞬きながら私を見た。私は軽く笑って誤魔化す。
ユイナート殿下は言葉が足りないところが多いのに加えて頭の回転が速く、大人であっても彼の真意を見抜くことは難しい。彼とセシリオ殿下の性格は大きく異なっているように見えるが、実は似た者同士なのだ。彼らは衝突することも多いが、両者共に互いのことを信頼し、信用している。素晴らしい関係だと私は思っている。
ただ……今の彼らは、すれ違いが行き過ぎて溝が深くなっているようだ。大喧嘩でもしたのか分からないが、私はお二人の傍で見守ることにしよう。
「……殿下達には、幸せになっていただきたい」
「同意するよ。私達は、いつまでも殿下達の味方でいようね」
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