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第三章 過去世界
幕間 幸せな夢
※不思議な世界に飛んでから数日経った後。ユイナートが健全な夢(大嘘)を見て、目覚めてからかなり気落ちする話。
……愛しい女が自分を求めている。
ユイナートは目を細めて彼女の髪を撫で、口づける。深く深く口づけ、舌を絡め合い、彼女と同じように彼も彼女を求める。もっと深く彼女と繋がり、彼女を支配し、自分のものにしたい。
愛していると、言葉に出すことはできない。代わりに彼の強い気持ちを行動に乗せ、彼女を快楽へと誘う。気持ちがいいと、彼女が口にしたら彼の勝ちだ。自分が決めた、自分だけの勝手なルール。彼が勝った時は、もっと彼女を求めても良い。
白い肌を撫でて、細い腕を掴んで、艶やかな唇を貪って、甘く心地いい声を聞いて。もっと欲しい、彼女の全てが欲しいと願ってしまう。
「……っは、ユイト、さまぁ」
「シェミ。僕のシェルミカ。貴女は僕の、僕だけのものです」
そう言う度に、心が痛むことはある。それでも彼女は自分だけのものだと、何度も口に出す。誰にも渡さない。渡したくない。誰にも盗られないように閉じ込めて、愛を注ぎ続けて、貴女には自分しかいないと思わせて。そうしたら、彼女の全てを得ることができるのだろうか。
……ああ、愛していると言えたら、どんなに嬉しいだろうか。しかし彼には、彼女を愛する資格などない。
……ああ、愛していると言ってもらえたら、どんなに幸せだろうか。しかし彼には、彼女から愛される資格などない。
「恥ずかしがらないで。もっと、貴女の声を聞かせてください」
「……あぁっ! もう、だめぇ」
「だめじゃないでしょう? 貴女の身体は、こんなにも僕を求めているのに」
少し意地の悪いことを言ったり行ったりすると、彼女は目を潤ませ、それでも彼を求めてくれる。達して、淫らな声を上げて、可愛い顔を見せてくれる。その度に彼の体の奥底は熱を帯び、熱い感情が溢れ出す。
深く、強く、大きな思いが、彼女に少しでも届けば良い。そう願いながら、彼は彼女を強く抱き締めた。
夢だと分かった時の彼の気持ちは、最悪の一言に尽きる。
身体を起こしたユイナートは、自分の体が小さいままであることと、下の方が濡れていることに気が付いて深々とため息を吐く。やはりこの体は不便で未熟だと思いながら、彼は片手で目を覆った。
「……夢だったなら」
全部、言ってしまえばよかった。そういう弱った考えが浮かび、頭を振ってかき消す。
そして彼はベッドから降り、手早く着替えと証拠隠滅を済ませる。窓の外はまだ暗いが、長時間眠ることに慣れていない彼は早くに目覚めてしまうことが多い。早朝に訓練場に行って体を動かし、調子を整えることを繰り返している。
今日もまた、訓練場を訪れる。彼女の夢を見たせいか無性に彼女に会って彼女を抱き締めたいと思うが、彼女は教会に戻ってしまったので手の届く場所にはいない。舌打ちをしたいのを抑えながら、彼は剣を振り下ろす。
剣を振っている間は無心になることが多いが、今は雑念が多い。やはりあのような夢を見たせいだろう。彼女を抱けないことで欲求不満が溜まりに溜まっていたのだろうか。
確かに彼は、三大欲求の中でも性欲が最も強い方だ。睡眠欲、食欲には全くこだわりがないのに反し、生存に直接関わることのない性欲が最も強い。彼の少年時代は、そのようなことはなかったのだが。むしろ、情欲などないに等しかった。成長したことで生殖本能が強くなったのだろうかと考えたが、彼女相手でなければ気分が高揚することはない。
早く元の体に戻って、面倒ごとを全て片付けて、彼女を連れ戻して、愛し合いたい。
……そうするためにも、この世界をなんとかしなくてはならない。神の従者の言葉から、彼らが元の世界に戻るには、彼らの望みをここで叶える必要があるらしい。
彼の望みとは。心当たりがないと言うならば、嘘になる。
彼はまだしも、あいつと彼女の望みとは何なのか。彼女ら自身、心当たりがなさそうな素振りを見せていた。心の奥底にある望みであったなら、自覚がないのも納得はできる。
ふと、先日あいつが彼女に口づけをしたことを思い出し、怒りが再燃してきた。緊急性があり仕方のないことだったとはいえ、自分が行うべきだったと後悔している。正当な理由で彼女に口づけができる機会だったのだ。
彼は呼吸を整えながら、雑念を切り裂くように鋭く剣を振り下ろした。
……愛しい女が自分を求めている。
ユイナートは目を細めて彼女の髪を撫で、口づける。深く深く口づけ、舌を絡め合い、彼女と同じように彼も彼女を求める。もっと深く彼女と繋がり、彼女を支配し、自分のものにしたい。
愛していると、言葉に出すことはできない。代わりに彼の強い気持ちを行動に乗せ、彼女を快楽へと誘う。気持ちがいいと、彼女が口にしたら彼の勝ちだ。自分が決めた、自分だけの勝手なルール。彼が勝った時は、もっと彼女を求めても良い。
白い肌を撫でて、細い腕を掴んで、艶やかな唇を貪って、甘く心地いい声を聞いて。もっと欲しい、彼女の全てが欲しいと願ってしまう。
「……っは、ユイト、さまぁ」
「シェミ。僕のシェルミカ。貴女は僕の、僕だけのものです」
そう言う度に、心が痛むことはある。それでも彼女は自分だけのものだと、何度も口に出す。誰にも渡さない。渡したくない。誰にも盗られないように閉じ込めて、愛を注ぎ続けて、貴女には自分しかいないと思わせて。そうしたら、彼女の全てを得ることができるのだろうか。
……ああ、愛していると言えたら、どんなに嬉しいだろうか。しかし彼には、彼女を愛する資格などない。
……ああ、愛していると言ってもらえたら、どんなに幸せだろうか。しかし彼には、彼女から愛される資格などない。
「恥ずかしがらないで。もっと、貴女の声を聞かせてください」
「……あぁっ! もう、だめぇ」
「だめじゃないでしょう? 貴女の身体は、こんなにも僕を求めているのに」
少し意地の悪いことを言ったり行ったりすると、彼女は目を潤ませ、それでも彼を求めてくれる。達して、淫らな声を上げて、可愛い顔を見せてくれる。その度に彼の体の奥底は熱を帯び、熱い感情が溢れ出す。
深く、強く、大きな思いが、彼女に少しでも届けば良い。そう願いながら、彼は彼女を強く抱き締めた。
夢だと分かった時の彼の気持ちは、最悪の一言に尽きる。
身体を起こしたユイナートは、自分の体が小さいままであることと、下の方が濡れていることに気が付いて深々とため息を吐く。やはりこの体は不便で未熟だと思いながら、彼は片手で目を覆った。
「……夢だったなら」
全部、言ってしまえばよかった。そういう弱った考えが浮かび、頭を振ってかき消す。
そして彼はベッドから降り、手早く着替えと証拠隠滅を済ませる。窓の外はまだ暗いが、長時間眠ることに慣れていない彼は早くに目覚めてしまうことが多い。早朝に訓練場に行って体を動かし、調子を整えることを繰り返している。
今日もまた、訓練場を訪れる。彼女の夢を見たせいか無性に彼女に会って彼女を抱き締めたいと思うが、彼女は教会に戻ってしまったので手の届く場所にはいない。舌打ちをしたいのを抑えながら、彼は剣を振り下ろす。
剣を振っている間は無心になることが多いが、今は雑念が多い。やはりあのような夢を見たせいだろう。彼女を抱けないことで欲求不満が溜まりに溜まっていたのだろうか。
確かに彼は、三大欲求の中でも性欲が最も強い方だ。睡眠欲、食欲には全くこだわりがないのに反し、生存に直接関わることのない性欲が最も強い。彼の少年時代は、そのようなことはなかったのだが。むしろ、情欲などないに等しかった。成長したことで生殖本能が強くなったのだろうかと考えたが、彼女相手でなければ気分が高揚することはない。
早く元の体に戻って、面倒ごとを全て片付けて、彼女を連れ戻して、愛し合いたい。
……そうするためにも、この世界をなんとかしなくてはならない。神の従者の言葉から、彼らが元の世界に戻るには、彼らの望みをここで叶える必要があるらしい。
彼の望みとは。心当たりがないと言うならば、嘘になる。
彼はまだしも、あいつと彼女の望みとは何なのか。彼女ら自身、心当たりがなさそうな素振りを見せていた。心の奥底にある望みであったなら、自覚がないのも納得はできる。
ふと、先日あいつが彼女に口づけをしたことを思い出し、怒りが再燃してきた。緊急性があり仕方のないことだったとはいえ、自分が行うべきだったと後悔している。正当な理由で彼女に口づけができる機会だったのだ。
彼は呼吸を整えながら、雑念を切り裂くように鋭く剣を振り下ろした。
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