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第215話 シャルル魔道具販売所
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「ナーナルン様、大変です!!」
「どうしたのフィル、そんなに慌てて…」
「良いですかぁ~。驚かないでくださいよぉ~」
「何よ、もったいぶって…」
「なんと…」
(ゴクリ…)
「シャルル様が魔道具を発明されたそうなんです!」
「なっ…、なんですって~!?」
「“シャルルの風”という魔道具なんですが、販売されているケープノット領都では、初回販売分があっという間に売り切れたそうです」
「……」
フィルはどうしてそんなことを知っているのかしら…。
「あれ? ナーナルン様、どうして知っているんだって顔をされていますね」
「フンッ…、あなたの情報網についてはもうどうでもいいわ。それよりも早く…」
「ひどいですねぇ。喜ばれると思いましたのに…」
XX XY
コンコン、コン。
「はい…」
ガチャ…。
「お、お母様!」
「はいはい…、分かっていますよ。“シャルルの風”についてでしょう?」
「まさかお母様、今回もとっくに知っていたということですか?」
“シャルルのりんこパフ”では私だけ教えてもらえず悲しい思いをしました…。
「残念ですが、今回はルーシャ様から連絡をいただくまで知りませんでした」
それを聞いて私はフィルを見やりますが、私から目を逸らしてしまいます。
「それで、どうされるおつもりですか?」
「今、ネルとも話していましたが、シャルル君の発明した物ですからおそらくそれは入手困難になっているはずでしょう」
ルーシャ様のおっしゃられている『シャルル魔道具販売所』という直販店をすぐに設けても商品がすぐ手に入るとは思えません。
「ですから明日、ケープノット領都へ向かい直接手に入れようと思っています」
「さすがシクスエス様、行動が早いですね」
「お母様、私も早く“シャルルの風”が欲しいので一緒に行ってもいいですか?」
ネルの言うように早く動いた方が良さそうです。
「ナーナルンをですか…」
「シクスエス様…、シクスエス様のおっしゃっているように現在“シャルルの風”は入手困難で、購入できるのは一人1個となっているそうですよ」
「どうしてフィルがそんなことを知っているの…?」
「し、知り合いから聞きまして…」
「……、そうですか…」
領主としていくつかまとめて譲ってもらおうと思っていたのですが、それも無理なのかもしれませんね…。
「分かりました…。“転移の祠”を使う予定ですから連れていってあげましょう」
「ありがとう、お母様!」
「ではネル、フィル、明日までに準備をお願いします」
「「かしこまりました」」
XX XY
ガチャ…。
「マイヤ、いるぅ~?」
「いらっしゃいませ~。え~っと、あなたは…?」
「ロクサーヌよ、マイヤを呼んでくれるかしら…」
「少々お待ちください…」
「あっ、ロクサーヌ…、なの…?」
「私だよ…、今エルスタイン領都から戻ったんだよ」
「お、お帰り…。それにしても丸くなったわね」
「そりゃあ、エルスタイン領都のお菓子があまりに美味しくて…、ってそんなことはいいんだよ」
「それで、ちゃんとシャルル様には“シャルルの風”はお渡しできたのね」
「ああ、ちゃんとルーシャ様にも手紙を渡してきたよ」
「それで、なんて言っておられたの?」
「他領で販売する時は『シャルル魔道具販売所』という直販店を設けるそうだよ」
「なるほどねぇ。ここで作った“シャルルの風”を各直販店に運送するということね」
「これもシャルル様の考えなんだよ」
「本当にあの方はすごいわね~」
「ケープノット領都での販売はこのままマイヤに任せてくれるそうだぞ」
「良かったわ~」
「でも、販売場所の看板は『シャルル魔道具販売所』としておいた方がこちらにも都合が良さそうね」
ルーシャ様やシャルル様の信頼にもっと答えられるように頑張らないと…。
「それにしても店が変わっていないな。生産量を3倍にするんじゃなかったの?」
「ええ、ここはこのままだけど、他に生産拠点が2箇所出来たのよ。今のところ販売するのはここだけだけどね」
「それで、“シャルルの風”の反響はどうだったんだ?」
「それが、初回販売の時は一刻も掛からずに600個が売り切れたわ」
「翌日には口伝てであっという間に広まっていて、商品も無いのに製作所の前は人だかりになったのよ」
「今も販売したそばから一瞬で売れていくわ」
「それはすごいねぇ」
「予想していた通り商会や商人が偽物を作ろうとしたみたいだけど、エバーミット様のおかげで今のところそれは無いわ」
「でも、私の魔道具製作所ごと買収しようとする商会が来たのよ」
「馬鹿な奴らだな…。エバーミット様の支援が入っているとも知らないで…」
「そうね。それにすごい商品を安心して作っていけるから従業員の士気も高いのよ」
「今ではうちの魔道具製作所で働けるのは領民にとって憧れらしいの」
「おかしいでしょ…フフッ」
「本当だな…ハハハ…」
「まぁ、またエルスタイン領都に用事があるようだったら私が行くから…」
「シャルル様には以前の無礼を許してもらえたの?」
「あぁ、たぶん…。気にしておられる様子はなかったよ」
「もう何もかもが大き過ぎて…」
「でも弟子入りを頼んだら丁寧に断られたよ。不思議なことに教えるのがダメなんじゃなくて、教えることが難しいそうなんだ…」
「まぁ、今度鉱石を採りに行くときは付いて行くことを了承してもらったけれどね」
「良かったじゃない…。先に私がシャルル様の弟子になりたいぐらいよ」
「そうそう、ルーシャ様のお屋敷にはシャルル様が考えられたお風呂もあったんだよ」
「シャルル様は天才だよ…。心地良くて毎日入っちゃったよ…」
「へぇ~、お湯が浴びられたらそれで十分って言ってたぐらいなのにね」
「私もいつか行ってみたいわ~」
ロクサーヌの話を聞いているだけで羨ましくなってくるのでした。
「どうしたのフィル、そんなに慌てて…」
「良いですかぁ~。驚かないでくださいよぉ~」
「何よ、もったいぶって…」
「なんと…」
(ゴクリ…)
「シャルル様が魔道具を発明されたそうなんです!」
「なっ…、なんですって~!?」
「“シャルルの風”という魔道具なんですが、販売されているケープノット領都では、初回販売分があっという間に売り切れたそうです」
「……」
フィルはどうしてそんなことを知っているのかしら…。
「あれ? ナーナルン様、どうして知っているんだって顔をされていますね」
「フンッ…、あなたの情報網についてはもうどうでもいいわ。それよりも早く…」
「ひどいですねぇ。喜ばれると思いましたのに…」
XX XY
コンコン、コン。
「はい…」
ガチャ…。
「お、お母様!」
「はいはい…、分かっていますよ。“シャルルの風”についてでしょう?」
「まさかお母様、今回もとっくに知っていたということですか?」
“シャルルのりんこパフ”では私だけ教えてもらえず悲しい思いをしました…。
「残念ですが、今回はルーシャ様から連絡をいただくまで知りませんでした」
それを聞いて私はフィルを見やりますが、私から目を逸らしてしまいます。
「それで、どうされるおつもりですか?」
「今、ネルとも話していましたが、シャルル君の発明した物ですからおそらくそれは入手困難になっているはずでしょう」
ルーシャ様のおっしゃられている『シャルル魔道具販売所』という直販店をすぐに設けても商品がすぐ手に入るとは思えません。
「ですから明日、ケープノット領都へ向かい直接手に入れようと思っています」
「さすがシクスエス様、行動が早いですね」
「お母様、私も早く“シャルルの風”が欲しいので一緒に行ってもいいですか?」
ネルの言うように早く動いた方が良さそうです。
「ナーナルンをですか…」
「シクスエス様…、シクスエス様のおっしゃっているように現在“シャルルの風”は入手困難で、購入できるのは一人1個となっているそうですよ」
「どうしてフィルがそんなことを知っているの…?」
「し、知り合いから聞きまして…」
「……、そうですか…」
領主としていくつかまとめて譲ってもらおうと思っていたのですが、それも無理なのかもしれませんね…。
「分かりました…。“転移の祠”を使う予定ですから連れていってあげましょう」
「ありがとう、お母様!」
「ではネル、フィル、明日までに準備をお願いします」
「「かしこまりました」」
XX XY
ガチャ…。
「マイヤ、いるぅ~?」
「いらっしゃいませ~。え~っと、あなたは…?」
「ロクサーヌよ、マイヤを呼んでくれるかしら…」
「少々お待ちください…」
「あっ、ロクサーヌ…、なの…?」
「私だよ…、今エルスタイン領都から戻ったんだよ」
「お、お帰り…。それにしても丸くなったわね」
「そりゃあ、エルスタイン領都のお菓子があまりに美味しくて…、ってそんなことはいいんだよ」
「それで、ちゃんとシャルル様には“シャルルの風”はお渡しできたのね」
「ああ、ちゃんとルーシャ様にも手紙を渡してきたよ」
「それで、なんて言っておられたの?」
「他領で販売する時は『シャルル魔道具販売所』という直販店を設けるそうだよ」
「なるほどねぇ。ここで作った“シャルルの風”を各直販店に運送するということね」
「これもシャルル様の考えなんだよ」
「本当にあの方はすごいわね~」
「ケープノット領都での販売はこのままマイヤに任せてくれるそうだぞ」
「良かったわ~」
「でも、販売場所の看板は『シャルル魔道具販売所』としておいた方がこちらにも都合が良さそうね」
ルーシャ様やシャルル様の信頼にもっと答えられるように頑張らないと…。
「それにしても店が変わっていないな。生産量を3倍にするんじゃなかったの?」
「ええ、ここはこのままだけど、他に生産拠点が2箇所出来たのよ。今のところ販売するのはここだけだけどね」
「それで、“シャルルの風”の反響はどうだったんだ?」
「それが、初回販売の時は一刻も掛からずに600個が売り切れたわ」
「翌日には口伝てであっという間に広まっていて、商品も無いのに製作所の前は人だかりになったのよ」
「今も販売したそばから一瞬で売れていくわ」
「それはすごいねぇ」
「予想していた通り商会や商人が偽物を作ろうとしたみたいだけど、エバーミット様のおかげで今のところそれは無いわ」
「でも、私の魔道具製作所ごと買収しようとする商会が来たのよ」
「馬鹿な奴らだな…。エバーミット様の支援が入っているとも知らないで…」
「そうね。それにすごい商品を安心して作っていけるから従業員の士気も高いのよ」
「今ではうちの魔道具製作所で働けるのは領民にとって憧れらしいの」
「おかしいでしょ…フフッ」
「本当だな…ハハハ…」
「まぁ、またエルスタイン領都に用事があるようだったら私が行くから…」
「シャルル様には以前の無礼を許してもらえたの?」
「あぁ、たぶん…。気にしておられる様子はなかったよ」
「もう何もかもが大き過ぎて…」
「でも弟子入りを頼んだら丁寧に断られたよ。不思議なことに教えるのがダメなんじゃなくて、教えることが難しいそうなんだ…」
「まぁ、今度鉱石を採りに行くときは付いて行くことを了承してもらったけれどね」
「良かったじゃない…。先に私がシャルル様の弟子になりたいぐらいよ」
「そうそう、ルーシャ様のお屋敷にはシャルル様が考えられたお風呂もあったんだよ」
「シャルル様は天才だよ…。心地良くて毎日入っちゃったよ…」
「へぇ~、お湯が浴びられたらそれで十分って言ってたぐらいなのにね」
「私もいつか行ってみたいわ~」
ロクサーヌの話を聞いているだけで羨ましくなってくるのでした。
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