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第226話 オーリエの帰領編4
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お母さんが領内会議をしている間、いつものように都市内を散策することにしました。
僕たちは執務館から出て広場に沿って歩いています。
「リコッタって何か名物があるのかなぁ」
「今の季節なら“氷もり”でしょうか…」
「あっ、メンテールお姉ちゃん、お母さんの方に付いていなくていいの?」
「それはエリオンに任せました。シエラとエリオンがルーシャ様の側にいれば問題ありません。ただの領内会議ですから…」
「エリオンがダメならキルシッカでしたね」
「え~っ、それはダメです。エリオンには悪いですが私もシャルル様と一緒に街を回りたいです」
「……それで、“氷もり”ってどんな食べ物なの?」
「削った氷に果実の甘い汁をかけて食べる物ですね」
「え~っと、あそこに売っているようです」
メンテールお姉ちゃんの指し示す方を見ると『氷』と書かれた看板が置いてあるのが見えます。
「あ~、あの看板は“氷もり”を売っているところだったんだね」
周りを見るといくつか同じような看板も見えます。
街を歩いていると、すれ違う人がみんな立ち止まってこちらを見ていました。
「なんだか周りの人がこっちを見ている気がするね」
何か変な視線も感じるけれど、こんなにたくさん人もいるし大丈夫かな…。
「本当ですね。どうしてでしょう」
エリシアは僕がそう言って初めて気が付いたようです。
「シャルル様、たぶんメイド服ですよ。スカートの丈が短いメイド服も長い靴下もここにはありませんからね」
「そうかぁ、トリスお姉ちゃんの言うとおりかもね」
特に今日のメンテールお姉ちゃんは靴下が足首までの形だし、ここまで素足が見えているメイド服はめずらしいよね。
サンディお姉さんやローザお姉さんが一般的なメイド服を着ているので余計に目立つのかもしれません。
「そう言えば、マドリーン様のところのメイドの方々もじぃ~っと見ておられましたね」
「まぁ、お姉ちゃん達は綺麗だからね。目立っても仕方がないか…」
「嬉しいです。シャルル様~」と、キルシッカお姉ちゃんが僕の腕に胸を押し付けながら抱き付いてきました。
「えっ!? キ、キルシッカ…、素早い…」
「まるでヌエットのようでしたね」
「こうやって自信をもって外を歩けるのはシャルル様のおかげなんですもの…」
「まぁまぁ、メンテールお姉ちゃんにトリスお姉ちゃんも、早く“氷もり”を食べに行こうよ」
「「はい…」」
XX XY
「オ、オーリエ様がようやくリコッタに現れたわよ!」
「え~、もう来たのぉ~」
「もうって、すでに半月もここでいつ来るかも分からず待っていたのよ」
「だって、ルージュ領や海では“シャルル巻き”が食べられないんだよ~」
「こんなに美味しい物があったら、もうルージュ領や海に戻りたくなくなるよ」
「それは分かるけれど食べ過ぎなんじゃ…。かなり丸くなっているわよ」
「ひどいよ。自分の姿を見てから言ってよね」
「ゴホン……まぁ、なんにせよ任務は任務よ…」
まさか首領が攫われたオーリエ様を運ぶ依頼を受けるなんて…。
仲間の為なのかなぁ。
それにしてもメイドの数が多いわね…、それに変わった服も着ているし…。
男の子もいるようだわ。
「先に港町に戻って首領に報告してくれる? 私はしばらくオーリエ様の行動を確認してから戻るから」
「え~っ、それじゃ最後に“シャルル巻き”を食べてから行くよ…」
「……」
おそらく数日中に港町に向かうかもね。
いよいよか…。
XX XY
「では、ルーシャ様、早速ですがまずはどうやって若々しくなられたのですか?」
『……』
若返ったようになったのはとても嬉しいのですが、こうも見た目が変わってしまうと、さすがに幼馴染にはごまかしがききませんね。
シエラの顔を見ても、どうしようもないっていう顔をしています。
『こ、これは…』
「これは…?」
『シャ、シャルルのおかげなんです…。“シャルルの奇跡”というものですね』
「“シャルル様の奇跡”…ですか…?」
『マドリーンが信じるかどうかは知りませんが、あなたがシャルルに認められ、あなたがシャルルの為に人生を捧げられる覚悟が出来ればその“シャルルの奇跡”を享受できるかもしれません…』
「……えっ、説明はそれで終わりですか? なんだか大層な言い方でしたけれど…」
『そうですよ…』
「そう…ですか…」
ルーシャ様が幼馴染の私に嘘を言われることは考えられないので本当のことなんでしょう。
それにしても“シャルル様の奇跡”とは想像もつきませんね。
シャルル様は男性ですから魔法も使えないはずですし…。
(え~っ!)
“シャルル様の奇跡”とはそういうものだったのですか…?
ルーシャ様の後ろで聞いていた私はとっさにシエラ先輩の顔を見ます。
すると、シエラ先輩は黙ったままニコッと微笑まれるのでした。
「……では、領内会議を始めさせていただきますね」
『ええ…』
マドリーンは“シャルルの奇跡”について少し考えていたようでしたが、話を進めてくれたようです。
「先ほどシャルル様にお礼を言うのを忘れましたが、まずは“シャルルの風”を送っていただいてありがとうございます」
「あれをシャルル様が発明されたとは驚きました」
「お風呂の後や朝に髪を整えるのが楽しみで仕方がありませんよ」
「うっかりメイドに自慢して使わせてしまったら早くリコッタでも販売して欲しいと急かされてしまって…」
「早く各都市でも販売してほしいのですが…」
『それはまだ時間が掛かりそうね。領都にも一度に数百個ぐらいしか入荷しなくて各都市に振り分けるほどはないのよ』
『今のところは領都に買いに来てもらうしかないわね』
「そうですか…」
マドリーンの後ろに仕えているメイド達がとても残念そうにしていますね。
「それにしてもルーシャ様のメイドの方々は変わったメイド服を着ておられますね」
『ええ、先日新しくしたのですよ。皆もとっても気に入っているようです』
『首元や太もも、袖の装飾はシャルルの案だそうです』
「すごい才能ですね。その装飾があるとないのとでは全く違ってみえますね」
「女性らしく華やかで、品があります」
「首元のリボンは属性を表しているんですね。素敵ですよ」
『そうね…』
マドリーンの後ろに仕えているメイド達も羨ましそうに見ています。
「そのメイド服は私達でも手に入れられるのですか?」
『今後どうなるかは分かりませんが、今のところは難しいですね。一人一人採寸され作られていますので…』
「そうですか…」
またしてもマドリーンの後ろに仕えているメイド達が残念そうにしていました。
「でもルーシャ様、ちょうどいい時に来てくださいましたね」
『どうしたの?』
「今晩から数日間、『光の川祭り』という催しがあるのです。せっかくですから領民に挨拶をしてもらいたいのですが…」
『えっ…、またお祭り…』
「なぜ、そんな嫌そうな顔をされるのですか…?」
『いえ、別に嫌というわけじゃ…』
『まさかパートナーを見つける為にあなたが企画してるんじゃ…』
「えっ…、えっ、な、なんで…、そんなこと…」
「都市長なんですから、領民の為に催しを企画するのは当然じゃないですか~」
『……』
上手に言い訳をしていますが目が泳いでいます。
「そ、それにシャルル様もぜひ紹介させていただきたいですね」
「“シャルル巻き”のおかげで、リコッタに住む領民もお店を始めた者が多くなりました」
「リコッタではやはり、“おらんじのシャルル巻き”が名物ですね。今晩夕食後にお出ししますよ」
『そう、シャルルも喜ぶと思うわ』
「シャルル様って確か今年で11歳ですよね?」
「想像していたよりとても大きくて…、かわいくて、格好良くて、たくましい男の子ですね」
「まさか、もう“男”になられたとか…?」
『いいえ、まだですよ』
「でも、もういつ“男”になられてもおかしくないですよねぇ」
「シャルル様の精子…、私もシャルル様の精子なら“誕生の儀”がしてみたいなぁ…。たぶん取り合いになるんじゃ…」
ハッ…!
「まさかエリシア様がシャルル様のパートナー候補なのですか?」
『あなたもリリアンと同じことを聞くのね?』
『パートナーはシャルルが“男”になったら自分で決めるでしょう』
「リリアンとはしばらく連絡は取っていませんが、まさか先にパートナーを見つけていることは無いですよね?」
『どうでしょう…。意中の人はいるようですよ』
シャルルだと言っても良いのですが、なんだか最近私がシャルルのパートナー候補を勝手に増やしているみたいですしからねぇ。
これで本当にシャルルの精子が一回しか採取出来なかったらどうしようかしら…。
冗談抜きで取り合いになりそうです…。
「なっ…、あのリリアンが…」
「昔から彼女は自分を抱きかかえられる男性をパートナーにすると言っていましたが、そんな男性が現れたのですか…。羨ましいです」
私の理想はそれよりも簡単だと思うのですがなかなか出会えません…。
「そんな男性なら2回目の精子が採取可能なんじゃ…。リリアンにお願いするのもありかしら…」
『……』
『まぁ、お祭りについては分かりました』
どんなお祭りか分かりませんが夜の催しも面白そうですね。
XX XY
「マドリーンお姉さん、この“おらんじのシャルル巻き”、とっても美味しかったよ」
僕達は夕食後に出されたリコッタの名物になっている“シャルル巻き”をいただきました。
「シャルル様に喜んでいただけて良かったです」
「“おらんじ”は以前から良く採れている果実なのですが、果実は物によってはとっても酸っぱいので搾って飲むぐらいにしか使われていなかったのです」
「そうなんだ…」
王領の“ふとう”と同じように果実の味にバラつきがあるので果汁を混ぜて飲み物にしていたみたいです。
「それが“シャルル巻き”にすることで、甘めのクリームと酸っぱい果実の組み合わせが良く、リコッタで名物になったんですよ」
「私達もリコッタにいる間は良く食べていたけれど、マドリーン様のお屋敷の味が一番美味しいわね」
「オーリエ様、ありがとうございます。屋敷専用の“おらんじ”果樹園もあるんですよ」
「すごいね~。海からの帰りに果樹園に行ってもいい?」
「もちろんです。シャルル様。ぜひ帰りにお土産にお持ち帰りください」
「ルーシャ様、帰りの楽しみが増えましたね」
『ええ、トリスの言うとおりね』
僕たちは執務館から出て広場に沿って歩いています。
「リコッタって何か名物があるのかなぁ」
「今の季節なら“氷もり”でしょうか…」
「あっ、メンテールお姉ちゃん、お母さんの方に付いていなくていいの?」
「それはエリオンに任せました。シエラとエリオンがルーシャ様の側にいれば問題ありません。ただの領内会議ですから…」
「エリオンがダメならキルシッカでしたね」
「え~っ、それはダメです。エリオンには悪いですが私もシャルル様と一緒に街を回りたいです」
「……それで、“氷もり”ってどんな食べ物なの?」
「削った氷に果実の甘い汁をかけて食べる物ですね」
「え~っと、あそこに売っているようです」
メンテールお姉ちゃんの指し示す方を見ると『氷』と書かれた看板が置いてあるのが見えます。
「あ~、あの看板は“氷もり”を売っているところだったんだね」
周りを見るといくつか同じような看板も見えます。
街を歩いていると、すれ違う人がみんな立ち止まってこちらを見ていました。
「なんだか周りの人がこっちを見ている気がするね」
何か変な視線も感じるけれど、こんなにたくさん人もいるし大丈夫かな…。
「本当ですね。どうしてでしょう」
エリシアは僕がそう言って初めて気が付いたようです。
「シャルル様、たぶんメイド服ですよ。スカートの丈が短いメイド服も長い靴下もここにはありませんからね」
「そうかぁ、トリスお姉ちゃんの言うとおりかもね」
特に今日のメンテールお姉ちゃんは靴下が足首までの形だし、ここまで素足が見えているメイド服はめずらしいよね。
サンディお姉さんやローザお姉さんが一般的なメイド服を着ているので余計に目立つのかもしれません。
「そう言えば、マドリーン様のところのメイドの方々もじぃ~っと見ておられましたね」
「まぁ、お姉ちゃん達は綺麗だからね。目立っても仕方がないか…」
「嬉しいです。シャルル様~」と、キルシッカお姉ちゃんが僕の腕に胸を押し付けながら抱き付いてきました。
「えっ!? キ、キルシッカ…、素早い…」
「まるでヌエットのようでしたね」
「こうやって自信をもって外を歩けるのはシャルル様のおかげなんですもの…」
「まぁまぁ、メンテールお姉ちゃんにトリスお姉ちゃんも、早く“氷もり”を食べに行こうよ」
「「はい…」」
XX XY
「オ、オーリエ様がようやくリコッタに現れたわよ!」
「え~、もう来たのぉ~」
「もうって、すでに半月もここでいつ来るかも分からず待っていたのよ」
「だって、ルージュ領や海では“シャルル巻き”が食べられないんだよ~」
「こんなに美味しい物があったら、もうルージュ領や海に戻りたくなくなるよ」
「それは分かるけれど食べ過ぎなんじゃ…。かなり丸くなっているわよ」
「ひどいよ。自分の姿を見てから言ってよね」
「ゴホン……まぁ、なんにせよ任務は任務よ…」
まさか首領が攫われたオーリエ様を運ぶ依頼を受けるなんて…。
仲間の為なのかなぁ。
それにしてもメイドの数が多いわね…、それに変わった服も着ているし…。
男の子もいるようだわ。
「先に港町に戻って首領に報告してくれる? 私はしばらくオーリエ様の行動を確認してから戻るから」
「え~っ、それじゃ最後に“シャルル巻き”を食べてから行くよ…」
「……」
おそらく数日中に港町に向かうかもね。
いよいよか…。
XX XY
「では、ルーシャ様、早速ですがまずはどうやって若々しくなられたのですか?」
『……』
若返ったようになったのはとても嬉しいのですが、こうも見た目が変わってしまうと、さすがに幼馴染にはごまかしがききませんね。
シエラの顔を見ても、どうしようもないっていう顔をしています。
『こ、これは…』
「これは…?」
『シャ、シャルルのおかげなんです…。“シャルルの奇跡”というものですね』
「“シャルル様の奇跡”…ですか…?」
『マドリーンが信じるかどうかは知りませんが、あなたがシャルルに認められ、あなたがシャルルの為に人生を捧げられる覚悟が出来ればその“シャルルの奇跡”を享受できるかもしれません…』
「……えっ、説明はそれで終わりですか? なんだか大層な言い方でしたけれど…」
『そうですよ…』
「そう…ですか…」
ルーシャ様が幼馴染の私に嘘を言われることは考えられないので本当のことなんでしょう。
それにしても“シャルル様の奇跡”とは想像もつきませんね。
シャルル様は男性ですから魔法も使えないはずですし…。
(え~っ!)
“シャルル様の奇跡”とはそういうものだったのですか…?
ルーシャ様の後ろで聞いていた私はとっさにシエラ先輩の顔を見ます。
すると、シエラ先輩は黙ったままニコッと微笑まれるのでした。
「……では、領内会議を始めさせていただきますね」
『ええ…』
マドリーンは“シャルルの奇跡”について少し考えていたようでしたが、話を進めてくれたようです。
「先ほどシャルル様にお礼を言うのを忘れましたが、まずは“シャルルの風”を送っていただいてありがとうございます」
「あれをシャルル様が発明されたとは驚きました」
「お風呂の後や朝に髪を整えるのが楽しみで仕方がありませんよ」
「うっかりメイドに自慢して使わせてしまったら早くリコッタでも販売して欲しいと急かされてしまって…」
「早く各都市でも販売してほしいのですが…」
『それはまだ時間が掛かりそうね。領都にも一度に数百個ぐらいしか入荷しなくて各都市に振り分けるほどはないのよ』
『今のところは領都に買いに来てもらうしかないわね』
「そうですか…」
マドリーンの後ろに仕えているメイド達がとても残念そうにしていますね。
「それにしてもルーシャ様のメイドの方々は変わったメイド服を着ておられますね」
『ええ、先日新しくしたのですよ。皆もとっても気に入っているようです』
『首元や太もも、袖の装飾はシャルルの案だそうです』
「すごい才能ですね。その装飾があるとないのとでは全く違ってみえますね」
「女性らしく華やかで、品があります」
「首元のリボンは属性を表しているんですね。素敵ですよ」
『そうね…』
マドリーンの後ろに仕えているメイド達も羨ましそうに見ています。
「そのメイド服は私達でも手に入れられるのですか?」
『今後どうなるかは分かりませんが、今のところは難しいですね。一人一人採寸され作られていますので…』
「そうですか…」
またしてもマドリーンの後ろに仕えているメイド達が残念そうにしていました。
「でもルーシャ様、ちょうどいい時に来てくださいましたね」
『どうしたの?』
「今晩から数日間、『光の川祭り』という催しがあるのです。せっかくですから領民に挨拶をしてもらいたいのですが…」
『えっ…、またお祭り…』
「なぜ、そんな嫌そうな顔をされるのですか…?」
『いえ、別に嫌というわけじゃ…』
『まさかパートナーを見つける為にあなたが企画してるんじゃ…』
「えっ…、えっ、な、なんで…、そんなこと…」
「都市長なんですから、領民の為に催しを企画するのは当然じゃないですか~」
『……』
上手に言い訳をしていますが目が泳いでいます。
「そ、それにシャルル様もぜひ紹介させていただきたいですね」
「“シャルル巻き”のおかげで、リコッタに住む領民もお店を始めた者が多くなりました」
「リコッタではやはり、“おらんじのシャルル巻き”が名物ですね。今晩夕食後にお出ししますよ」
『そう、シャルルも喜ぶと思うわ』
「シャルル様って確か今年で11歳ですよね?」
「想像していたよりとても大きくて…、かわいくて、格好良くて、たくましい男の子ですね」
「まさか、もう“男”になられたとか…?」
『いいえ、まだですよ』
「でも、もういつ“男”になられてもおかしくないですよねぇ」
「シャルル様の精子…、私もシャルル様の精子なら“誕生の儀”がしてみたいなぁ…。たぶん取り合いになるんじゃ…」
ハッ…!
「まさかエリシア様がシャルル様のパートナー候補なのですか?」
『あなたもリリアンと同じことを聞くのね?』
『パートナーはシャルルが“男”になったら自分で決めるでしょう』
「リリアンとはしばらく連絡は取っていませんが、まさか先にパートナーを見つけていることは無いですよね?」
『どうでしょう…。意中の人はいるようですよ』
シャルルだと言っても良いのですが、なんだか最近私がシャルルのパートナー候補を勝手に増やしているみたいですしからねぇ。
これで本当にシャルルの精子が一回しか採取出来なかったらどうしようかしら…。
冗談抜きで取り合いになりそうです…。
「なっ…、あのリリアンが…」
「昔から彼女は自分を抱きかかえられる男性をパートナーにすると言っていましたが、そんな男性が現れたのですか…。羨ましいです」
私の理想はそれよりも簡単だと思うのですがなかなか出会えません…。
「そんな男性なら2回目の精子が採取可能なんじゃ…。リリアンにお願いするのもありかしら…」
『……』
『まぁ、お祭りについては分かりました』
どんなお祭りか分かりませんが夜の催しも面白そうですね。
XX XY
「マドリーンお姉さん、この“おらんじのシャルル巻き”、とっても美味しかったよ」
僕達は夕食後に出されたリコッタの名物になっている“シャルル巻き”をいただきました。
「シャルル様に喜んでいただけて良かったです」
「“おらんじ”は以前から良く採れている果実なのですが、果実は物によってはとっても酸っぱいので搾って飲むぐらいにしか使われていなかったのです」
「そうなんだ…」
王領の“ふとう”と同じように果実の味にバラつきがあるので果汁を混ぜて飲み物にしていたみたいです。
「それが“シャルル巻き”にすることで、甘めのクリームと酸っぱい果実の組み合わせが良く、リコッタで名物になったんですよ」
「私達もリコッタにいる間は良く食べていたけれど、マドリーン様のお屋敷の味が一番美味しいわね」
「オーリエ様、ありがとうございます。屋敷専用の“おらんじ”果樹園もあるんですよ」
「すごいね~。海からの帰りに果樹園に行ってもいい?」
「もちろんです。シャルル様。ぜひ帰りにお土産にお持ち帰りください」
「ルーシャ様、帰りの楽しみが増えましたね」
『ええ、トリスの言うとおりね』
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