DNAの改修者

kujibiki

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第452話 発見

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翌朝、早めの朝食を済ませるとエンターシャの屋敷に設置した“シャルルの扉”からフリーノース領のコロビアへ向かうことにします。

「じゃあヨルン、留守番をお願いね」

「シャルル様、今度は私がお世話をしますからね~」

「マリン先輩まで行くのですか…?」

「ヨルンもシャルル様と休暇を楽しんできたでしょ」

「いや、遊びに行くわけじゃないから…」

エンターシャとマリンがそれぞれ僕の腕を取り、胸を押し付けながらヨルンにそう言っています。
エリカを一刻も早く救出しなければならないのですが、昨晩アイとマオと一緒に過ごしたことで不思議と気分は落ち着いています。



XX XY



「デイジーさん、本当にこのまま待っていて大丈夫なのですか? もう7日目ですよ」

「仕方がありません。マーガレット様のご指示なのですから…」
「先日お伝えしたように最初は5日経てば全力で盗賊達を捕獲し、お二人を捜索することになっていたのですが10日間待つことになったのです」

「それは分かっていますが本当に10日経てば解放されるのでしょうか…?」

「分かりません。ですが…」

あと数日です。今となっては首謀者の言葉を信じるしかありません。盗賊ではないと言っていましたから本当に何か目的が済めば解放される可能性はあります。

「とにかくカーミラ様はこれまで通り盗賊達の捕獲をお願いします」

相対した場所からそう遠くに連れ去られてはいないと思いますが下手に動くとお二人の身の安全が…。

コンコン、コン。
ガチャ…。

「カーミラ様、ジャ…ジャトワン領のエンターシャ様がお見えです」

「なんですって!? どうして今頃こんな所へ…」

「それに、黒色の髪と瞳をしたとても格好良くてたくましい男性がご一緒なのです」

「黒色の髪と瞳ですって…、まさか…」

「デイジーさんは心当たりがあるのですか?」

「はい、私の予想が間違っていなければその方はシャルル様とおっしゃるはずですが…、どうしてエンターシャ様と…」

「とにかくエンターシャ様の所へ向かいましょう」



コンコン、コン。
ガチャ…。
「エンターシャ様、お待たせいたしました…」

私がそう言いながら部屋に入るとエンターシャ様と横に座っておられた男性、後ろに控えているメイドの方の視線がこちらに向けられます。

「えっ…」

ちょっと待って…、何この男性…。

「やはりシャルル様でしたか…、こんなところでお会いするだなんて…」

初めてフリーノース領都でお会いしてからまだそんなに経っていませんが更に精悍になられている気がします。
これで12歳というのですから…、エリカ様がすぐにパートナーにとお願いされたのが分かる気がしますね。私も気を許すと見蕩れてしまいそうです。

「確かデイジーお姉さんですよね。デイジーお姉さんがここにいるということはマーガレット様もここに? エリカのことをご存知なのですよね?」

「シャルル、慌てないで…」

「エンターシャ様…?」

エンターシャ様がどうしてあんなに艶やかで瑞々しく若返ったようになられているの…? まるでシェリー様やサマンサ様と同じ様です。
それに後ろに控えているのはマリンさんでしたよね…、同様に驚くほど若々しく変貌しています。
あんなに穏やかな表情をする女性だったかしら…、シャルル様の近くに立っていて柔らかい眼差しで見つめています。まるでシャルル様のメイドのようです。

「ご無沙汰しております、エンターシャ様。シャルル…様、私はこのコロビアを任されておりますカーミラと言います」

「初めましてカーミラ様、シャルルです」

お互いの挨拶が済むと長椅子に座り直します。

「それでエンターシャ様、どうしてコロビアに?」

「はい、エリカさんが攫われたという知らせを聞き、マーガレット様がコロビアにおられるならお力になりたいと思いまして…」

「それは嬉しいのですがエンターシャ様に来ていただいた所でどうにかなるとは…」

「……、それでマーガレット様はどちらに? 少しお話をさせていただきたいのですが…」

「エ…エンターシャ様、実は…」



「……、それでマーガレット様まで連れ去られたという事ですか…?」

「驚いたけれど良かったよ…」

「「シャルル様、何てことを…!」」

「すみません、そういうつもりじゃないのです。話を聞くとエリカはマーガレット様と会われるまで無事で、なおかつ現在は一緒に捕らわれているのですよね?」

話を黙って聞いていた僕がつい最後にそう言ってしまったのでデイジーお姉さんとカーミラ様が顔を赤くして怒ってしまいました。

「それなら思っていたより簡単に探し出せそうだと思いまして…」

「何を言って…」

「カ…カーミラ様、驚かれるかもしれませんがシャルルならお二人を救うことが出来るかもしれないのです」

「そんなこと…、確かに立派な体躯をされていますが男性にどうやって…。毎日、周辺の盗賊達を捕まえてきましたが未だに潜伏地も分からないのですよ」

「カーミラ様がそう思われるのも無理はありませんが、僕ならきっと二人を探し出し、助けることも出来ると思います」
「それで、今日はマーガレット様が捕らえられてから何日目なのですか?」

「……、7日目です…」

なんですか、このシャルルという男性は…。格好良くてたくましいのは分かりますがマーガレット様達を助けられるですって…。

「じゃあデイジーお姉さん、マーガレット様が捕らえられた場所に連れて行ってくれるかな。出来れば今日中に助けたいから」

「なっ、本当に、本当なのですか!? 一体どうやって…」

「シャルル~、私達も連れて行ってくださいね。マーガレット様を救い出した時に私達がいる方が良いでしょうから…」

「う~ん…、良いけれど気を付けてね」

「はいっ、シャルルから離れませんから…」

「……」
何でしょう、マーガレット様達を救出に行くのですよね?
エンターシャ様達の雰囲気はまるで散歩にでも行かれるような感じですよ。



XX XY



コンコン、コン。
ガチャ…。
「首領! 受精卵が…、二つとも受精卵になったそうです!」

「そうですか、それは良かったわ!」

まさかマーガレット様の卵子でも受精卵になるだなんて…。若い男性の精子なら受精する可能性もあるわけね。
後は子宮に戻して受胎させれば…。



ガチャ…。
「お二人とも寛いでいただけていますか?」

「何を言って…、一日中監視されているのに寛げるわけがありませんよ」

それに天井に近い所に朝晩が分かる程度の小さな窓があるだけの部屋に何日も閉じ込められていると気も滅入ってきます。

「お母様、落ち着いて…」

いつも見られているというのはかなりの精神的苦痛です。
お母様と同室になってからお湯を浴びている時や排便中はどちらかが少しでも目隠しになるように立っていますがいくら母娘の間柄でも気分の良いものではありません。
今日で7日目ですよね…?

「お二人とも、今日は良い話を持ってきましたよ。な、なんと…お二人の卵子を共に受精卵にすることが出来たのです!」
「特にマーガレット様の卵子が受精卵になったのには私も驚きました。マーガレット様も驚かれたでしょう? 良かったですね…」

「そ…そんな…」

「今から…その受精卵をお二人の子宮に戻し…」

「な、やめてっ!」
「そんなの嫌よ!」

「……子宮に戻して…と言いたいところですが明日にします。それで受胎が確認出来れば晴れて解放です」
「今日は一日受胎前の気分を味わってください。フフ…楽しみですね…。では…」



「お母様、受精卵が…」

「まさか私の卵子まで受精卵になったというのは驚きです」

「お母様! そんなことを言っている場合ではないですよ。明日にはそれが私達の子宮に戻されるのですよ」

「分かっています。くっ…、それでもどうしたらいいか…」

受精卵が出来たと言っても受胎しない可能性もありますが、それでも受精卵を子宮に戻される嫌悪感は拭い去れません。
領の為とはいえこんな気持ちになる実験をしていただなんて…、私が浅はかだったのですね…。

「お母様…」

明日、受胎させられるだなんて…。
首謀者の言っていたことが本当なら女性に見向きもされないような容姿でひ弱な男性の子供を受胎して“誕生の儀”をすることになるのです。
そんなの嫌、シャルル…、シャルル…。
こんな時に思い出すのはシャルルの事ばかりです。



XX XY



「エンターシャ様、シャルル様、ここになります」

僕達はデイジーお姉さんの運転でマーガレット様を降ろした場所まで連れて来てもらいました。

「シャルル様、先ほども申しましたが首謀者たちの邪魔をしますとお二人の身の安全が…」

「大丈夫です。気付かれないようにしますから…」

こちらに向かう前にもデイジーお姉さんに注意されましたが、ただの脅しでしょう。首謀者達はその10日の間に何かをしようとしているようです。

「シャルル、本当に二人を見つける事が出来るの? 周辺は森や丘になっていて見通しが悪いわよ」

「ここからそんなに離れていなければ簡単だよ。ちょっと待ってね…」

僕はエンターシャにそう答えると静かに【検索】を発動させます。

この辺りにいる人はほとんど盗賊かマーガレット様を連れ去った者達だよね…。
ピンク色の●印が所々に見られます。

おそらく監禁しているとすれば屋外にいる者じゃなくてこの建物かな…。
ポツンとある建物に12名ほどの女性が集まっているのが分かります。

その建物内の一角に別にされている二人…、少し拡大し意識を向けるとマーガレット様とエリカの名前が表示されました。

「やった…、思った通りだよ。二人を見つけたよ」

同じピンク色の●印でも僕が名前を知っていれば表示されるようです。

「ほ…本当ですか!? ここから一歩も動いていないのに…」

まさか魔法? 男性が…? もし魔法だとしてもそんな魔法がある訳が…。

「シャルル様、凄いですよ~」

「シャルルの魔法ですか?(ボソッ)」
「うん…(ボソッ)」

「とにかくあっちの方向にしばらく行ったところに建物があってそこで監禁されているみたい。攫った者達も10人くらいいるし、建物の周りには見張りもいるみたいだね」

「そんな事まで分かるのですか…。では私達がそちらに向かえば気付かれてマーガレット様達が危険な目に…」

「そうだね…」

やっぱり【不可視】と【飛行】は創った方が良さそうです。

「じゃあ、三人とも目を瞑ってくれるかな…」

僕がそう言い皆が目を閉じると、アイやマオをイメージして【不可視】を創造し発動してみます。
アイ達が姿を消している時は見えないだけではなく匂いや気配もありません。
それに自分達の意思で消えたり現れたりすることも出来るのです。

《アイ、マオ、僕はちゃんと消えているかな?》

《はい、私達と同じように消えていますよ》
《マスター、完璧です!》

まさかこんな時に透明人間になれるとは…、ある意味男の願望の一つが達成された瞬間です。

《ご主人様が鬼畜から変態にクラスチェンジ?》

《……アイ、心を読まないでよ…》



「め…目を開けていいよ~」

「えっ、シャ…ルル、どこですか?」
「シャルル様? 声は聞こえたのに…」

「シャルル様が消えた?」

(なるほど、これは凄いです)

本当に目の前に立っていても分からないようです。
試しにまずはマリンの後ろに回って…、お尻を…。

ナデナデ…。

「キャッ!」

「いきなりどうしたのマリン?」

「いえ…、なんでも…」

シャルル様の手が私のお尻を…。

モニュモニュ…。

「あんっ!」

「「エンターシャ様?」」

「だ…大丈夫です」

シャルルがいきなり後ろから両胸を揉んできました。
まさか姿を消すことも出来るだなんて…。

「シャルル…、そのままマーガレット様達を助けに行ってください」

シャルルは聞いていたでしょうか。
一瞬「分かったよ」と声が聞こえたようにも思えましたが、今は風の音しか聞こえてきません。
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