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第4章 ルシアの攻勢
4 技術開発と鉄道敷設
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7月26日
ウラジオストック艦隊、スペインウイゴに寄港。
7月28日
ウラジオストック大陸軍司令部アーネン・ニコライ
「殿下、モンゴルファイア兄弟と名乗るものが参っておりますがいかがいたしましょう。」
「おお、すぐ通せ。」
ジョーゼファー・モンゴルファイアとピエトロ・モンゴルファイア。兄弟は、帝都の製紙業者の息子に生まれた。父ピョールカと母アンヌは全部で15人の子をもうけた。
ジョーゼファーは12番目の子でピエトロは15番目の末っ子だった。ジョーゼファーは典型的な発明家気質を備えた夢見がちな変わり者で、事業には向かない性格だった。ピエトロは要領は良かったが、何故か兄たちと喧嘩が絶えず、建築家にするためにサンクトペテルブルクに修行に出された。しかし長男が突然亡くなり、製紙業の後継者とするべく実家に呼び戻された。
ジョーゼファーは洗濯物を乾燥させるために火を焚いたとき、その上の洗濯物が上昇する気流でうねってポケットのような形になることに気付き、熱気球を思いついた。
ジョーゼファーは木材で四角の枠を作り、上面と側面を布で覆って箱の形にした。下は空いている。紙を丸めて火をつけ、その上に作った枠を置いたところ、すぐさま浮き上がり天井にぶつかった。興奮したジョーゼファーはすぐさま
ピエトロにその仕掛けを見せた。ピエトロも興奮し、兄弟で夢中になった。
その後も実験を続け、帝都での公開実験で大成功を収める。2人を乗せた気球は900メートルほどまで上昇し、帝都上空を25分間にわたって飛行した。凧にあれだけ熱心だったアーネンがこれに目をつけないはずはない。
「よく来てくれた。金に糸目はつけない。君たちの技術をルシアで活かしたい。どれぐらいで飛ばせるようになる?」
8月3日
皇国日ノ本鉄軌道株式会社
「あと一週間で京・尾張間が開通します。」
「よし、護国省へ報告だ。大阪から西は?」
「ようやく、岡山までは開通。芸州の土地買収が進みません。毛利家が抵抗しています。」
「関白殿下から直接毛利家に圧力をかけてもらえ!」
10月28日
京・真田繁信
「なに?水素気球とかいうものを売り込みに来ている?そうか、通せ。」
近江屋宗右衛門、水素が気球を持ち上げるのに適していると考えた人物である。鍛冶屋甚兵衛に製作を依頼。彼らは京の先斗(ぽんと)町の近くで気球を作り始めた。軽くてガスが漏れない気球を作るため、ゴムを油に溶かし、布のシートにそれを塗ったものを縫い合わせるという方法で気球をつくった。
宗右衛門と甚兵衛は鴨川の河原で有人気球の初飛行を行った。気嚢には水素放出用バルブが付けられている。降りるときは水素を放出する。気嚢には網が被せられ、その網で人が乗り込むバスケットを吊るす構造だ。バラストとして砂を詰めた袋をつかった。実験で2人は高度500メートルまで上昇し、2時間ほど飛行した。日没頃に着陸し、甚兵衛が降りたところ、急に気球が上昇しだし、3千メートルの高さに達した。没したはずの太陽が再び見えたという。宗右衛門、あわててバルブを解放して水素を放出して降下する。本人は絶対認めなかったが、よっぽど怖かったのか2度と気球に乗ることはなかった。
この実験は大人気となり、当日は見物人が40万人も出たという。
辰一郎はこの知らせを皇国初の新聞、京都瓦版で知った。ウスリーの戦いでアーネンの凧を知っている辰一郎がこれを見逃すはずがなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
皇国は水素気球の研究のスポンサーになることに成功した。以後、その技術は飛行船に発展していくことになる。
ウラジオストック艦隊、スペインウイゴに寄港。
7月28日
ウラジオストック大陸軍司令部アーネン・ニコライ
「殿下、モンゴルファイア兄弟と名乗るものが参っておりますがいかがいたしましょう。」
「おお、すぐ通せ。」
ジョーゼファー・モンゴルファイアとピエトロ・モンゴルファイア。兄弟は、帝都の製紙業者の息子に生まれた。父ピョールカと母アンヌは全部で15人の子をもうけた。
ジョーゼファーは12番目の子でピエトロは15番目の末っ子だった。ジョーゼファーは典型的な発明家気質を備えた夢見がちな変わり者で、事業には向かない性格だった。ピエトロは要領は良かったが、何故か兄たちと喧嘩が絶えず、建築家にするためにサンクトペテルブルクに修行に出された。しかし長男が突然亡くなり、製紙業の後継者とするべく実家に呼び戻された。
ジョーゼファーは洗濯物を乾燥させるために火を焚いたとき、その上の洗濯物が上昇する気流でうねってポケットのような形になることに気付き、熱気球を思いついた。
ジョーゼファーは木材で四角の枠を作り、上面と側面を布で覆って箱の形にした。下は空いている。紙を丸めて火をつけ、その上に作った枠を置いたところ、すぐさま浮き上がり天井にぶつかった。興奮したジョーゼファーはすぐさま
ピエトロにその仕掛けを見せた。ピエトロも興奮し、兄弟で夢中になった。
その後も実験を続け、帝都での公開実験で大成功を収める。2人を乗せた気球は900メートルほどまで上昇し、帝都上空を25分間にわたって飛行した。凧にあれだけ熱心だったアーネンがこれに目をつけないはずはない。
「よく来てくれた。金に糸目はつけない。君たちの技術をルシアで活かしたい。どれぐらいで飛ばせるようになる?」
8月3日
皇国日ノ本鉄軌道株式会社
「あと一週間で京・尾張間が開通します。」
「よし、護国省へ報告だ。大阪から西は?」
「ようやく、岡山までは開通。芸州の土地買収が進みません。毛利家が抵抗しています。」
「関白殿下から直接毛利家に圧力をかけてもらえ!」
10月28日
京・真田繁信
「なに?水素気球とかいうものを売り込みに来ている?そうか、通せ。」
近江屋宗右衛門、水素が気球を持ち上げるのに適していると考えた人物である。鍛冶屋甚兵衛に製作を依頼。彼らは京の先斗(ぽんと)町の近くで気球を作り始めた。軽くてガスが漏れない気球を作るため、ゴムを油に溶かし、布のシートにそれを塗ったものを縫い合わせるという方法で気球をつくった。
宗右衛門と甚兵衛は鴨川の河原で有人気球の初飛行を行った。気嚢には水素放出用バルブが付けられている。降りるときは水素を放出する。気嚢には網が被せられ、その網で人が乗り込むバスケットを吊るす構造だ。バラストとして砂を詰めた袋をつかった。実験で2人は高度500メートルまで上昇し、2時間ほど飛行した。日没頃に着陸し、甚兵衛が降りたところ、急に気球が上昇しだし、3千メートルの高さに達した。没したはずの太陽が再び見えたという。宗右衛門、あわててバルブを解放して水素を放出して降下する。本人は絶対認めなかったが、よっぽど怖かったのか2度と気球に乗ることはなかった。
この実験は大人気となり、当日は見物人が40万人も出たという。
辰一郎はこの知らせを皇国初の新聞、京都瓦版で知った。ウスリーの戦いでアーネンの凧を知っている辰一郎がこれを見逃すはずがなかった。
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皇国は水素気球の研究のスポンサーになることに成功した。以後、その技術は飛行船に発展していくことになる。
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