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第4章 ルシアの攻勢
5 技術開発と鉄道敷設 2
しおりを挟む9月29日
ウラジオストック艦隊、マダガスカル・セントマリーに到着。
10月5日
ウラジオストックルシア大陸軍司令部
モスコー陸軍工廠イワン・レンドル大佐、新型砲の開発研究者である。この日はかねてよりアーネンに指示されていた新型砲が完成したので報告に来ている。実は丸い弾と大砲の砲口の間には4ミリから5ミリの隙間がある。この隙間を小さくするほど、発射される弾の威力は増すことになる。そのことを踏まえて新型砲を研究せよと命令されていたのだ。
試行錯誤した結果、大口径の方が鋳造加工しやすいことがわかった。底が浅ければもっとやり易い。当初想定していたふつうのカノン砲の長射程化、威力増大とは違ってしまったが、これはこれで一つの成果であった。
「皇太弟殿下、大口径の砲の軽量化に成功致しましたが、残念ながら陸上では使う場面がないようです。ですが、艦砲としては使い道があるように思われます。射程が短い代わりに破壊力抜群です。」
「うむ、よくやったレンドル、これはレンドル砲と名付けよう。」
レンドル大佐、実に嬉しそうな顔になる。
レンドル砲の特徴は砲身の短さと肉薄にあり、例えば同じ32ポンド砲と比較するとデミ・カノン砲が自重2.5tに対して、レンドル砲は0.8トン。砲身長3メートルに対して1.2メートルと半分以下である。また砲は初期を除いて従来の砲車ではなく、発射時に反動吸収装置として働くスライド式の固定砲架上に載せられており、これによって一門あたりの砲員が少なく済む利点を生み出し、戦列艦の補助火砲として、また通常は搭載不可能な大口径砲を4等級以下の重フリゲートに積載することが可能になった。
レンドル砲のもうひとつの特徴は、重さの割に口径が大きめに作られていたことである。そのサイズから滅多に艦砲にならない68ポンドの重砲弾が撃てるものまでが作られた。また短砲身・大口径であることから砲腔を精確に鋳造加工しやすく、射撃精度はより長砲身のカルバリン砲やカノン砲に劣るものではなかった。
但し、代償として射程が犠牲になっており、カノンロイヤル級の68ポンド砲で比較すると通常砲の最大射程が約1600メートルに対し、レンドル砲は約360メートルしかない。あくまで肉迫して威力を発揮する近距離専門砲である。
「ウラジオストック艦隊の出港には間に合いませんでしたので、陸路を運んでおります。」
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10月30日
皇国日ノ本鉄軌道株式会社
日ノ本鉄軌道株式会社も昼夜の別が失せていた。人夫を募集する時は相場の2倍で募集した。近隣の若い衆が殺到した。1日6時間4交代で24時間体制である。敷設資材を運ぶのに鉄軌そのものを使った。線路が敷設されると資材を積んだ蒸気車が進む。駅設置場所に来ると直ちに駅が作られる。駅が出来ると早速そこから折り返し運転が始まる。荷物も運ぶが人も運ぶ。荷物はきちんと荷送り状が作られるが、人の場合はどこで降りても一律10銭だった。皇国民に鉄軌道の良さをわからせる宣伝でもあった。事実、鉄軌道の通った地域では燎原の火のごとく便利さが喧伝されていく。鉄軌道の工事には延100万人が動員されたという。小倉・博多間も開通した。鉄蒸気車はどうやって運んだ?大阪から蒸気船に乗せて小倉から上陸させた。
残すは芸州のみ。
博多への戦力集中は信州から大阪まで鉄軌道で武器を運び、大阪からは海路で博多まで運んでいる。そのための大型蒸気船が大量に建造されていた。
11月15日
情報庁
「沿海州及び朝鮮のあらゆる港で船を建造している?どんな船かわかるか?人員輸送船?わかった。結論する。皇国本土攻撃をルシアは準備している。」
12月8日
皇国日ノ本鉄軌道株式会社
ついに全線開通した。だが、休んではいられない。ルシアの侵攻がせまっている。鉄軌道網を広げなければならない。
翌年1月8日
ウラジオストック艦隊、シンガポール到着。
ルシアの海上戦力が整うのは目前であった。
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レンドル砲はカロネード砲のことです。イギリス陸軍の高級将校が思いつき、カロン工廠で作られました。なのでカロネード砲。突っ込みが来る前に白状しておきます。
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