大砲と馬と 戦術と戦略の天才が帝国を翻弄する

高見信州翁

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第6章 反撃

4 御前会議

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京都御所鳳凰の間での御前会議

    「以上の方向で反攻作戦を開始したいと思料(しりょう)致します。」

    関白・護国省大臣・豊臣秀安元帥が奏上(そうじょう)する。お上(かみ    天皇のこと)がお尋ねになる。

    「海軍はどうなっている?」

    海軍のトップは海軍部長だ。伊集院大将が答える。

    「現有の蒸気推進艦12隻は全て琉球ラインの商船護衛に従事しております。最近、ルシアも琉球ラインに気づいたようで艦隊が徘徊しております。港湾封鎖を解除したことでかえってルシア艦に余裕が出てしまったようです。琉球ラインに集中して来ている感があります。」

 「大丈夫なのか?」

    「大船団を組み、護衛艦を多数配置した場合のみ無事たどり着くことが出来ています。ですので補給ラインは従来より細っております。」

    少し、御心(みこころ)を安んじ参らせねば。ピシッと背筋を伸ばす。

    「ただ今、海軍は御承認いただきました大建艦計画のただ中にあります。装甲蒸気戦列艦がまもなくルシアのウラジオストック艦隊の数に迫ります。我々の艦は増える一方ですが、ルシア艦は増えておりません。イヤ、増えてはおりますが皇国の方が圧倒的に増える数が多いのです。海軍は半年以内にルシアウラジオストック艦隊に決戦を挑むでしょう。」

    「そうか。頼りにしておるぞ。」

    伊集院大将、態度ほど自信があるわけではない。真田少将が親指を立ててきた。なんだ?どういう意味だ?

    「お上、発言をお許し下さい。越後方面軍真田少将でございます。回りを海に囲まれた日ノ本は海軍なくしてはなりたちませぬ。あえて、陸軍は海軍との現在の予算比7対3を、5対5にする用意がございます。」

    「なっ!」

    伊集院大将、思わず声が出てしまった。

    「ただあ~し、陸軍・海軍で使う共通のものは同じ規格にしていただきたい。陸軍と海軍で別々に同じ目的のものを開発するのは無駄である。昨日、護国省の外庁として皇国規格院ができ申した。陸軍はこの企画院の示した規格に従い申す。海軍も同様に願いたい。」

    こんなことは、ことさら言わなくても規格院が規格を示せば、それに習わなければならない。だが、昨日出来たばかりの規格院の宣伝にはもってこいじゃないか?

    皇国を効率よく動かすには規格は欠かせない。実は予算を海軍に譲る件は、案外簡単だった。護国省は豊臣家が牛耳っているからだ。秀安殿下を説得すれば、それで良かった。

    陸軍と海軍は仲が悪い?イヤイヤ、そんな事実はない。陸軍は海軍を頼りにしている。ただ、海軍はいつか陸軍に吸収されてしまうのでないかと恐れを持っているようなのだ。陸軍の何十万人という陣容に対して海軍は人数的には劣る。出自を問えば、織田家や豊臣家に雇われた海賊から始まっている。

    そのことに陸軍の誰も気がついていないようなのだ。今や平民が主流になっているという事実も拍車をかけているのだろう。安心していいんだよというサインを出してやらねば、本当に陸軍と海軍は険悪になりかねなかった。

   ちょうど蒸気艦の大建艦計画も始まっている。今、皇国の予算の半分は軍事費だ。どうせ大量に軍艦が必要なのだ。予算的にも半分こだね。陸軍と海軍は対等なんだよと示す良い機会だ。

    真田繁信という人物は陸軍軍人という意識は薄い。もっと高い所に意識を置いている。皇国という視点である。

    ふう、これで平出屋の大砲を陸軍向けと海軍向けに分けて作るという面倒からは逃げられるな。ふっふっふ、儲けるなら効率よくないとな。

    こ、こいつはあ・・・やっぱり腹黒い。

    繁信のスタンドプレーに幻惑された伊集院大将。

    「お、おお、さすが鷲巣の英雄。感服つかまつった。」


    「さて、ここからが本題です。反攻の手順ですが日本一広い関東平野を取り返します。・・・」
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