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第6章 反撃
6 小田原攻め
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小田原の包囲が完了した。
一夜城跡砲台がようやく完成した。総数800門。包囲している軍に分散配置で400門。合わせて1200門。史上最大の門数を揃えた。
「石田征夷大将軍、攻撃準備整いました。」
「・・・大将で良い。ではいこうか。攻撃開始。」
ルシア小田原要塞司令官ランキン中将
小田原要塞は周囲9キロを分厚いルシアンコンクリートの壁で囲っている。高さ5メートル、厚さ5メートル。壁の上は兵が詰めている。重要拠点だと、この壁が2重になっている。ルシアンコンクリートの特徴は速乾性だ。すぐに固まり始める。破壊された城壁などには持ってこいなのである。大穴が開けられても、夜にこっそり職人が穴の空いた場所まで降りてルシアンコンクリートを塗り込めば、すぐ乾く。この製法はヨーロッパにおいても門外不出となっている。
小田原要塞は守備兵力3万、砲60門で固めている。
「新潟に早馬は出したか?備蓄食料の残高を報告せよ。武器・弾薬もだ。」
参謀長イーラン少将が答える。
「食料備蓄3ヶ月分、弾薬も30基数あります。新潟から援軍が来るまでは持ちこたえられるでしょう。」
「敵は皇国の主力か?10万は軽く越えてるな。きついぞ。」
「なあに、援軍の来ない籠城ではありません。援軍が来るまで数日の辛抱ですよ。」
実際はその数日が持たなかった。
皇国東方方面軍砲兵隊椿准将
椿大佐は千曲の戦いの戦功により准将に昇進していた。林大佐も同じく准将に昇進。皇国砲兵隊は出来たばかりで人材がいない。逆に昇進も早かった。
小田原の攻囲戦では椿准将が砲兵司令官、林大佐が副司令官となっている。権蔵も少尉として将校に名を連ねるようになった。
今回の戦いも砲兵隊が主となることは決まっている。ましてや攻城戦なのだ。やらずにどうする?砲兵隊の勢いは強かった。
今回も間接射撃である。【治兵衛13】800門を山の上に上げるのは大変だった。千曲と言い、なんだか大砲を山の上に上げる作業ばっかりしている。
だがまあ、勝利に貢献しているのだから文句はない。
「傾聴(けいちょおおおお)!ただ今より椿司令官閣下より訓示がある。」
「ええ~、椿です。今回はですね、真田参謀長閣下より最初に敵の砲を重点的に狙うよう命令をいただいております。史上初の砲対砲の潰し合いですね。皆さん、頑張って下さい。」
次に権蔵が実務注意者として訓示する。
「ええかあ~、今回も千曲に引き続き、全弾榴弾じゃあ~。試射はワシがする。方向・仰角・距離がわかったら効力射じゃあ。ワシらは1200門、相手は100門もな~い!しかもこっちからは相手が丸見えじゃあ。負けるはずがない。きばれやあ~。」
「おおおおおっ!」
一夜城の二の丸の先には物見櫓が建てられている。そこから射撃のための諸元を受ける予定だ。例によって小田原要塞からは見えない位置に砲兵隊はいる。
さっき椿准将と一緒に最初に撃つ弾の諸元を確認している。
「あそこだ。砲兵陣地が見えますか?」
椿准将、権蔵に対しても丁寧な言葉使いが抜けない。
「見えます。諸元が揃ったら一発食らわせてやりますか。」
あと2カ所からの観測値で諸元が決まる。権蔵、三角測量はお手のものになってきている。
「一発目から当ててやりますよ。」
「撃てえ!」
要塞の中心部あたりにあるルシアの砲兵陣地で突如爆発が起こった。
「よし、諸元よし。効力射開始!」
ルシア小田原要塞砲兵隊ルシチェンコ大佐
突如、山の方角から飛来する無数の砲弾。砲弾は見えるが砲は視認出来ない。
「見えなくても構わん。やまの向こうに撃ち返せ!」
見えてる1200門とめくら撃ちの数十門。勝負はハナから決まっていた。ルシア側の砲はまたたく間に壊滅する。
「次はあの食料庫と思われる建物。」
ドドドドーン!
「次はあの弾薬庫と思われる建物。」
ドドドドーン!
皇国軍は砲が潰されたからと言って、すぐには城門に殺到せず、ピンポイントで砲撃を続けて行く。まあ・・・なぶり殺しだ。
砲撃を続けること半日、遂にルシア小田原要塞は降伏した。
以後、ルシアも山から見下ろせる場所に要塞を作るなどとの愚かなことはしなくなった。ただ、これはアーネンの怠慢以外のなにものでもなかった。実はアーネン、小田原要塞を検分していない。
見ていたら
「なんじゃ、こりゃあ!」
と叫んだに違いない。イヤ、こんな下品な言葉使いはしないだろうけれども。
皇国東方方面軍参謀長真田繁信
「畜生、ウラジオストック艦隊に琉球ラインを脅かされている影響が出てきている。ちょっと弾薬を使いすぎた。」
今や皇国の弾薬消費量は便所の土をほじくったくらいでは追っつかない。硝石の大量輸入が是非とも確保されねばならなかった。
海軍の増強を急いで補給ラインを守らねば、皇国の明日はなかった。
一夜城跡砲台がようやく完成した。総数800門。包囲している軍に分散配置で400門。合わせて1200門。史上最大の門数を揃えた。
「石田征夷大将軍、攻撃準備整いました。」
「・・・大将で良い。ではいこうか。攻撃開始。」
ルシア小田原要塞司令官ランキン中将
小田原要塞は周囲9キロを分厚いルシアンコンクリートの壁で囲っている。高さ5メートル、厚さ5メートル。壁の上は兵が詰めている。重要拠点だと、この壁が2重になっている。ルシアンコンクリートの特徴は速乾性だ。すぐに固まり始める。破壊された城壁などには持ってこいなのである。大穴が開けられても、夜にこっそり職人が穴の空いた場所まで降りてルシアンコンクリートを塗り込めば、すぐ乾く。この製法はヨーロッパにおいても門外不出となっている。
小田原要塞は守備兵力3万、砲60門で固めている。
「新潟に早馬は出したか?備蓄食料の残高を報告せよ。武器・弾薬もだ。」
参謀長イーラン少将が答える。
「食料備蓄3ヶ月分、弾薬も30基数あります。新潟から援軍が来るまでは持ちこたえられるでしょう。」
「敵は皇国の主力か?10万は軽く越えてるな。きついぞ。」
「なあに、援軍の来ない籠城ではありません。援軍が来るまで数日の辛抱ですよ。」
実際はその数日が持たなかった。
皇国東方方面軍砲兵隊椿准将
椿大佐は千曲の戦いの戦功により准将に昇進していた。林大佐も同じく准将に昇進。皇国砲兵隊は出来たばかりで人材がいない。逆に昇進も早かった。
小田原の攻囲戦では椿准将が砲兵司令官、林大佐が副司令官となっている。権蔵も少尉として将校に名を連ねるようになった。
今回の戦いも砲兵隊が主となることは決まっている。ましてや攻城戦なのだ。やらずにどうする?砲兵隊の勢いは強かった。
今回も間接射撃である。【治兵衛13】800門を山の上に上げるのは大変だった。千曲と言い、なんだか大砲を山の上に上げる作業ばっかりしている。
だがまあ、勝利に貢献しているのだから文句はない。
「傾聴(けいちょおおおお)!ただ今より椿司令官閣下より訓示がある。」
「ええ~、椿です。今回はですね、真田参謀長閣下より最初に敵の砲を重点的に狙うよう命令をいただいております。史上初の砲対砲の潰し合いですね。皆さん、頑張って下さい。」
次に権蔵が実務注意者として訓示する。
「ええかあ~、今回も千曲に引き続き、全弾榴弾じゃあ~。試射はワシがする。方向・仰角・距離がわかったら効力射じゃあ。ワシらは1200門、相手は100門もな~い!しかもこっちからは相手が丸見えじゃあ。負けるはずがない。きばれやあ~。」
「おおおおおっ!」
一夜城の二の丸の先には物見櫓が建てられている。そこから射撃のための諸元を受ける予定だ。例によって小田原要塞からは見えない位置に砲兵隊はいる。
さっき椿准将と一緒に最初に撃つ弾の諸元を確認している。
「あそこだ。砲兵陣地が見えますか?」
椿准将、権蔵に対しても丁寧な言葉使いが抜けない。
「見えます。諸元が揃ったら一発食らわせてやりますか。」
あと2カ所からの観測値で諸元が決まる。権蔵、三角測量はお手のものになってきている。
「一発目から当ててやりますよ。」
「撃てえ!」
要塞の中心部あたりにあるルシアの砲兵陣地で突如爆発が起こった。
「よし、諸元よし。効力射開始!」
ルシア小田原要塞砲兵隊ルシチェンコ大佐
突如、山の方角から飛来する無数の砲弾。砲弾は見えるが砲は視認出来ない。
「見えなくても構わん。やまの向こうに撃ち返せ!」
見えてる1200門とめくら撃ちの数十門。勝負はハナから決まっていた。ルシア側の砲はまたたく間に壊滅する。
「次はあの食料庫と思われる建物。」
ドドドドーン!
「次はあの弾薬庫と思われる建物。」
ドドドドーン!
皇国軍は砲が潰されたからと言って、すぐには城門に殺到せず、ピンポイントで砲撃を続けて行く。まあ・・・なぶり殺しだ。
砲撃を続けること半日、遂にルシア小田原要塞は降伏した。
以後、ルシアも山から見下ろせる場所に要塞を作るなどとの愚かなことはしなくなった。ただ、これはアーネンの怠慢以外のなにものでもなかった。実はアーネン、小田原要塞を検分していない。
見ていたら
「なんじゃ、こりゃあ!」
と叫んだに違いない。イヤ、こんな下品な言葉使いはしないだろうけれども。
皇国東方方面軍参謀長真田繁信
「畜生、ウラジオストック艦隊に琉球ラインを脅かされている影響が出てきている。ちょっと弾薬を使いすぎた。」
今や皇国の弾薬消費量は便所の土をほじくったくらいでは追っつかない。硝石の大量輸入が是非とも確保されねばならなかった。
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