曇りのち晴れはキャシー日和

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第二章 キャシーは陽気に笑う

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 頭の上に圧力を感じて、僕は目を覚ました。半目になりながら手を伸ばす。なんだこれ。僕の頭を被うようにして、濡れタオルが掛けられていた。助手席に座ったまま眠っていた僕は、それをとってから振り向いた。
「ああ、夜更かし高校生がやっとお目覚めね」姉貴がテーブルの上におにぎりやサンドイッチを並べていた。「そのタオルで顔を拭いたら朝食よ」
 ああ、と僕はうなずいた。状況がやっと飲み込めた。そうだった。昨日からそういう状況にあったんだった。
「花ちゃん、無事だった?」姉貴が僕を横目で見ながら、花ちゃんの耳にささやく。「服装、乱れていない? 約一名、筆下ろしの相手を求めている男がいるからね。気をつけてねえ」
 一気に目が覚めた。同時に、赤面する。「やめろよ姉貴。朝から何をバカなことを」あははと笑いながら朝食の準備をする姉貴を睨んでから、僕はワゴンを下りた。
 濡れタオルで顔を拭きながら伸びをする。昨夜の暗闇はどこかに逃げ去り、木々が侵入を許した夏の日差しが、いくつもの矢となって僕やワゴンに降り注いでいる。
 悲鳴を上げている腰を前後左右に動かす。座ったまま眠るのは、高校生の体であってもかなりきつい。次はなんとかベッドを使えるように対策を立てよう。
「休みの朝の優雅な目覚めは高校生の特権だ」ワゴンの反対側からやってきた修太郎さんが両手をパンパンと叩いて微笑む。「俺もそうだったから、よくわかる。そばで爆音がしても起きやしない。まるで死体のようにな」
「そこまで遅くはないと思うけど」僕は腕時計を見る。まだ七時過ぎだ。早起きといってもいいはず。まあ、一番遅く起きたのは間違いないけれど。プチ家出の張本人としては、ちょっぴり肩身が狭いような気もする。
 花ちゃんが下りてきた。ミニひまわりが仲よく並んだプランターを抱えている。それを地面に置いてから水をやり始めた。水道は庭の隅にあるのをあらかじめチェックしていた。
「さすがだね。ちゃんと忘れずに水をやるんだ」僕は花ちゃんの慣れた手つきに見とれた。
「はい。真夏は朝と夕方の二回、しっかりお水をあげるんです。ミニひまわりはお水が大好きですから」花ちゃんが微笑む。
「へえ。じゃあ、朝と夕方に、そうやって上からかければいいの?」
「はい。あ、でも、やり過ぎには気をつけてください。根腐れを起こしちゃいますから」
「わかった。気をつけるよ」
「それと、日光も大好きですから、できれば太陽の当たる場所に出してあげてください」
「了解。それにしても、ミニひまわり、うれしそうだなあ」僕は花ちゃんから水をもらうミニひまわりが、ちょっぴりうらやましかった。
「公彦君も、地面に寝転がって口を開けていれば、花ちゃんが水をくれるぞ」修太郎さんが歯をむき出しにして笑った。
「で、修太郎さん。何してたんですか? 車の周囲を見ていたようですけど」僕はせき払いをして話題を変えた。
「うん。タイヤの状態をチェックしていたんだ」
「タイヤの状態? なんでまたそんなことを」
「ま、中に入ろう」修太郎さんはアゴでワゴンを示してから乗り込んだ。僕も後に続いた。その後に花ちゃんも。
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