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第二章 キャシーは陽気に笑う
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車のキーがなくなったなんて。そんなバカな。僕は運転席に身を乗り出した。たしかにそこにあったはずのキーが見あたらない。姉貴や修太郎さんが抜き取っていないとすれば──まさか花ちゃん? いや、花ちゃんが取る理由がない。ということは。
「もしかして、昨日、僕たちが寝ている間に誰かがこっそりと抜き取ったってことは」
僕の言葉に姉貴が素っ頓狂な声を上げる。「ええー? そんなバカなこと。いったい誰が取るっていうのよ。っていうかさ。それって、あたしたちがぐっすり寝ているのをいいことに、何者かがこの車にやってきたってこと? 超恐いじゃん、そんなの」
「いや、しかしそれしか考えられないな」修太郎さんが首を振った。「誰かがやってきて何らかの理由で鍵を抜き取った。これしか考えられない。ううむ、やるじゃないか、犯人のやつ」
「感心している場合じゃないでしょ」姉貴がバッグの中を探る。「みんな、他に取られたものはないよね? だったらなんのためにキーだけを。いったい誰よ、宇宙人みたいな不可解なことをしたのは」
「宇宙人みたいな不可解なことをしたのは、わしだ」
ワゴンの外で声がした。みんなは一瞬固まったけれど、すぐさま窓から外を見た。変な宇宙人が、いやもとい、別に変じゃない老人が僕たちを見ていた。
「勝手にこういうことされると困るな」老人は僕たちを睨みつけた。「これが犯罪だということを、まさか知らぬわけでもあるまい」
老人が、杖で僕たち一人一人を突き刺すように指し示した。「いい年こいて、ふざけたことをするんじゃない」
「いや、あの、すみません」僕は真っ先に謝った。元はと言えば、このイベントは僕の発案なのだ。
「おい、爺さん。それは」修太郎さんがワゴンの窓を開けて身を乗り出す。「その杖は飾りかい? それがなくても十分に歩けるように見えるけど」
「え?」老人が自分の杖を見た。あわてて地面に突き刺し、それに体重を預ける。「今日は、たまたま体調が良かっただけだ。普段はこうはいかん。わしの体はボロボロだ。ボロボロのガクガクだ」
「あのお。お爺さん、もしかして、ここの家の人ですか?」姉貴がおそるおそる尋ねた。「ええと、紅林さんだっけ」
「いかにも紅林だ。紅林庄三、八十二歳。お主たちが無断使用しておるバスの所有者でもある。そして」老人が杖で横の茂みの中を示した。「あれが、わしの妻だ」
僕は杖の向いた方向に目を向けた。木々の中に隠れるようにして、お婆ちゃんが立っていた。なぜか湯飲みを持っている。それを口に運んだお婆ちゃんは、うまそうに飲んだ。
「昌枝だ。年齢は」紅林庄三さんがそう言ったとき、昌枝さんが鋭い目つきで庄三さんを睨んだ。顔が引きつる庄三さん。「それは言えないな。トップシークレットだ」
「はいはいはいはい」修太郎さんが何度もうなずいた。「わかったよ、爺さん。いや、紅林さん。たしかに、俺たちはイケナイことをしてたな。で、どうすればいい? 警察に連絡する? それとも、なにがしかの金額を請求するつもりかい?」
「ふん」紅林さんが懐から何かを取り出した。それを掲げる。この車のキーだ。「さっきも言った通り、この鍵を抜き取ったのは、わしだ。それは、鍵がないと車を動かすことができないことを、わしは知っているからだ」
「わしは知っているって……そんなの、小学生だって知っていると思うけど」姉貴が眉を上げた。
「話の腰を折るんじゃない!」庄三さんが杖をドンと地面に突いた。「細かいところにこだわると、ろくな嫁にならんぞ」
姉貴が険しい顔で何か言おうとするのを修太郎さんが止める。
「もしかして、昨日、僕たちが寝ている間に誰かがこっそりと抜き取ったってことは」
僕の言葉に姉貴が素っ頓狂な声を上げる。「ええー? そんなバカなこと。いったい誰が取るっていうのよ。っていうかさ。それって、あたしたちがぐっすり寝ているのをいいことに、何者かがこの車にやってきたってこと? 超恐いじゃん、そんなの」
「いや、しかしそれしか考えられないな」修太郎さんが首を振った。「誰かがやってきて何らかの理由で鍵を抜き取った。これしか考えられない。ううむ、やるじゃないか、犯人のやつ」
「感心している場合じゃないでしょ」姉貴がバッグの中を探る。「みんな、他に取られたものはないよね? だったらなんのためにキーだけを。いったい誰よ、宇宙人みたいな不可解なことをしたのは」
「宇宙人みたいな不可解なことをしたのは、わしだ」
ワゴンの外で声がした。みんなは一瞬固まったけれど、すぐさま窓から外を見た。変な宇宙人が、いやもとい、別に変じゃない老人が僕たちを見ていた。
「勝手にこういうことされると困るな」老人は僕たちを睨みつけた。「これが犯罪だということを、まさか知らぬわけでもあるまい」
老人が、杖で僕たち一人一人を突き刺すように指し示した。「いい年こいて、ふざけたことをするんじゃない」
「いや、あの、すみません」僕は真っ先に謝った。元はと言えば、このイベントは僕の発案なのだ。
「おい、爺さん。それは」修太郎さんがワゴンの窓を開けて身を乗り出す。「その杖は飾りかい? それがなくても十分に歩けるように見えるけど」
「え?」老人が自分の杖を見た。あわてて地面に突き刺し、それに体重を預ける。「今日は、たまたま体調が良かっただけだ。普段はこうはいかん。わしの体はボロボロだ。ボロボロのガクガクだ」
「あのお。お爺さん、もしかして、ここの家の人ですか?」姉貴がおそるおそる尋ねた。「ええと、紅林さんだっけ」
「いかにも紅林だ。紅林庄三、八十二歳。お主たちが無断使用しておるバスの所有者でもある。そして」老人が杖で横の茂みの中を示した。「あれが、わしの妻だ」
僕は杖の向いた方向に目を向けた。木々の中に隠れるようにして、お婆ちゃんが立っていた。なぜか湯飲みを持っている。それを口に運んだお婆ちゃんは、うまそうに飲んだ。
「昌枝だ。年齢は」紅林庄三さんがそう言ったとき、昌枝さんが鋭い目つきで庄三さんを睨んだ。顔が引きつる庄三さん。「それは言えないな。トップシークレットだ」
「はいはいはいはい」修太郎さんが何度もうなずいた。「わかったよ、爺さん。いや、紅林さん。たしかに、俺たちはイケナイことをしてたな。で、どうすればいい? 警察に連絡する? それとも、なにがしかの金額を請求するつもりかい?」
「ふん」紅林さんが懐から何かを取り出した。それを掲げる。この車のキーだ。「さっきも言った通り、この鍵を抜き取ったのは、わしだ。それは、鍵がないと車を動かすことができないことを、わしは知っているからだ」
「わしは知っているって……そんなの、小学生だって知っていると思うけど」姉貴が眉を上げた。
「話の腰を折るんじゃない!」庄三さんが杖をドンと地面に突いた。「細かいところにこだわると、ろくな嫁にならんぞ」
姉貴が険しい顔で何か言おうとするのを修太郎さんが止める。
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