曇りのち晴れはキャシー日和

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第三章 出会いは風のごとく

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 ブスッと頬を膨らませたままの姉貴を乗せたキャシー号は商店街にサヨナラを告げ、また角を曲がった。
 とたん、修太郎さんがブレーキを踏んだ。急ブレーキは、キャシー号と乗客の両方に悲鳴を上げさせた。
 僕はシートに座り直しながら窓の外を見た。どこかのお婆ちゃんがポカンとした顔で、僕たちを見上げていた。
「危ないぞ、婆ちゃん」修太郎さんが苦笑する。「フラダンスの練習じゃないんだからな、しっかり歩いてくれよ。この次は命の保証はできないぜ」
 ムーミンのマンガに出てくるミーのようなお婆ちゃんは、しばらく修太郎さんの顔を見ていたけれど、思い出したように口を開いた。「あんたら、どこへ行くんだね?」
「あ? どこへって、これから港へ行くんだよ。だから、婆ちゃん、ちょっとそこをどいてくれ」
「ああ、港ならちょうどよかった。途中でちょっと己斐本町へ寄ってもらえんかね」
 ちょうどよかったって。僕はシートからずり落ちそうになる。港と己斐本町じゃ、ぜんぜん方向が違うじゃないか。
「己斐本町? 西区だよな。そこへ何の用があるんだ?」修太郎さんが窓から身を乗り出した。
「己斐本町に、スズメ運送という会社があるんだよ。そこへ行って、これを渡してもらえんかね」お婆ちゃんはバッグから薄い包みを取り出した。「息子が働いているんだ。守はな、それはもう気立ての優しい子なんだ」ハンカチを取り出して目に当てた。
「なんで泣く!」修太郎さんが声を荒げた。「演技か? 役者希望なら、いい劇団を紹介するぞ。強盗の被害者役なら、即採用してくれるはずだ」
 あの、お婆ちゃん、と僕がわきから声を出した。「申し訳ないけど、ぜんぜん方向が違うんですよ。だから、ちょっと」
「いいじゃないかね」庄三さんが話に割り込む。「修太郎君、時間はあるんだろ?」
「それはもう、たっぷりと。昨日封切りの映画を観に行っても、まだ余裕だな」
「では、届けて差し上げよう。なあに、出会いは偶然じゃない。必然的なものだよ。大切にしなければいかん」
 お婆ちゃんの差し出す包みを、僕が受け取った。繰り返しお礼を言うお婆ちゃんを残して、キャシー号は再スタートした。
「婆さん、道路でフラダンスはやめとけよ」修太郎さんが窓からお婆ちゃんに声をかける。
 お婆ちゃんは片手を上げて、スタスタとしっかりとした足取りで道路から消えた。
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