伸ばしたこの手を掴むのは〜愛されない俺は番の道具〜

にゃーつ

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柊の家が関与していない病院である松本総合病院に楓君を運んだ。

ここは俺自身も抑制剤をもらいに来ている病院で、楓君のことを松本先生に相談しており連れ出すことを話すとここに入院させることを提案してくれたのだ。

今から治療を始め、番の解除と投薬もあるため少しの間は意識が戻らないそうだ。だから俺はその間にしなければいけないことをする。

病室で眠っている楓君の顔を見てから病院を後にし、ある場所へと幹也先輩と共に向かう。

「楓君、抵抗したんだって?」

「あぁ、兄さんのこと恨んでいるとばかり思っていたんで驚きました。ここにいるって言って体も動かないのに必死に抵抗していました。」

「本能的なものだろうな。それに、11年もあんなところにいて人と会わないような生活してたんだぞ?依存するに決まってるし、番関係ってのはそこがちょっとややこしいよな。それに、あんな生活してて心が死なねえはずがねえよ。番解除も吉と出るか凶と出るか。」

「番解除すれば良くなるんじゃ、、、?」

「体はな?そりゃ良くなるだろうよ。番欠乏の心配がなくなるからな。といっても、もうかなり進行してただろうからすぐにってわけではないだろうけどな。俺が心配なのは番解除したことによってパニックになっちまうことだな。見たことあんだよ。レイプで番にされた娘を思って親が勝手に番解除させてな、、、娘は番に捨てられたって病んで自殺しちまった。」

そんなことが、、、。無理やりされたのにそんな風に追い詰めるまで相手を思ってしまうのか?いや、思うというよりは本能ということか。

「そこは周囲が支えるしかないですよね、、。」

「まぁ、松本先生いるしな。あの人楓君と友達だし。」

・・・は?

「え、、なんですかそれ、、俺聞いてないんですけど、、。」

「あれ?言ってなかったっけ?松本先生はひまわり園の出身だぞ?楓君の一番仲良かった友達だ。6歳の時に当時抜きん出ていた頭の良さで松本会長に見初められて養子になったんだよ。松本会長が厳しい人でひまわり園とは連絡取れなかったらしいな。松本先生驚いてたな、今回助ける人が楓君だって知って。・・・もうとっくに施設を出ている年齢だからどこかで幸せに暮らしてるんだと思ってたって泣いてたよ。成人した時にひまわり園に行ったらしいんだ。その時に園長から結婚したって聞かされてたらしい。」

仲の良かった友人が、幸せに暮らしてると思っていた友人が命が消えかけるほどの目にあっているなんて信じられない、、いや、信じたくないよな。

「俺の兄さんは、楓君だけじゃなくたくさんの人の心を傷つけたんですね。」

「そうだ、それに俺たちは今から自分たちの目の前で人が傷つくのを見なくちゃいけねえ。覚悟しろよ、理玖。」

「はい。」

タクシーが目的地に止まり扉が開いた。

児童養護施設ひまわり園

楓君が育った場所。俺たちはこれからひまわり園の園長に楓君のことを伝えなければならない。今日の夕方には全局のトップニュースとして今回のことが流れる。園長にはその前に話さなければいけないから。

---ピンポーン

「本日お約束させていただいていました吉良です。」

そう言うと門へと50代くらいの女性が近づいてきた。幹也先輩に写真を見せてもらっていたからすぐにわかった。この人が園長の水城百合さん。

「こんにちは。こちらへどうぞ?今、子供たちはほとんどが学校に行っていていないのよ。小さい子たちはお昼寝中なの。」

通されたのは園長室。子供達からもらったであろう絵や折り紙が壁にたくさん貼ってあって、この人がどれだけ子供達から親しまれているのかがわかる。

「電話ではご挨拶させてもらいましたが改めまして、私吉良幹也といいます。」

「私は、柊理玖といいます。」

「柊?」

「はい、柊です。ご想像した柊の家で間違いありません。」

「あら!!じゃあそちらの柊結弦さんに嫁いだ水城楓のことはご存知?あの子元気なのかしら?」

楓君のことを聞けると分かったからか嬉しそうにニコニコと俺に問いかけるこの人に一気に罪悪感が押し寄せる。

だが、話さなければいけない。

「本日こちらを伺ったのは、楓君のことでお伝えしなければいけないことがあってなんです。」

「楓の?か、楓の身に何かあったんですか?」

「楓君は今、松本総合病院に入院しており治療を受けています。」

「あの子、何か病気なの?大丈夫なの?」

「そのことを話すために、先に確認させていただきたいことがあります。柊結弦は、楓君を妻にとこちらに話を通しましたよね?」

「ぇ、ええ。すごく立派な家の方だから施設の子をなんて私は経験なくてかなり驚いたわ。」

「・・・実は、柊結弦にはその時点ですでに妻がいました。」

スッと園長の目から光が消えたような感覚がした。それと同時に俺の背中にも嫌な汗が垂れるような感じがして俺がこれまで経験したことのない恐怖と緊張が走った。

「どういうことですか?」

「彼の妻は子供が産めない体でした。その妻の代わりに子供を産んでくれるΩを求めて身寄りのない楓君を妻にと言って騙して屋敷に連れ込んだんです。」

俺は楓君の身に起きたことを全て園長へ伝えた。番にされてしまったことも、3人の子供を生まされたことも、満足な食事も与えられず放置されていたことも、番欠乏で死にかけていたことも、なにもかもを包み隠さずに。

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