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報告

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目の前の光景に何も言えず固まってしまった。

れおんがお義父さんに殴られたんだ。

なんで?なんでこんなことに?

今日は妊娠の報告に来たんだ。喜んでもらえると思った。いや、喜んではもらえた。

「本当!?!?おめでたいわ!!周くん、本当におめでとう!!初孫よ!」

「おめでとう。僕たちがサポートできることがあったら何でもいうんだよ?」

「はい!ありがとうございます!!」

そう言って喜んでくれたのに。

「れおん、約束は覚えているかい?」

お義父さんがそう言うとれおんはお義父さんの前に立ち、

「すいませんでした。」

そう告げた。れおんが顔を上げた途端お義父さんがれおんを殴ったんだ。全力ではないと思う、少しよろけただけだから。

でも、なんで?という気持ちでいっぱいになる。

「父さんと約束してたんだ。周が高校を卒業するまでは妊娠しないように避妊するって。ずっと栄養失調気味で体が完全ではない期間が長かったし、ヒートも人より遅れてきた。そんな周の体の負担を考えて、高校卒業まで、というか周が欲しいと言うまでは徹底する約束だった。」

僕の知らないところで僕のことを思ってそんな約束をしてくれていたんだ。

「でも、避妊はしてたし妊娠はれおん1人じゃできないし、2人ともに責任があって、、、」

「うん、それは分かっているよ。僕はね、周君の父親としてれおんを殴ったんだよ。」

父親と、、して?

「僕は君の父親だ。自分の息子が高校卒業前に妊娠したんだ。妊娠はね、どうしたって体に負担がかかるんだ。それをまだ子供の周君が背負わなければならない。だから今僕は周君の父親として、妊娠させたれおんを殴ったんだ。」

嬉しかった。れおんの父親としてでなく僕の父親としてれおんを殴ったんだとそう言ってくれたお義父さんのその行動が嬉しくて、あぁ、僕は本当にこの人たちに出会えて良かったと心から思えた。

身重の体なのにびっくりさせてごめんね?と言ってくれるお義父さんも、今日はお赤飯にしようね、夜ご飯食べていってねと言ってくれるお義母さんも、体として殴ったにしては痛かったと拗ねてしまったれおんも、本当に素敵な家族に出会えた。

おーい、赤ちゃん!お前は最高な家族のもとに生まれてくるんだからなー!

と心の中でお腹の子に話しかけた。

「あ!周君!悪阻がひどいとき、私はポテト食べると落ち着いたの!」

「ポテトですか?」

あんな脂っこいもの、気持ち悪い時に食べれるわけなくないかな?

そう思った僕だが、2週間後の今食べられるものがポテトだけになっている。
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