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【第一部】 3章
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しおりを挟むここが、鈴木組。
「待たせたな。」
「本日から、よろしくお願いいたします!!」
「あぁ、蓮さんから話は聞いてる。
俺は鈴木組の若頭 鈴木勇作だ。年は39だ!ここはおっさんばっかだが、よろしくな!」
勇作さんはとても気さくな方だった。
「人が多いの苦手ってのも聞いてる。部屋は部下たちが住んでるアパートの一室になるがかまわねえか?」
「はい!ありがたく、住まわせていただきます。」
その日の夜は歓迎会を開いてくれた。
若のとこより人が多くて少しびっくりしたけど、みんな俺より年上で、俺のことを子どものように可愛がってくれた。
アパートに案内してもらって、部屋に入る。
荷物はもう運び込まれていて、あとは整理するだけだ。
明日は1日引っ越し作業があるだろうと休みをもらっている。
1つの段ボールが目につく。
これだけは捨てるなんてできなくて、持ってきてしまった。
空からもらったプレゼント。
その段ボールをクローゼットの1番奥にしまう。
捨てはしないけど、2度と開けることもないだろう。
そう思ったのは最初だけだった。
勇作さん達は本当にいい人たちだ。
だけど、空はここにはいない。
もう6年もの間、空がいて安定してた俺の精神は空がいないことで、崩れ始めていた。
パニックになったり、過呼吸になったりは大丈夫だ。
でも、また、自分を傷つけてしまう。
空にもらったプレゼントを抱きしめると少しだけ落ち着くから、以前よりは頻繁にするわけではないが、それでも、少し傷つけてしまう。
空から離れるって決めたんだ。
大丈夫だ。
「っっっ、、ぅぅ、、、そらぁ、、」
空を想って泣かない日がないくらい、離れてたってこんなにも空を想ってしまう。
離れて余計にわかる。
あぁ、こんなにも俺、空が好きだったんだ。
ちーって呼んでくれる人はこの世に1人だけ。
「ちー」
自分で呼んでみてもなんの意味もないや。
きっと慣れる。大丈夫だ。
鈴木組の人たちに俺に好きな人がいることはすぐにバレた。
俺ってそんなにわかりやすいのかな。
「どんなやつなんだ??おめえさんの好きな人は」
「俺の好きな人は、優しくて、あったかくて、俺が1番安心できる人」
少し酒も入って俺は空のすきなとこをしゃべってしまう。
「でも、忘れなきゃダメだから。忘れたいのに、忘れられない。」
「そりゃおめえ新しい恋するしかねえよ!!」
「新しい恋?」
「おうそうだ!!いい女紹介してやろうか?」
「ううん、今はまだいい。」
おじさんの手でガシガシと頭を撫でられる。
「若いうちにいっぱい恋しとけよ!!いい経験になる!!!恋愛して失恋して人は大きくなるもんだ!!失恋を思い出にできたら1人前だ!!」
そっか。じゃあ、空のこともいつか思い出になるのかな。
空、今頃どうしてるかな。
勝手にいなくなったの怒ったかな。
空が高校卒業して戻ったとき、俺のこと覚えててくれるかな。
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