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【第一部】 3章
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しおりを挟む今日は日曜日。
もう9時だ。
いつもなら空は泊まっていかないんだけど、
俺は明日この土地を離れる。だからどうしても最後に一緒にいたくて、
「空、今日泊まってって言ったら怒る?」
って言ってしまった。
「泊まる!!!まってて!父さんに電話する!」
そう言ってすぐに若に電話してくれた空。
「いいって!!!」
ニコニコしながら俺の横に来る空。
「でもどうしたの?急に泊まってだなんて。」
そうだ。不自然すぎる。
「ちょっと、昔のこと思い出しちゃって、ギュってして。」
「うん。大丈夫だよ。ちーには僕がいるから。僕がずっと守るから。」
「うん。ありがとう。空。」
1つの布団で空と寝るのも最後。
「空は将来何になるの?」
「んー、なんだろ。組を継ぐのは嵐だと思うし、まだわかんないや。ちーは?なりたかったものとかないの?」
「俺はね、大学に行けなかったから叶わなかったんだけど、弁護士の資格とりたかったんだ。」
「弁護士?」
そう。弁護士の資格がとりたかった。
「うん。組の仕事してて、弁護士の資格持ってると便利だなって思ったんだ。組専属の弁護士なら外にもあんまり出ないでいいしさ。わざわざ弁護士雇って頼んだら仕事もあるけど、外部の人に頼めないこともあるから、取れたらよかったなって思うよ。」
「じゃあ僕が代わりにとろうかな。」
空が??
「なんで!空は空のしたいことしなよ!!」
「僕がしたいことはちーのしたいことなの!!」
まあまだ小学生だしやりたいこと見つかるだろうな。
空はどんな大人になるのかな。
「ねえ空、俺ね、空のこと大好きだよ。空がいなきゃなんにもできないくらいに。」
「っっ!!僕も、ちーのこと大好きだよ。」
この言葉があれば十分だ。
「さっ!寝よ。明日俺も仕事だし、空も学校だろ!!」
「うん。おやすみ。」
その日、俺は眠れなかった。
空の顔をずっと見ていたくて、眠れなかった。
次の日の朝、空を送り出してから蒼真さんに手伝ってもらって、荷物を全部運び出した。まるで俺がここにすんでたことが嘘かのように全て。
「達者でな。千秋。連絡は必ず定期的にしろよ。」
「はい。長いことお世話になりました。」
「千秋、私は視察で行くことあるのですぐ会えます。」
「わかんねえことあったらすぐ聞いてくるんだぞ?」
「ちゃんと飯食えよ。千秋。」
「はい。ありがとうございます!あ、若、これ、空に渡すか迷って、まだ決めきれてないんです。中身読んでいいので、若が判断してくれませんか?」
「わかった。
千秋、本当にいいんだな?」
迷いはない。俺はここから、空から、離れる。
「はい!また8年後に戻ってきます!
いってきます!!」
バイバイ、空。
バイバイ、俺の大好きな人。
バイバイ、俺の初恋。
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