罪人の僕にはあなたの愛を受ける資格なんてありません。

にゃーつ

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17 父side

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処置室の前で泣き崩れているかおりと1人で立ち尽くしている奏多。

遊星の幼い命が失われた。奏多を人殺しだと怒鳴りつけるかおりを落ち着かせるが、奏多になんと声をかけていいのか分からなかった。奏多は亡くなった前妻の美織に外見はもちろん、優しくて面倒見の良いところがそっくりだった。遊星を可愛がってくれていた。話を聞くと2人で留守番をさせた際に、奏多用に用意していたそばを奏多が遊星にあげてしまったそうだ。

奏多を責めるのは間違っている。子供だけで留守番をさせてしまったのだから、私たち親の責任だ。だが、今のかおりはそんなことを考えられるほど冷静じゃない。仕事で家を空けてしまう私は奏多がかおりと2人になることを防ぐためにかなたを寮に入れた。

遊星が死んだ日、声をかけることができなかったという後悔から奏多と会話することが少なくなってしまった。

学校行事にはこっそり行った。どうにか時間を作ってもらい、少しでも奏多の成長を見守ろうと思った。

奏多は寮が閉まる時以外は家に帰ってくることはなかった。帰ってきても以前のように笑うことはない。
あんなに大好きだったバイオリンも辞めてしまった。

奏多を守りたい、大事にしたい。なのにうまくいかない。奏多の病気が見つかった時は目の前が真っ暗になった。私も医者だ、奏多の症状を聞けば移植をしなければ長くは生きられないことは分かっていた。

なのに、何もできなかった。夜な夜な奏多の病室に行くことしかできなかった。

知っていたのに。

本当は学校に行きたかったことも、本当はバイオリンを弾きたいことも。

私が父親であることが申し訳なくなった。

泣き疲れて寝ているこの子の寝顔を見ると、もっと早く奏多とちゃんと話していればよかったと思った。

「奏多君は、理事長のことが大好きなんですね。」

「そんなことないさ、こんな不甲斐ない父親、、、」

「以前、なんでこの病院を選んだのか聞かれました。その際に、この病院に来て大正解だと、お父さんの病院だからと行っていました。お父さんはすごいと言っていました。奏多君、本当はずっとあなたに会いたかったんだと思います。7歳から寮生活で、そのくらいの年齢なんて甘えたい盛りでしょうし、学校行事にも周りは両親が来ているのに自分は1人っていうのは辛かったんだと思います。知ってますか?運動会ってお昼の時間は親とお弁当を食べるんです。親の来ていない子は1人教室で食べるんですよ。私、両親が仕事で一度だけ来れないことがあった際に1人で食べたことがありました。あの悲しさって言葉じゃ表せないんですよね。」

知らなかった、、、そうなのか。
学校行事は少し見に行くくらいで長時間いることはできなくて、奏多に、ちゃんと声かけて、見に来たぞって言ってやればよかった。

後悔が止まらない。自分の愛する息子が生きたくないと思ってしまうほど思い詰めていたのに。

「これからでも、取り返せるだろうか。奏多との時間」

「取り返せます。奏多君は移植手術を受けて、また一歩人生を踏み出すんです。その一歩を踏み出すときに、そばにいてあげて下さい。」

奏多の手を握るとギュッと握り返してくれた。これから、奏多の幸せのために時間を使おう。そう心に決めた。
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