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24話 人間対決
しおりを挟む舞踏祭本戦。
準決勝を決める第一試合で悪魔軍幹部3人が人間3人にそれぞれ撃破され今まで以上に盛り上がりを見せていた。
3人の幹部は決して弱いわけではない。数ある戦いでその名を残し、民に崇められ敵に恐れられるような存在なのだ。
そんな敵に回せば脅威となる存在相手に3人の人間は見事勝ち残って見せたのだ。(1人は完全なる八百長ではあったが…)人間が本戦に勝ち残ること自体、珍しいにも関わらず一度に3人も残り、そして、幹部さえも撃退してしまうとなると見ている観客は今後の展開を期待して強者たちの戦いを見る。代理戦争に関わる高位属に属するもの達は少しでさえも相手の能力を把握しようと監視するような目を向ける。
そして、そんな様々な視線を向けられる向こうに大庭怜は立っていた。
「さぁ始まりました!舞踏祭本戦準決勝第一試合!!戦いの鬼とまで言われたアルクと戦いの翁ロドルフを撃破したスーパールーキー大庭怜!対する相手はこちらも大新星!戦場の英雄に真祖の悪魔と化け物クラスを相手に勝ち残った今大会、1番の注目者!衛藤守!!」
司会の放送により観客からはものすごい歓声が上がる。それは、今までに一度もなかっであろう出来事だ。非力だと思われていた人間同士の対決にここまでの注目が集まるのは誰も予想だにしてなかった。だからこそ、誰もが注目し、誰もが期待していたのだ。更なる熱き戦いを求めて。
そんな期待を一身に受け守と対峙する怜は困惑していた。
(まさか、舞踏祭で同じ人間とあたるとはな…)
人間だからこそ今、自分がまだこの場に立っていることが不思議で仕方がなかったのだ。少し前までは普通の高校生であった怜がリリスとの出会いでこんな別次元のような体験をして、人間であることを忘れさえしていたのだ。
悪魔や精霊の大体は人間に似ている。角や尻尾はあるにしても人間と対して変わらない相手と異次元バトルを繰り返していれば、自分も同じ異界人なのではないかと怜は錯覚していたのだ。
しかし、今、守と対峙し、人間であることを自覚する。ここ悪魔界に来てから牧野以外の人間と会わずにいた為、こうして人間と正面で顔を合わせることで自分が人間であることを思い出される。
「初めまして怜さん。よろしくお願いしますね」
話しかけて来たのは守の方だった。優しそうな笑顔で手をさしだす。怜はその手を強く握り返しニッと笑う。
「こちらこそよろしく、守。」
人として礼儀を通した試合前の挨拶。これから戦う相手に敬意を込め、明確な戦意を握る力で相手に伝える。
「人間同士、手加減は無用だよな」
「もちろん、僕もそのつもりですよ」
そう言って2人は距離を取る。
それを戦闘準備完了と捉えた審判は試合開始を告げるコングを鳴らす。
カンッ!!!
ゴングが鳴った瞬間に守へ肉薄する怜。そのままの勢いで守の腹部めがけて拳を放つ。それを守は腕をクロスし防御姿勢をとり、ガードする。
立て続けに怜は殴打を繰り返し、それを的確に捌いていく守。戦い慣れしてない人から見れば、怜が押しまくってるように見える一方的な試合だが、1つ1つが的確で鋭い一撃を正確にいなし、かわし、受け止める守の方が技術的には上であることを示すような状況であった。
しかし、それは怜が守に戦闘技術で劣っていると言っているわけではない。時折、守は不規則な反撃をしているが、怜はその守の動きを利用し更に反撃を繰り出していた。
お互いがお互いの動きを予想し計算し、対処する。そんな高度の攻防を繰り広げていたのだ。
この戦いに歴戦の戦士達も息を呑み見守るほどであった。それらの1つ1つには高揚、観察、嫉妬、唖然…様々な意味を持った視線がこの2人に注がれていたのだ。
「ちっ…!守りがかてぇ…!」
怜の回し蹴りをいなし、カウンターをしてきた守の一撃を腕で弾き、そのままバックステップを踏んで距離を取る怜。守はそれに追撃せず態勢を整える。
「頑丈なことだけが昔からの取り柄だからね。」
そう言い軽く笑う守。それにつられ怜も笑う。
「俺だって体を動かすのが昔から得意で色んな体術を独学してきたが、ここまで逃げ続けられるのは初めてだ。」
そう言い構えを取る怜。
「だから、ここからは本気でいくことにするからな…!」
その瞬間、怜が異常な早さで守に迫っていた。
「なっ…!!」
反応が遅れた守に容赦なく一撃を喰らわす怜。その一撃によって吹き飛ばされる守。
しかし、怜の攻撃はそれだけではなかった。追撃をし、守に防御すらとらせずに殴打を続けていき、最後に二段蹴りを腹部にクリーンヒットさせ五メートル以上先まで吹き飛ばす。
この舞踏祭で恩恵を使う感覚を完全に覚えた怜は、リリスやサキュから流れる契約による魔力を意図的に操れるようになり、それで身体強化をしていたのだ。
この攻撃は流石の守にも効いていたようだ。四つん這いになりながら咳き込み、少し血を吐く。その血を手で拭いながらよろよろと立つ。
「…今のは少し油断したよ。悔しいけど見えなかった…。」
そう言って肩をすくめる守。あれだけの攻撃を喰らいながらもまだ戯けて見せる守に軽く驚愕する怜。
しかし、守は戯けるのを急にやめ、構い直す。
「体術なら勝てると思ってたけど、そうもいかないみたいだし、僕も全力で相手にする…!」
叫ぶのと同時に白いオーラが守を包む。そしてそのオーラは粒子となり守が翳した右手に集まり円形を形成していく。
そして出来た光の盾を構え、今度は守が怜に向かって前進してきた。
それを守が前にしたように腕をクロスし防御姿勢を取ろうとした怜。だが。
「…!?」
しかし、すぐさま態勢を崩し横に転がり盾の前進を避ける。
怜が避けた瞬間、守が盾を正面に突き出すと衝撃波が発生、直撃を免れた怜でさえも吹き飛ばされてしまうほどの威力であった。
怜はすぐに態勢を整える。守も盾を持ちな直す。
「いい判断だね。今ので決めたと思ったんだけど、咄嗟に避けてくるとは思わなかった。」
「いや、今のは割とやばかった。直感で避けてなかったらって思うとゾッとする…。」
守るだけの力だと思ってたけどやっぱ、それだけじゃここまで勝ち残れないってわけか…。
怜は若干焦っていた。体術に関して言えば怜に分があったが、盾を構えられると間合いをうまくつかむことができない。しかし、だからといって恩恵の力で攻め切れるかといったら本人もわからなかった。
でも、攻め続けるしかないか…!!
そう決意し、地面を強く蹴り間合いを詰める怜。しかし、守はそれを阻むように盾を構える。それに臆することなく渾身の力を込めて盾を殴る。
「っぐ…!!」
しかし、盾を弾くどころか態勢をわずかに崩すこともできず、手に鈍い痛みが走る。
硬すぎるだろ…!
一瞬ひるんだ怜を守は見逃さず盾を横振りし怜を吹き飛ばす。
吹き飛ばされた怜は即座に顔を上げたがさっきまでそこにいたはずの守がいなかった。
「…っ!!」
危険を感じた怜は低い姿勢のまま後ろにバックステップをする。そうすると、さっきまで怜がいた場所に盾を下に構えた守が垂直落下してくる。少しでも反応が遅れたら今頃ペッシャンコになっていただろう。
しかし、それを好機とみた怜は即座に間を詰める。そして、恩恵を発動させた。
決まった!!!
そう思った怜。しかし…
「ふぅ…あぶなかった…。」
さっきまで右手で構えていた光の盾を今度は左手に構えていた。
あの一瞬を怜はしっかりとみていた。
怜の攻撃に対して守が地面に向けてある盾を捨てて左手をかざした瞬間に一瞬で盾が構築され怜の息子をはじき返していたのだ。
あたかも次の攻撃がどのように来るのか理解してたかのような流れるような作業だった。
「防御するだけはうまいようだな…」
「そっちこそカウンターでしか攻撃の隙をつくことができないぐらいに余裕がないのかな?」
お互いがお互い、悪態をつく。しかし、同時に2人は理解していた。
このままでは攻防を繰り返すだけで拉致があかないと。
「準備運動はこれぐらいにするか」
「かなり全力な準備運動になってたけど、そうだね。次の一撃に決めるとしようか…!!」
2人はニッと悪そうにも楽しそうにも見える笑みを浮かべて同時に距離を取る。
そして、全力で恩恵を発動させるために力を集中させる。
((これで決める!!!!!))
「行くぞ!まもる!!!!」
「来い!れい!!!!」
怜が恩恵を発動させると同時に守も強いオーラを纏った盾を両手で発現させる。双方の全力の力がぶつかり合う直前、急遽、怜の剛速球で伸びていった息子が霞んだかのように消え去った。
「え…!?」
守が疑問に思った瞬間に守のほぼ真下から怜の恩恵により発動された何か(息子)が迫ってきていた。
それを理解する間も無くもろに顎を突き上げられるような形で喰らう守。
力と力のぶつかり合いを予想していた観客達も突然の出来事についていけずにざわざわし始める。
自分の恩恵アッパーを喰らい倒れ続けている守に近づく怜。
「…おどろいた、よ…。まさか、盾の内側の地面から恩恵を発動、させるなんて、ね…」
怜の恩恵を喰らってもなお意識を切らさず話しかける守。怜はそんな守に驚く。
「まさか、顎下で喰らわせたのに失神しないなんてな…」
「あは、ははは…頑丈なのが昔からの取り柄、でね…」
苦しそうしながらも前に言ったことと同じことを言って笑い飛ばす守。
「でも、最後のを見抜けなかった時点で、僕の負け、だよ…レスリー降参する、よ…」
守は審判に降参の合図を送り試合終了のゴングが鳴る。アナウンサーが怜の勝利を宣言し、それに続くように歓声が上がる会場。しかし、それを無視して怜は守に肩を貸す。
「昨日の敵は今日の友ってな。」
「あははは、君はお人好しみたいだね。それじゃあ、遠慮なく…」
さっきまで戦い合っていた敵同士は肩を組み闘技場から退場していった。
控え室でネメシスとリリスによる罵り合いが待っているとは知らず…。
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