ロリコンの珍事情

tattsu君

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29話 葛藤

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 体がものすごく怠い。さらに、何か記憶が飛んでいる気すらする。俺はあの時、リリスの父エアルに完全に負けた。エアルが言った通りに俺の意識は3発で途絶えた。
 いや、本当に死んでしまったのかもしれない。最後の1発を喰らった瞬間、まるでテレビの電源を急に落としたかのように視界も意識も、痛覚が来る前に途絶えたのだ。

 最後の1発を食らう瞬間、悲しそうにしたリリスの顔とあの時の幼い桜の顔が浮かんだ。

負けるわけにはいかない。

 死を覚悟するのと同時に俺はそんなことを思い最後の一撃を喰らったのだ。
 そこから先の記憶はない。俺が今、どんな状態なのか目を開けて確かめるほどの体力も気力も残ってなかった。まるで自分の体でありながら自分じゃない誰かの体でもあるかのように。
 そして、その感覚は少しずつ、それでいて確実に俺の体を精神を蝕んで行くように感じた。まるで俺の中に潜む別の誰かがいる、そんな気がした。
そして、そいつはこう語りかけて来るのだ。

「お前じゃ無理だ。足りない。お前じゃ誰も救えない。」
まだだ諦めなければまだなんとかなるだろ!
「それはお前の理想。自分を殺すだけの無駄でしかない。」
だったら、どうしろっていうんだよ…。諦めて負けろって言うのかよ!!
「それは違う。まだ勝つ方法はある。」
なんだよ…!どうやったらあんな化け物に勝てるって言うんだよ!
「簡単なことだ。俺に任せればいい。」
任せるってなんだよ…。俺の試合をどうやってお前に任せるって言うんだよ。
「俺はお前であり、お前でない。同じ人物であり違う人格。」
どういうことだよ…意味がわかんねぇよ…。
「今のお前が理解する必要はない。ただ、俺にその体を譲れ。」
譲れ?何を言ってるんだ?
「俺にその体を譲れば、お前を勝たせてやる。」
だから、譲れってなんだよ!?この体は俺だけのものだ!譲るも何もないだろ!?
「やはり、今のお前では俺を認識することはできないみたいだな…。もういい、お前は少し寝てろ」

 そいつがそう言った瞬間に闇が俺を包み込み始める。俺の精神を蝕んでいた何かが急激に俺を支配しようと進行し始める。遠のいていく意識。そんな中聞こえて来たのはリリスの泣きわめく声。

「怜っっ!あんった!何してんのよ!早く起きなさい!あんたがそんなんでまけるわけないでしょ!おきなざいよ!ばやぐぅ!おぎなざいよぉぉ!」

その声を聞いた瞬間に怜の中の何かが切れた。いや、消えたのだろうか。

そこから先、怜の思考は完全に停止し、怜の中に潜む何かに支配された。





 魔界にある大きな城の玉座には悪魔王が足を組んで座っており、そのすぐ隣に腕を組んでエアルは佇んでいた。

「リリスの契約者はもう見過ごすことも出来なくなったのではないかエアル?」

悪魔王の突然の発言にエアルは顔を嫌そうに歪ませる。

「彼はまだ扱えてない、いや今回は乗っ取られていたと言った方がいいか。だがまぁ、それでも、あの力を正しく操れるようになれば強くなるだろう。それこそエアル、お前よりも強力な存在にさえなり得るのでは?」
「そんなことはわかっている。奴のあの力は、やはりあの王の力と同じだ。だとすれば、確実に俺より強くなるだろうな」

今まで否定ばかり繰り返していたエアルの突然の肯定。しかし、悪魔王はそう返しが来ることがわかっていたかのように会話を続ける。

「そうだな。あの時、お前の能力が通用するレベルで良かった。」
「奴と同じ力と言っても、制御ができてない以上、ただの宝の持ち腐れみたいなものだ。さらに、あいつは自分の能力の本質を理解してねぇ。素質はあっても俺に追いつくのにはまだまだだな」

そのエアルの発言に対してやれやれと首を振る悪魔王であったが、その口元は薄っすらと笑みを浮かべていた。





悪魔界の中心に位置する城のとある一室。

「…ん、あれ、ここ、は…?」

ベットに横になっていた少年、大庭怜は目を覚ます。その途端、急に横からロリっ娘にだきつかれる。

「よかった怜…やっと目を覚ましたわね…!心配かけるんじゃないわよバカ…」

抱きついて来た悪魔のリリスは薄っすらと涙を浮かべながらそう零す。

「リリス…俺は一体…?」

まだ頭の整理がつかない。最近の記憶がすっぽりと抜き取られたかのように何も思い出すことができない。確かな最後の記憶は守との試合だったが、その先は全く思い出せなかった。

「あんた、まさか何も覚えてないの…?」

そう言って驚きの表情を浮かべるリリス。

「あぁ、守との試合までは覚えてるんだが、その先の記憶が全くない…」

俺は正直に話した。守との試合を終え、そのままリリスの父エアルと対決することになったはずなのだが、どうもその対決に関しては思い出せなかった。

「あの時の怜、変になってた…。本当に覚えてない…?」

俺が変に…?いや、確かに変な感覚に包まれてたような…。
怜が思考にふけっている時、唐突に部屋の扉が開いた。

「目を覚ましたか小僧」

部屋に入って来たのはエアルだった。

「…一度しか言わんから耳の穴かっぽじって聞きやがれ。……娘を頼んだ」

バタン!!
そう言ってエアルは部屋の扉を勢いよく閉めて部屋の中からでもわかるぐらいに大きな足音を立てて何処かに行ってしまった。

「えっと…どゆこと…?」
「…たわ…」
「え?」
「やったわ怜!!」

そう言ってギュッ~って抱きしめてくるリリス。
あぁ、もう死んでも大丈夫かもしれない。

「お父様があんたのこと認めてくれたのよ!!」
「え、本当か!?」
「えぇ!!」

まじで!?頼んだってそーゆーこと!?娘を頼んだって言ったらけっkon…。

「今、邪なこと考えなかった?」
「い、いえナンデモナイデス」

こ、こえぇ…。最近いろいろありすぎて忘れてたけどこの感じこえぇ…。。。

「まぁ、いいわ。お父様が認めてくれたからやっと怜をお母様に紹介できる!早くいきましょ怜!」

そう言って返事を待たずに手を引くリリス。

「ちょっ、待てって!」

そう言いながらも満更でない様子でそのまま手を引かれていく怜だった。
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