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第4話:勇者は街に入れない(1)
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エリスの仲間がグラッセルに泊まっているということで、俺たちは街の門まで来ていた。
街に住む大抵の人間は通行証を持ち、衛兵と問答することもなく出入りできる。
俺が山へ行くときも、衛兵たちは通行証を横目で見ながら欠伸をしていた。
しかし、今は同行者がいる。それも特別な。
「俺の連れなんだ。あとで登録して通行証はもらうから、とりあえず入れてくれ。旅の人間だって受け入れているだろう?」
「そりゃあ、旅人は他の街の通行証、高名な方の紹介状を持ってきていますからね。万が一持ってなくても、警備をつけた上で、通すことはできるのですが……フードを取り顔を見せていただかないことには何とも。亡命者や手配犯の可能性もありますので」
「それが酷い皮膚病でな。できれば見逃してもらいたいのだが」
「規則は規則ですので、曲げることはできません。顔を見せたくないのであれば、他の街も同様に入るのは難しいでしょう。紹介状をお持ちいただくのが一番かと思います」
さっき欠伸をしていたわりには、職務に忠実だな。
一人は俺に応対し、もう一人は門の前に立ち、睨みをきかせている。
目がいつになく真剣だ。
俺はちらりとエリスを見る。
雨天用のコートを着せて、ゾンビであることは隠している。
だが、Sランク勇者ともなると、死んでもまだオーラを放っているようだ。
戦士系の職業なら気が付かないかもしれないと思ったものの、甘かった。
警戒している様子が見て取れる。
エリスが今にもフードを取りそうな勢いだったので、一旦引くことにする。
「わかった。知り合いに頼んでみよう。また来る」
「そんな、私は――!!」
彼女の手を引き、言葉を流し込む。
俺の手によって作られたゾンビであれば、多少は制御できるはずだ。
幸いなことに、留まり続けようとエリスの足は、俺の方向へとゆっくりと向かってきた。
ギリギリという歯ぎしりが聞こえる。
これは後で酷い文句を言われるな。
が、今はこうするしか方法がない。
エリスの力で無理やり押し通ることもできるのかもしれないが、まだゾンビとなった彼女の実力を知らないし、仮に門番を倒せたとしても大騒ぎになるだけだ。
再びルナ山へと入り、木々の間にロープを結む。
布と組み合わせると、簡易テントとなる。
これも雨具と同様に非常用のものだ。
テントを作り終えたあと、やっと俺はその場に立ち尽くすエリスに気がついた。
顔が文字通り赤くなり、湯気が出そうになっている。
「すまん! 忘れてた。今解放する」
「――ぷはっ!! 何をしてくれてやがるんですか! ご主人!! 私は仲間と合流しなくちゃいけないの! さっきも言ったけど、彼らは街にいるのよ!」
「入れないことはエリスにもわかっただろ? ゾンビの姿もそうだが、お前のオーラは尋常じゃない。よほどの事がないと入れないぞ。それこそ、国王の紹介状とか――ん? お前の仲間は街に入れたんだよな。じゃあ、お前用の紹介状もあるんじゃないか?」
Sランク勇者ともなれば、それなりの紹介状があるはずだ。
「私の紹介状は、ロザリオと聖剣だから。特にもらう必要もないのよ」
街に住む大抵の人間は通行証を持ち、衛兵と問答することもなく出入りできる。
俺が山へ行くときも、衛兵たちは通行証を横目で見ながら欠伸をしていた。
しかし、今は同行者がいる。それも特別な。
「俺の連れなんだ。あとで登録して通行証はもらうから、とりあえず入れてくれ。旅の人間だって受け入れているだろう?」
「そりゃあ、旅人は他の街の通行証、高名な方の紹介状を持ってきていますからね。万が一持ってなくても、警備をつけた上で、通すことはできるのですが……フードを取り顔を見せていただかないことには何とも。亡命者や手配犯の可能性もありますので」
「それが酷い皮膚病でな。できれば見逃してもらいたいのだが」
「規則は規則ですので、曲げることはできません。顔を見せたくないのであれば、他の街も同様に入るのは難しいでしょう。紹介状をお持ちいただくのが一番かと思います」
さっき欠伸をしていたわりには、職務に忠実だな。
一人は俺に応対し、もう一人は門の前に立ち、睨みをきかせている。
目がいつになく真剣だ。
俺はちらりとエリスを見る。
雨天用のコートを着せて、ゾンビであることは隠している。
だが、Sランク勇者ともなると、死んでもまだオーラを放っているようだ。
戦士系の職業なら気が付かないかもしれないと思ったものの、甘かった。
警戒している様子が見て取れる。
エリスが今にもフードを取りそうな勢いだったので、一旦引くことにする。
「わかった。知り合いに頼んでみよう。また来る」
「そんな、私は――!!」
彼女の手を引き、言葉を流し込む。
俺の手によって作られたゾンビであれば、多少は制御できるはずだ。
幸いなことに、留まり続けようとエリスの足は、俺の方向へとゆっくりと向かってきた。
ギリギリという歯ぎしりが聞こえる。
これは後で酷い文句を言われるな。
が、今はこうするしか方法がない。
エリスの力で無理やり押し通ることもできるのかもしれないが、まだゾンビとなった彼女の実力を知らないし、仮に門番を倒せたとしても大騒ぎになるだけだ。
再びルナ山へと入り、木々の間にロープを結む。
布と組み合わせると、簡易テントとなる。
これも雨具と同様に非常用のものだ。
テントを作り終えたあと、やっと俺はその場に立ち尽くすエリスに気がついた。
顔が文字通り赤くなり、湯気が出そうになっている。
「すまん! 忘れてた。今解放する」
「――ぷはっ!! 何をしてくれてやがるんですか! ご主人!! 私は仲間と合流しなくちゃいけないの! さっきも言ったけど、彼らは街にいるのよ!」
「入れないことはエリスにもわかっただろ? ゾンビの姿もそうだが、お前のオーラは尋常じゃない。よほどの事がないと入れないぞ。それこそ、国王の紹介状とか――ん? お前の仲間は街に入れたんだよな。じゃあ、お前用の紹介状もあるんじゃないか?」
Sランク勇者ともなれば、それなりの紹介状があるはずだ。
「私の紹介状は、ロザリオと聖剣だから。特にもらう必要もないのよ」
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