月下美人 始まりは何時も不幸から(生け贄編)

あべ鈴峰

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20 メローネとの対面

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本当のバンパイアとの戦いに オリビアは怯えていた。 そんなとき、聞き覚えのある優しい女の人の声が聞こえる。
( お母様 ?)
そんな馬鹿な・・。そう思いながらも 心に芽生えた微かな希望を無視できない。
・・本当に、お母様が来てるの?
そんなこと・・でも・・もしかしたら 私の境遇を 国王から聞いて・・。それで・・実の娘だから、心配になって・・来てくれたんだ。 ほったらかしに してたけど 私が殺されると聞いて 忍びないと思ったんだ。

「お母様・・」
「オリビア。行くな!」
お母様の 声のする方に歩き出す。しかし、ポポに首根っこを噛まれ 連れ戻される。
「違う!本人じゃない。声真似しているだけだ。騙されるな」
声真似・・。 ザイラスに 注意されたことを思い出す。『 大切な人の ものまねをしたりして、誘き出すことだ』
希望は無残に砕ける。
そうだ。お母様が私なんかを助けに来るはずがない。 これは私をサークルから出すための罠だ。

「 オリビア。お願い。顔を見せて」
「 あなたは お母様じゃない!」
自分の未練を断ち切るように叫んで否定する。
 どうして、よりによってお母様なの?
私の一番大切な人はマリアなのに・・。
 私は騙されない。 お母様が 私のことを愛するはずが 無いんだから。
生まれた時から見向きもされなかったのに、急に関心を持ったりしない。

「開けて、オリビア」
「止めて!いくら言っても 信じないわ」
「お願い。このままだと私も バンパイアに、されてしまうわ」
「?」
 捕まったという言葉に、ドキリとする。
その可能性は ある。 私を愛していなくても、自分の命は惜しい。声真似が 上手く出来なくて本人を連れてきたのかもしれない。
 何もしなかっら、見殺しにすることになる 。
(・・・)
そうなったら、もう 二度と会えなくなる。
ポボが 間違っていたら?
オリビアの中に 迷いが生まれる。

「 怒っているのね。・・オリビア。 今まで、ごめんなさい。 私のこと・・恨んでるんでしょ?」
「 お母様・・」
お母様からの謝罪の言葉にオリビアの思考が停止する。 本当に? プライドの高いお母様が言ったの?とても信じられない。
 そうじゃない。バンパイアに 脅されて言ってるだけかもしれない。 それでも、今までのことを全部 許してしまいたいほど嬉しい。
「 信じて!私は あなたを愛してるのよ」
( 愛してる・・)

明日こそは、明日こそは、愛されると。何度も願った。
いつか そう言って抱きしめてくれる日が来ると、 物心つく前からずっと夢見ていた。
他の子供のように、お母様の笑顔が 自分に向けられる日が来ると。
もしそうなら、こんなに幸せな事はない。
「信じるな!」
「 でも、お母様の声でした」
 ポポが違うと否定する。それでも、恋しい思いが募る。

 私のせいで 酷い目に遭ったと、怒るかもしれない。 それでも、生まれて初めて 近くで お母様に会える。 その誘惑に あがらうのは 難しい。
「 オリビア。この窓を開けて。 それが無理なら声だけでも聞かせて。 どうか、無事な姿を見せて」
「お母様・・」
 窓まで行けば本人か どうか分かる。
 オリビアは、ふらふらと立ち上がる。
 ちょっとだけなら、気づかれない。 もし騙されてたなら、すぐにサークルに戻ればいい。
「駄目だ。オリビア!」
 歩き出した私をポポが、タックルしてサークルの中に押し戻す。 それでも諦めきれないオリビアは、ポボに向かって手を合わせて哀願する。

「もしかしたら本人かもしれないんです。お願いです」
「・・・」
「 それが無理なら、ポポが確かめてください。ねっ」
「オリビア。 しっかりしろ!そんなのアイツらの嘘に決まってる」
 嘘だとわかっていても、どうしても、 もしかしたらと言う 気持ちを捨てきれない。 悲しい思いをしてきたのに、懲りずに 奇跡を望んでしまう。

 ザイラスは、こんな私を愚かだと言って叱りつけるだろう。必死に守ってくれているのに 自ら死にに行くようなものだ。
でも 子供に親を捨てろと言うのは無理なことだ。 どんなに酷い親でも親は親だ。
「 ポポ。お願い」
「 オリビア・・」
 ポポが困ったような顔で私を見つめる。
その瞳には おなじみの捨て子を見るような同情が浮かんでいる。
  それでも、オリビアは手を合わせる。
「お願い。ねっ、ちょっとでいいの」
「・・・」
どうか、許して欲しい。

「キャー!」
 「どうしたの お母様。大丈夫 ?」
突然の悲鳴に明かりとりの窓に釘付けになる。
悪い予感がする。 私が「うん」と 言わなかったからバンパイアに 酷い目にあっているのかもしれない。
「返事をして!」
「・・・」
「 お母様!」
「・・・」
「お願い。 何でも 言うことを聞くから・・返事をして」
 いくら聞いても何も答えてくれない。

足元から絶望がミシミシと体を凍らせていく。 
死んでしまったの?私か殺してしまったの?
 「・・ごめんなさい。・・お母様、ごめんなさい」
 最後の最後で、信じきれなかった 自分に激しく後悔して  両手で顔を覆って泣く。
本人だったんだ。
 ああ、どうして私はクズなの。 もっと早く決断していれば。

コツン。
そう思っていると外から物音が聞こえた。 
弾かれたように顔を上げる。
「オリビア。待て!」
オリビアは 引き止めるポボを無視してサークルから出て窓に駆け寄る。
「お母様、今行くわ」
窓に 手をついて外を見ようとするとミシミシ、バリバリと言う音が する。オリビアは本能的に窓から手を離して後ずさる。

何?
 そう考える時間を与えずにバーンと言う 爆発したのかと思うほどの大きな音か、 鳴り響く。
気付けは壁一面が崩れている。
何? C何が起きたの?
爆風が一気に入ってきて オリビアは後ろへ吹き飛ばされながら 壁一面を埋め尽くすバンパイアの顔に 釘付けになる。
(こっ、これは・・)
 びっしりと埋め尽くされているバンパイアたちの姿に嫌悪する。まるで、わき出るウジ虫のようだ。

 こんなに大勢のバンパイア達が待ち受けていたなんて・・。 自分がしでかした事の重大さに気づく。
 無理だ。こんなに いたら逃げ切れない。 初めて死を覚悟して、恐怖にカチカチと歯を鳴らす。
すると、ポポに肩を掴まれてサークルに戻される。

「ポッ、ポボ・・ごめんなさい。私」
「話は、後だ。俺の後ろに隠れろ!」
 言われた通り ポボの後ろに隠れて、バンパイアの 攻撃に備える。しかし、襲われると思っていたが、バンパイア達が 我先に入ろうとして、私たちそっちのけで 喧嘩が始まる。
 その滑稽な姿に バンパイアは動物に近い生き物なんだと思う。 力が強いけれど・・。これなら勝機があるかも。

すると、ひしめき合うバンパイアの背後で火の手が上がる。 ジョルノが 火矢を放ったようだ 。
バンパイア達が悲鳴を上げながら、ぼたぼたと落ちていなくなる。
 助かったと思ったのも、つかの間 それが余計にピンチを呼び込むことになってしまった。

 数が減ったため部屋の出入りが自由になった。
数匹のバンパイアがサークルの中に入ろうとして 魔法陣を超えた。すると術が発動して眩しい光が部屋を埋め尽くす。閃光に目がくらむ。
真昼のような眩しい光を受けたバンパイアが、炎に包まれて、断末魔をあげながら目の前で跡形もなく消えていく。
 これがバンパイアの死なんだ。なんて虚しい死にかただろう。神の罰なのだろう。

 一息ついていると、今度は何かが飛んできて腕にぶつかる。
(今度は なに?)
見るとサークルに壊れたレンガが落ちている。
 バンパイアも馬鹿では無い。間接攻撃に 切り替えてきた。
ポポが 私を庇うように前に出る。
 ザイラスの話では、サークルが守ってくれるはずだ。
何で?壊れたの?
「オリビア。当たらないように俺の後ろに行け」
「 どうして、レンガが入ってきたんですか?」「 武器じゃないからだ」

バンパイア達が壊れたレンガや石をどんどんサークルの中に投げてくる。
 私を かばってポボが全部受け止めている。
 物が、ぶつかるたびに鈍い音を立てている。
ああ、どうしよう。
 言うことを聞いていれば ポボに痛い思いをさけずに済んだのに・・。
人真似すると言われていたのに。
大事な人はマリアだと言ったけれど一番会いたいと願っていたのが、お母様だったという事をバンパイア達に心を見透かされていたんだ。 

自分のせいなのに、隠れていてことにしか出来ない。合わせる顔が無い。
「ポボ・・ごめんなさい。私が・・私のせいで」
「 オリビア。平気だ。気にするな」
「・・・」
 そんなこと言わないで。余計に申し訳ない気持ちになる。いっそ、叱ってくれた方が気が楽だ。 
気が つけば周りは瓦礫で埋め尽くされている。
 このままでは 自分たちのスペースがなくなってしまう。そう思っていると ポボが瓦礫を尻尾を使って バンパイア達目掛けて なぎ払う。がれきが物凄いスピードで バンパイアに 命中する。

 部屋に物を投げ込んでいたバンパイアたちに、瓦礫が当たって遠くへ飛ばされていく。
しかし、バンパイアたちが一掃されても、次のバンパイア達が来る。
 いったい何匹いるの?
「 他に方法は無いんですか?これではキリがありません」
 心配になったオリビアは、ポポに向かって聞く。しかし、ポボに焦っている様子はない。

「 いつも こんなもんだ」
「いつも?」
 アバウトな答えに顔を曇らせる。つまり、こんな戦いが、ずっと続くということだ。
(そんな・・)
 終わりのない戦いにオリビアは、くじけそうになる。しかし、その気持ちをなんとか奮い立たせようとする。明けない夜はない。
どんなに苦しくても、辛くても、終わりは来る。 今までが、そうだったように今回だって終わる。 だから、我慢するんだ。言われたとおりジッとしていればいい。

 それでも気分を切り替えられない。 諦めとともに、長い夜になりそうだと空を見上げる。
 暗い。 日の出までは、まだ時間がある。
「 心配するな。奴らの攻撃は最初だけだ。怖かったら俺にしがみついてろ」
 そつ言う側から壁いっぱいにバンパイアの顔が並ぶ。 オリビアは、ポボの毛の中に顔を埋めて ぎゅっと目を瞑ると、両手で耳を押さえて全てをシャットアウトしようとする。
 焼け石に水かもしれないが、やらないよりはマシだ。
 バンパイアの悲鳴が終わると、物がぶつかる音がする。 ずっと、これ繰り返し。
(お願い。早く朝になって!)

**メローネとの対面**

もの音がしなくなったと思ったら、今度は ポポが突然 威嚇するような唸り声に顔を出す。
「グルルッ」
 何が起こっているのかとポポの毛の中から顔を出して、その視線の先を見る。
壊れた部屋の壁の外に一匹のバンパイアが飛んでいる。 オリビアは、すぐにそれがバンパイアの王だと気づく。 見た目も そうだが、纏う空気が違う。 何も知らない私が見ても、格が違うと分かる。

バンパイアの王が、うなっているポボを面白そうに見ている。
手下のバンパイアたちが 主を恐れているのか遠巻きに囲んでいる。
花嫁と言いながら何人もの王女を殺してきた相手だ。きっと仲間に対しても残忍に違いない。
「あの人が、そうですか?」
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