月下美人 始まりは何時も不幸から(生け贄編)

あべ鈴峰

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19 オリビアの大切な人

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***決戦の夜

どんどん増えるバンパイアの数にオリビアの神経は すり減り。恐怖は、極限にまで達していた。 
それでも何とか それを堪えようと していると、いきなり誰かに肩を叩かれた。
「っ!」
「私だ」
オリビアは、飛び上がらんばかりに驚く。
いったい誰?パッと振り返ると、ザイラスが立っている。ザイラスだと分かり ホッとする。
(よかった)

ドキドキしてる心臓を落ち着かせようと手で押さえる。神経質に なりすぎていた。
「 ごっ、ごめんなさい・・」
「怖いか?」
「怖いです」
 正直な気持ちを口でする。ザイラスが居るし、ポポも、助っ人のジョルノも居る。でも、もしもを考えてしまう。 だって私は不幸と仲良しだから・・。

「 じゃあ、まじないを書いておこう」
「おまじない ですか?」
ザイラスが、自分の人差し指を傷つけると
「 そうだ。私の血がバンパイア除くけになるのは、知っているだろう?」
「はい」
 私の瞼、耳、 拳。指とザイラスが自分の血で模様を描く。それは金色に輝いて、すぐに見えなくなる。 
その光に魔法陣を思い出す。
「 これでよし。あとは、私を信じてポポと おとなしく待っていればいい」
 指で なぞってみるが、何も感じない。
手に血が着かないし、光もしない。
人間の私と違って、特別な存在だから、力がある。 人間の私が 出来ることは無い。
ここに来て 無力な自分の存在が疎ましく感じる。
( 役立たずな人間に、戻ってしまった・・)
 これでは ザイラスたちに仲間として、認めてもらえない。 認められたいなら 少しでも アピールしないと駄目だ。 だって私は、バンパイアを退治するための 餌として 助けたんだから。今回の戦い終わってしまったら、チャンスがなくなってしまう。すがり付くなど 出来無い。
そう思っていたのに、終わりの時間を感じて焦る。

「ザイラス。私・・」
何と言えばいいの?
アピール出来る事と言えば、料理とか掃除とか家事だ。でも、それは私でなくてもすむことだ。
私だけが、出来る事を言わなくちゃ。
何か言わなくてはと 思っているのに言葉が出ない。
「私は・・私が・・」
「 オリビア。心配ない」
違うそうじゃないの。私はバンパイアが怖いんじゃない。その後、どうなるかが 不安で怖いの!
違うと首を振る。
「違っ」
「それじゃあ、行こう」
 しかし、私の言葉を遮るようにザイラスが私を抱き上げる。時間切れなのね・・。私の気持ちは通じない。
やっぱり、私の事など 何とも思ってないんだ。
ただの通りすがりの人でしかない。
 そう、諦めて全ての言葉飲み込む。悲しく堪らない。マリアやモリー達と 離れ離れに なったとき以上に 淋しい。

「オリビア」
名前を呼ばれてザイラスを見る。 注意事項でもあるんだろうか?
「先のことは、明日決めよう」
「えっ?」
「 明日なら、ゆっくり時間が とれる」
「はい」
オリビアはザイラスが、自分の話しを聞いてくれると約束してくれた事に安堵して微笑む。
(まだ、チャンスは ある)

ザイラスの言うことは、もっともだ。今は、戦いに集中しよう。
 私の運命は、ザイラスたちが握っている。
本当は他人に命を預けるたど 不安なはずなのに、不思議とその事実が受け入れられる。オリビアは肩の力を抜くと、ザイラスの その逞しい胸板に身を預ける。
こうしていると、安心する。
一生このままでも、良いと思うほど幸せを感じる。

***開戦!

空には、一番星の宵の明星が、光輝いている。
夜が来た。

 玄関には自分。二階にはジョルノ。オリビアには、ポポが付き添っている。バンパイアたちは屋敷を取り囲むように居る。
それぞれが、それぞれの持ち場についている。

 ジョルノが5本の矢に火をつけると辺りを明るく照らす。 火に群がる虫のように、バンパイアたちが手に持った武器を構える。その時は近い。
重苦しい沈黙の中、誰もが合図を待っている。
「「・・・・」」
「「・・・・」」
  戦いが始まる前の緊張を孕んだ時間を終わらせるかのように、 何の前触れも無くジョルノの火矢が夜空に放たれる。
 5本の火矢が、 5つの方向へと飛んで行く。
 それをきっかけにバンパイアたちが、一気に攻め混んで来る。
「「殺せー!」」

****

 突然 聞こえてきた大勢の者の声に ぎょっとして息が詰まる。 とうとう戦いが始まったんだ。ごくりと 喉を鳴らして唾を飲み込む。
 不安が押し寄せてきて、意識しないと息が うまく吸えない。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「オリビア、大丈夫か?」
「えっ、あっ、はい。大丈夫です」
 ポポに返事をした直後、今度は ガラスの割れる音が 至る所から聞こえる。
(今度は何?)
「ポポ、 これは何ですか?」
「バンパイアが、オリビアを探そうと ガラスを割って部屋を確かめてるんだ 」
今まで、こんなこと無かった。本気で 私を探してるんだ。そのことに現実味が増して、カタカタと震える。
(どうしよう・・)
「オリビア。まだ大丈夫だ。 ここは窓が無いから安心しろ。今から気を張ってたら、体力が持たないぞ」
「はっ、はい」
そうだ夜は長い。 震える手で、顔にかかった髪を撫で付ける。
落ち着くのよ。落ち着くの。

****

 バンパイア達は、足止め組と捜索隊の二つに分かれて行動している 。だが、ジョルノの火矢の早打ちと 俺の血が染み込んだ石つぶての波状攻撃で 足止め組の殺意が半減する。

 仲間が次々と死んでいく。 その事実に幾らバンパイアでも恐怖に竦み上がる。
 膠着状態に突入した足止め組の 隙を突いて 屋敷の 周りを飛んでいる捜索隊の 数を地味に 減らしていた。その時、
「おや、おや。もう戦いは 終わりですか?」
 面白があるような男の声に、その場にいた全員が注目する。
( 真打登場か)
バンパイア 達が場所を開けると、一人の男が姿を表す。白い軍服。長い銀髪に、真っ赤な瞳が輝いている。 相変わらず、もったいつける奴だ。

主の登場に落ちていた 手下達の士気が 野火のように広がる。 ザイラスは、ざっと残りの数を見積もる。来たとは 400。殺したのは100 と言ったところか。 捜索隊は・・30くらいか。
となると、残り270。上出来だ。

「なんだ。その服は?いつから人間の真似を事をするようになったんだ」
「なっ」
 呆れたように言うとメローネの顔に一瞬苛立った表情が浮かぶが、すぐに消える。
 短気な所は何年経っても変わらない。策士が いる様子もないし。今回も なんとかなるだろう。
「 何とでも言え。最後に勝つのは、この私だ 」
メローネが、 自分の胸を叩く。それを見てザイラスはメローネを あおるように両手を上げて首を振る。
「無駄なことは 諦めろ。 勝つのは私だ。今日も、そしてこれからもな」
 「うっ、うるさい。うるさい! 絶対に花嫁を取り戻して みせる」

バンパイアは、もともと好戦的だ。だから、仲間内でも殺し合うことも頻繁にある。
怒らせれば冷静さを失う。そうなれば、こちらの思うつぼだ。だから、さらに煽る。
「王女は絶体に 渡さない。私が先に出逢った」
何が花嫁だ。子供を産む道具としか思っていないくせに 。それに子供ができないのはメローネに問題があるに決まっている。

「夫は私だ。返してももらう」
「断る!!」
きっぱりと言い切る。
何が あろうとも絶対にオリビアは渡さない。
オリビアは私たちの希望だ。 

メローネが凄い形相で私を睨みつける。 しかし、ザイラスは臆することなく 睨み返す。
すると、メローネが顔を引きつらせる。
「ならば、力ずくで奪うまでだ、かかれ!」
 メローネの号令で 手下たちが、津波のように襲いかかってくる。 しかし、所詮烏合の衆だ。
 軽くひねりつぶしてやる。
ザイラスは、こん棒を握り直す。

****

あんたに聞こえていた音がピタリと止んだから、終わったと安心していた。ところが、また 静寂を破るように 更に、また激しく叩く音が聞こえてくる。
「だっ、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だ」
何度もポポに訪ねては、同じ答えが返ってくる。そう分かっていても 聞かずには いられない。 
劣勢なの 優勢なの?
二人の様子が、わからないことが不安を誘う 。
だからといって戦ってる様子を見るのも怖い 。
いつもは雑談をしてくれるポポも今夜は耳をそばだて、バンパイア達の動向を気に掛けている。

昨夜までと全く違う 状況に、これまでのは予行練習だったと つくづく思う。甘く見ていた。
本番は、まったく違う。
 力には、なれなくても 足手まといに ならないようにしように 気を引き締めよう。
冷静になろうと深呼吸していると ポポの毛が逆立つ。
「ポポ?」
「しっ!」
ポポが緊張した声に身を強張らせる。
バンパイアが、ここまで来てるの?
 恐怖に顔を引きつらせながらポポの毛の中に首まで隠れる。
何を仕掛けてくるんだろう・・。
奥歯を噛み締めて恐怖に耐える。 すると、突然 優しい女の人の声がする

「 オリビア。オリビア。居るんでしょ?」
聞き覚えのある優しい女の人の声に、 オリにオリビアはハッとして立ち上がる。
この声・・。 まさか
「 お母様?」
いいえ、違う。お母様が 私に会いに来たりしない。 自分の中に芽生えた淡い期待を首を振って振り払う。
「オリビア。私よ。居るなら 顔を見せてちょうだい」
「っ!」

私は、お母様に『会いたくない』、『 顔も見たくない』と、ずっと言われ続けてきた。
 その お母様が、私の顔が見たいと言ってくれた。
(嬉しい・・)
お母様の言葉を泣きながら噛み締める。
今までの 悲しみが、全て涙とともに洗い流され行く。
私に冷たかったのは何か 理由が、あったんだ。
(ああ、私もお母様の顔を近くで見たい)
オリビアは声のする方に 歩き出す。
「 お母様・・」
「 オリビア!行くな!」


 
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