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21 ザイラスの咆哮
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戦いの最中に オリビアは、この戦いの首謀者であるバンパイアの王らしき者と対面する。
そのことをポポに向かって確認する。
「 あの人が、そうですか?」
「そうだ。名前はメローネ。自信家でモテると勘違いしてるタイプの男だ」
やはりそうだった。 ポポの言う通りナルシストという印象を受ける。
「 これは、これは、愛しの我が花嫁。 無事で何よりだ」
メローネが片手を曲げて、丁寧に頭を下げる。 貴族のように挨拶をした事に オリビアは驚く。
人間と交流があるの? よく見れば、 騎士に似た格好をしている。 どういうことだろう?人間の影響? 意味が分からず眉をひそめる。
「 このところ殺されたばかりで 生きた花嫁を見るのは 何とも感慨深いよ」
メローナが胸に手を当てて首を左右に振る。
気取った態度には 余裕が見える。 でも、その言葉よく噛み砕くと、成功していないと言ってるも 同じだ。 つまり、無敵というわけではない。
そんなメローネに向かって、ポボが鼻を鳴らす。
「ふん! お前みたいな花婿は、お断りだってさ」
「 その毛むくじゃらの そばから離れて、こっちおいで」
ポポが小馬鹿にしたように言うと メローネのこめかみが ひくひくと痙攣する。 しかし、強張った笑みを浮かべて 私に向かって手を差し出す。
「さあ、私の花嫁」
「 行くはずないよ。鏡を見て出直してきな。あっ、 ごめん。鏡に映らないんだったな」
「 私が聞いてるのは 花嫁だ。この獣が!私の話に 勝手に入ってくるな」
テヘッという感じで ポボが言うと あっという間に仮面が はがれてバンパイアの素顔が出てくる。挑発に簡単にのって 激昂している。
短気な性格らしい。
「 行かないわ!」
「あぁ、花嫁。その顔を もっと見せてくれ」
ポボ の後ろから顔だけ出して答えると メローネの目が赤く光る 。その光に吸い込まれるような感覚になる。 なんだか、寝ぼけてるみたい。
でも、そのことを自覚している。
(これはなに?)
「不味い。目を閉じろ!」
「痛っ!」
ポポの尻尾が顔にぶつかる。 何をするんだと尻尾を 退かす。 しかし、すぐに尻尾が顔の前に戻ってくる。なんなの? もう一度ど、退かす。
それでも尻尾が視界を遮る。 たまらず文句を言う。
「ポボ。やめてください」
「んっ? 何ともないのか」
「ええ」
ポポが心配げに顔を覗き込んでくる。 何を心配してるんだろうと首をひねる。
「何か あるんですか?」
「アイツと視線を合わせると『魅了』されて言いなりになるんだ」
「ザイラスめ! どこまで邪魔しやがって!」
自分の能力が、通用してないと 知ってメローネの顔に怒りが浮かぶ。 そういえば ザイラスが、瞼にも まじない を書いていた。 だから、効かなかったんだ。 怒鳴っていたメローネが、一呼吸すると指を鳴らして手下達の注意を引く。
「 私を見ろ」
メローネ の目が赤くなったかと思うと 二人の手下達が眠ったように、その場で ゆらゆらする。
(これが魅了の力?)
一体何をするのかと警戒していると メローネが、手下二人を指差して命令する。
「 サークルに突進しろ」
えっ どうして?
バンパイアにとっては自殺行為だ。それを手下にやるなんて 八つ当たり? どこまで最低なバンパイアだ。 そう思っていると 手下達が矢のように飛び込んでくる。
ポボに ぶつかって サークルの中に落ちる。ポポの後ろにいた私も衝撃で、僅かに体が後ろに下がったが 大した被害はない。
落ちたバンパイアが燃え上がって 灰になった。 なんで、こんなことを?何度も戦ってるんだから、分かりそうなものなのに・・。 サークルの中では原型を保つことさえ難しい。
メローネが、今度は 4人を指さして命令すると 同じように手下が、飛び込んでくる。
また ポボに ぶつかる。耐えられなかったのかポボが後ろに押しやらる。私も後ろに下がった 。
「 無駄なことはよせ。何匹放り投げてもサークルの中に一歩でも入れば 全員灰になるぞ」
ポポが、そう言ってもメローネは止めない。
今度は8人の手下達を指差す。倍々攻撃をしかけてくる。
「来るぞ」
「はい」
ポボの呼びかけにオリビアは頷いて衝撃に備えて踏ん張る。 しかし、それ以上の力に ポボと一緒に壁に打ち付けられる。
「っ」
ズルズルと しゃがみ込む。
なんとか立ち上がろうとすると誰かに足首を掴まれた。ハッとしてその手の持ち主を見るとメローネだった。
どうしてここに? メローネの平気な姿に目を見開く。サークの力が 効かない。何で平気なの?
しかし、良く見れば でサークルの外に居た。
何で?ポボを見ると 同じくサークルの外だ。
二人一緒に どうやって・・!
メローネの意図が分かった。
確かに、サークルは その力でバンパイアを灰にする。 でも、燃え尽きるまで わずかに時間が かかる。 その わずかな時間を利用して、何度も手下を投げてよこしたんだ。少しづつ私をサークルの外に押し出そうとしてたんだ。
さっきの攻撃は、そういうことだったんだ 。
「捕まえた」
「放して!」
メローネが、ニヤリと笑う。その顔を見てオリビアは、我にかえる。
掴まれていない もう一方の足でメローネの手を蹴飛ばす。すると、離すまいと メローネが私の足首に 爪を立てる。
「痛!」
「こいつ!オリビアを放せ」
事態に気づいたポボが、手を離させようとメローネの肩に噛み付く。
「ギャァー」
痛みに食い込んでいた爪が外れる。
オリビアは、その隙に這うようにしてサークルの中に逃げ込む。
サークルの中央に居ると 体が温かくなる。ザイラスに抱っこされてるみたいで、安心できる。
その間も二人は戦っていた。 メローネが噛むのをやめさせようとポポの頭を殴りつける。
するとポポが、更に強く噛み付く。メローネの肩から大量の血が流れている。その血が、ポボを赤く染めていく。
いつもの のんびりとした雰囲気は無い。
獣の本性をむき出しに戦う姿に、ゴクリと唾を飲み込み。 私のような人間が立ち入るべきものではない。
暴れまわるメローネをポポがサークルの中に引きずり込む。 オリビアは怖さに距離をとる。 サークルの中に 引きずり込まれたメローネの体が炎に焼かれる。
「うわぁーーー」
メローネの悲鳴が長く続く。
他のバンパイアと違って、灰になることはなく、 服が燃えて、皮膚がただれて どんどん原型をとどめなくなる。 人の形をした墨のようだ 。これで死ぬんだろうか?
ポポが、 口に残ったメローネの血を吐き出すと、 それにも火がつく。 体中の血が なくなるまで、燃え続けるのだろうか?
だったら、まだ安心はできない。
燃え続けている。メローネが、 顔を抑えてサークルから出ると火を消そうと床をのた打ち回る。これで終わり?
「ザイラスー!!」
ポボがザイラスを大声で呼ぶ。
止めをさせようとしているんだろうか?
確かに 、ずっと苦しめられた宿敵だ 。
メローネが、 息絶えるのを待っている間 オリビア は傷の手当てをしようと足首を見る。
メローネに、ひっかかれた足首は血の気が引き 薄紫色に 変色してきている。 感覚も 鈍い。
いかに酷い状態か自分でわかる。 オリビアはペチコートを噛みちぎると傷に巻きつける。
まだ、戦いは続くんだから 心配をかけているわけにはいかない 。
*****
ザイラスは、ポポの切羽詰った声に振り返る。
何か あったな。嫌な感じがする。
「どけ!」
オリビアの元へ急ごうとするが、メローネの手下どもが ありのように群がって行く手を遮る。
「どけと 言ってるだろうが!」
そのことに苛立ったサイラスは咆哮する。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
『 雑魚どもが、私の命に従え!』
*****
急に まぶたが重くなって睡魔が襲う。
眠気に耐えなから、目を開けようとするのだが、まぶたが勝手に閉じる。
そこへ突然、聞こえてきた大地を揺るがすような 咆哮に、すべての生き物が ひれ伏す。 オリビアも生き物の本能で 従う。そして、それがザイラスだと言うことも耳にした途端 理解した。
言葉が通じるわけではない。でも、全身で その言葉の意味が感じられる。
ポポの言う通り 生き物としての格が違う。
私が 気安く呼び捨てにして良い存在では無い。
そのことを自覚すると、急にザイラスが どこか遠くへ行ってしまったようで寂しい。
ちっぽけな私が 仲間になるなどと、何ておこがましい事を考えていたんだろう。
****:
私の咆哮で 一時的に動きを止めたメローネの手下どもを蹴散らして オリビアの居る部屋へ駆けていく。
その途中、焼きただれた姿で落ちてきたメローネとすれ違う 。
メローナが、死んだのか?
どうして?
誰に 殺られた?
次々と疑問が浮かぶが。しかし、ザイラスは それを無視して上まで行く。
今はオリビアの方が大事だ。
壁が壊れ 辺りには 瓦礫が 散乱している。
ひどい有様に戦いの激しさが見える。
サークルの中でオリビアが ガタガタと震えている 。一目見てザイラスは 何が起きたかを理解する。そして 事の重大さにギリリと唇を噛む 。
メローネが姿を現した時点で、ここで来るべきだった。
「オリビア!オリビア!」
メローネの爪には 自分の血で作った毒が塗ってある。体の自由をなくすためのものだ。
急いで近づくと傷の具合を確かめる。深くはないが、すでに体が冷たくなり始めている。
死んでしまうのも時間の問題だ。その事実に心臓も凍りつく。
大方 解毒剤が欲しければ 自分の言うことを聞けと言うつもりなんだろう。どこまでも卑怯な男だ。
抱き寄せると、唇を紫にしたオリビアが笑顔を作ろうとする。
「 ザイラス様・・大丈夫・・ ちょっと・・眠い・・だけ・・」
こんな状態なのに 泣き言一つ言わない。
健気な姿に胸が詰まる。 その華奢な体を抱きしめると 自分の頬を押し付ける。
「オリビア」
「ザイラス様?」
戸惑ったようなオリビアの声にザイラスは体を離すと その髪を撫で付ける。
「必ず助ける」
「っ」
そう約束して額に口付けする。 頬を赤らめて はにかんだ笑顔を見せるオリビアに 微笑む。
このままではメローネの毒に やられる。
もっと この顔を見ていたが、治療が先だ。
ザイラスは 少しでも進行を遅らせようと 包帯を外すとオリビアの足の傷に 口をつけて毒を吸い出す。 独特の苦い味が 口の中に広がる。
その味が しなくなるまで何度も吸い出す。
これで時間の猶予ができた。自分の 袖を引きちぎるとオリビアの傷口に巻きつける。
「どうだ。大丈夫そうか?」
見守っていたポポ が訪ねてくる。
今のザイラスには、ポポに詳しく話している余裕は無い。
「ジョルノのことは 頼んだぞ 」
返事もせずにザイラスは、オリビアを抱き上げると部屋を飛び出る。
全て、ポポに丸投げになるが仕方がない。
「分かったから、さっさと行け」
ポポの返事を背にザイラスは、木から木へと飛び移りながら東へ向かう。
(まだだ。まだ、早い)
そのことをポポに向かって確認する。
「 あの人が、そうですか?」
「そうだ。名前はメローネ。自信家でモテると勘違いしてるタイプの男だ」
やはりそうだった。 ポポの言う通りナルシストという印象を受ける。
「 これは、これは、愛しの我が花嫁。 無事で何よりだ」
メローネが片手を曲げて、丁寧に頭を下げる。 貴族のように挨拶をした事に オリビアは驚く。
人間と交流があるの? よく見れば、 騎士に似た格好をしている。 どういうことだろう?人間の影響? 意味が分からず眉をひそめる。
「 このところ殺されたばかりで 生きた花嫁を見るのは 何とも感慨深いよ」
メローナが胸に手を当てて首を左右に振る。
気取った態度には 余裕が見える。 でも、その言葉よく噛み砕くと、成功していないと言ってるも 同じだ。 つまり、無敵というわけではない。
そんなメローネに向かって、ポボが鼻を鳴らす。
「ふん! お前みたいな花婿は、お断りだってさ」
「 その毛むくじゃらの そばから離れて、こっちおいで」
ポポが小馬鹿にしたように言うと メローネのこめかみが ひくひくと痙攣する。 しかし、強張った笑みを浮かべて 私に向かって手を差し出す。
「さあ、私の花嫁」
「 行くはずないよ。鏡を見て出直してきな。あっ、 ごめん。鏡に映らないんだったな」
「 私が聞いてるのは 花嫁だ。この獣が!私の話に 勝手に入ってくるな」
テヘッという感じで ポボが言うと あっという間に仮面が はがれてバンパイアの素顔が出てくる。挑発に簡単にのって 激昂している。
短気な性格らしい。
「 行かないわ!」
「あぁ、花嫁。その顔を もっと見せてくれ」
ポボ の後ろから顔だけ出して答えると メローネの目が赤く光る 。その光に吸い込まれるような感覚になる。 なんだか、寝ぼけてるみたい。
でも、そのことを自覚している。
(これはなに?)
「不味い。目を閉じろ!」
「痛っ!」
ポポの尻尾が顔にぶつかる。 何をするんだと尻尾を 退かす。 しかし、すぐに尻尾が顔の前に戻ってくる。なんなの? もう一度ど、退かす。
それでも尻尾が視界を遮る。 たまらず文句を言う。
「ポボ。やめてください」
「んっ? 何ともないのか」
「ええ」
ポポが心配げに顔を覗き込んでくる。 何を心配してるんだろうと首をひねる。
「何か あるんですか?」
「アイツと視線を合わせると『魅了』されて言いなりになるんだ」
「ザイラスめ! どこまで邪魔しやがって!」
自分の能力が、通用してないと 知ってメローネの顔に怒りが浮かぶ。 そういえば ザイラスが、瞼にも まじない を書いていた。 だから、効かなかったんだ。 怒鳴っていたメローネが、一呼吸すると指を鳴らして手下達の注意を引く。
「 私を見ろ」
メローネ の目が赤くなったかと思うと 二人の手下達が眠ったように、その場で ゆらゆらする。
(これが魅了の力?)
一体何をするのかと警戒していると メローネが、手下二人を指差して命令する。
「 サークルに突進しろ」
えっ どうして?
バンパイアにとっては自殺行為だ。それを手下にやるなんて 八つ当たり? どこまで最低なバンパイアだ。 そう思っていると 手下達が矢のように飛び込んでくる。
ポボに ぶつかって サークルの中に落ちる。ポポの後ろにいた私も衝撃で、僅かに体が後ろに下がったが 大した被害はない。
落ちたバンパイアが燃え上がって 灰になった。 なんで、こんなことを?何度も戦ってるんだから、分かりそうなものなのに・・。 サークルの中では原型を保つことさえ難しい。
メローネが、今度は 4人を指さして命令すると 同じように手下が、飛び込んでくる。
また ポボに ぶつかる。耐えられなかったのかポボが後ろに押しやらる。私も後ろに下がった 。
「 無駄なことはよせ。何匹放り投げてもサークルの中に一歩でも入れば 全員灰になるぞ」
ポポが、そう言ってもメローネは止めない。
今度は8人の手下達を指差す。倍々攻撃をしかけてくる。
「来るぞ」
「はい」
ポボの呼びかけにオリビアは頷いて衝撃に備えて踏ん張る。 しかし、それ以上の力に ポボと一緒に壁に打ち付けられる。
「っ」
ズルズルと しゃがみ込む。
なんとか立ち上がろうとすると誰かに足首を掴まれた。ハッとしてその手の持ち主を見るとメローネだった。
どうしてここに? メローネの平気な姿に目を見開く。サークの力が 効かない。何で平気なの?
しかし、良く見れば でサークルの外に居た。
何で?ポボを見ると 同じくサークルの外だ。
二人一緒に どうやって・・!
メローネの意図が分かった。
確かに、サークルは その力でバンパイアを灰にする。 でも、燃え尽きるまで わずかに時間が かかる。 その わずかな時間を利用して、何度も手下を投げてよこしたんだ。少しづつ私をサークルの外に押し出そうとしてたんだ。
さっきの攻撃は、そういうことだったんだ 。
「捕まえた」
「放して!」
メローネが、ニヤリと笑う。その顔を見てオリビアは、我にかえる。
掴まれていない もう一方の足でメローネの手を蹴飛ばす。すると、離すまいと メローネが私の足首に 爪を立てる。
「痛!」
「こいつ!オリビアを放せ」
事態に気づいたポボが、手を離させようとメローネの肩に噛み付く。
「ギャァー」
痛みに食い込んでいた爪が外れる。
オリビアは、その隙に這うようにしてサークルの中に逃げ込む。
サークルの中央に居ると 体が温かくなる。ザイラスに抱っこされてるみたいで、安心できる。
その間も二人は戦っていた。 メローネが噛むのをやめさせようとポポの頭を殴りつける。
するとポポが、更に強く噛み付く。メローネの肩から大量の血が流れている。その血が、ポボを赤く染めていく。
いつもの のんびりとした雰囲気は無い。
獣の本性をむき出しに戦う姿に、ゴクリと唾を飲み込み。 私のような人間が立ち入るべきものではない。
暴れまわるメローネをポポがサークルの中に引きずり込む。 オリビアは怖さに距離をとる。 サークルの中に 引きずり込まれたメローネの体が炎に焼かれる。
「うわぁーーー」
メローネの悲鳴が長く続く。
他のバンパイアと違って、灰になることはなく、 服が燃えて、皮膚がただれて どんどん原型をとどめなくなる。 人の形をした墨のようだ 。これで死ぬんだろうか?
ポポが、 口に残ったメローネの血を吐き出すと、 それにも火がつく。 体中の血が なくなるまで、燃え続けるのだろうか?
だったら、まだ安心はできない。
燃え続けている。メローネが、 顔を抑えてサークルから出ると火を消そうと床をのた打ち回る。これで終わり?
「ザイラスー!!」
ポボがザイラスを大声で呼ぶ。
止めをさせようとしているんだろうか?
確かに 、ずっと苦しめられた宿敵だ 。
メローネが、 息絶えるのを待っている間 オリビア は傷の手当てをしようと足首を見る。
メローネに、ひっかかれた足首は血の気が引き 薄紫色に 変色してきている。 感覚も 鈍い。
いかに酷い状態か自分でわかる。 オリビアはペチコートを噛みちぎると傷に巻きつける。
まだ、戦いは続くんだから 心配をかけているわけにはいかない 。
*****
ザイラスは、ポポの切羽詰った声に振り返る。
何か あったな。嫌な感じがする。
「どけ!」
オリビアの元へ急ごうとするが、メローネの手下どもが ありのように群がって行く手を遮る。
「どけと 言ってるだろうが!」
そのことに苛立ったサイラスは咆哮する。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
『 雑魚どもが、私の命に従え!』
*****
急に まぶたが重くなって睡魔が襲う。
眠気に耐えなから、目を開けようとするのだが、まぶたが勝手に閉じる。
そこへ突然、聞こえてきた大地を揺るがすような 咆哮に、すべての生き物が ひれ伏す。 オリビアも生き物の本能で 従う。そして、それがザイラスだと言うことも耳にした途端 理解した。
言葉が通じるわけではない。でも、全身で その言葉の意味が感じられる。
ポポの言う通り 生き物としての格が違う。
私が 気安く呼び捨てにして良い存在では無い。
そのことを自覚すると、急にザイラスが どこか遠くへ行ってしまったようで寂しい。
ちっぽけな私が 仲間になるなどと、何ておこがましい事を考えていたんだろう。
****:
私の咆哮で 一時的に動きを止めたメローネの手下どもを蹴散らして オリビアの居る部屋へ駆けていく。
その途中、焼きただれた姿で落ちてきたメローネとすれ違う 。
メローナが、死んだのか?
どうして?
誰に 殺られた?
次々と疑問が浮かぶが。しかし、ザイラスは それを無視して上まで行く。
今はオリビアの方が大事だ。
壁が壊れ 辺りには 瓦礫が 散乱している。
ひどい有様に戦いの激しさが見える。
サークルの中でオリビアが ガタガタと震えている 。一目見てザイラスは 何が起きたかを理解する。そして 事の重大さにギリリと唇を噛む 。
メローネが姿を現した時点で、ここで来るべきだった。
「オリビア!オリビア!」
メローネの爪には 自分の血で作った毒が塗ってある。体の自由をなくすためのものだ。
急いで近づくと傷の具合を確かめる。深くはないが、すでに体が冷たくなり始めている。
死んでしまうのも時間の問題だ。その事実に心臓も凍りつく。
大方 解毒剤が欲しければ 自分の言うことを聞けと言うつもりなんだろう。どこまでも卑怯な男だ。
抱き寄せると、唇を紫にしたオリビアが笑顔を作ろうとする。
「 ザイラス様・・大丈夫・・ ちょっと・・眠い・・だけ・・」
こんな状態なのに 泣き言一つ言わない。
健気な姿に胸が詰まる。 その華奢な体を抱きしめると 自分の頬を押し付ける。
「オリビア」
「ザイラス様?」
戸惑ったようなオリビアの声にザイラスは体を離すと その髪を撫で付ける。
「必ず助ける」
「っ」
そう約束して額に口付けする。 頬を赤らめて はにかんだ笑顔を見せるオリビアに 微笑む。
このままではメローネの毒に やられる。
もっと この顔を見ていたが、治療が先だ。
ザイラスは 少しでも進行を遅らせようと 包帯を外すとオリビアの足の傷に 口をつけて毒を吸い出す。 独特の苦い味が 口の中に広がる。
その味が しなくなるまで何度も吸い出す。
これで時間の猶予ができた。自分の 袖を引きちぎるとオリビアの傷口に巻きつける。
「どうだ。大丈夫そうか?」
見守っていたポポ が訪ねてくる。
今のザイラスには、ポポに詳しく話している余裕は無い。
「ジョルノのことは 頼んだぞ 」
返事もせずにザイラスは、オリビアを抱き上げると部屋を飛び出る。
全て、ポポに丸投げになるが仕方がない。
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