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大人のデート
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木に登ったはいいが 降りれず困っていた。
爪を立てなければ ずるずる降りられるだろうけど……。それは怖い。
だからと言って、頭から降りるのも怖い。鉤爪は登るのには適しても降りるには不向きだった。二進も三進も行かない。
(どうしよう……)
脳裏に猫の救出に、はしご車を使って映像が流れる。あの時は、猫のくせにどうして降りられないのかと、馬鹿にしたけど。今なら猫の気持ちが解る。猫だって怖いものは怖い。行き成り七メートルの大ジャンプは無理だ。
『にゃにゃあー!、にゃにゃあー!、にゃあー!、にゃあー!』
(誰か助けてー! 助けに来て! ご主人様! マーカス!)
いくら呼んでも誰も探しに来ない。このまま夜まで放って置かれるかもと思うと悲しくなる。人間だったらすぐに助けに来てくれるだろうに。ペットじゃ姿が見えなくても誰も何とも思わない。諦めと心細さに泣きたくなる。それでも皆を信じて助けに来てくれるのを待った。しかし、待てど、暮らせど、誰も来てくれない。
『にゃにゃあー!、にゃにゃあー!』
(誰か助けてー! 助けに来てー!)
鳴いても、鳴いても、誰にも届かない。このまま誰も気付いてくれなかったらどうしよう……。
複数の足音と話し声にハッとして目を開ける。
「この上に 居るんだな」
下を覘くとご主人様の声も聞こえる。やっと気づいてくれた。疲れて 悲しくて 寂しかった、そんな気持ちが皆の姿に消えて行く。助かった……。
『にゃ。にゃあ~にゃあ』(ご主人様。降りられなくなったの。助けて)
「リサ、ここに居たのか。今助けるから待ってなさい」
『にゃ』(はい)
早く、早く、と様子を伺っていると小さな足音がやって来る。
マーカスが来た。
「父上、ハシゴが無いって」
「そうか困ったな……」
ご主人様が眉間に皺を寄せた。
梯子が無い……。
何ですって! それじゃあどうやってここまで来てくれるの?
「登れるか?」
「無理だよ。途中 掴まれるものがないから」
木肌がツルツルだから人間ではこの木を登って来られない。
「坊っちゃまを肩車したら?」
「それでも高さが足りないよ」
私を助けるために下で色々と意見を出し合ったる。有り難い。
「そうだ。シーツは?」
「そうよ。シーツよ」
「その手があった」
シーツか……。
結局飛び降りるしかないのね……。でも、そうするしかない。
準備が整うまで待とう。
そう思っていが、木の下は狭いからシーツを広げられないから無理だと言われた。そう言われると確かに的が小さい。どうしたらいいんだろう。他に方法があったかな? 思い出そうとしていると下からご主人様の声が届く。
「リサ、私に胸に飛び込んでおいで」
そう言って飛び込めと大きく腕を広げる。
無理。無理。首を激しく振って断る。猫だって怖い高さだから、ずっと飛び降りられなくてここに居たのに 今更そんな事言われても困る。
「大丈夫、私を信じなさい」
信じる 信じないじゃない。ご主人様が私を落とさないのは疑って無い。怖いか 怖くないかの問題だ。それなのに、期待に満ちた目で促して来る。
「さあ 早く」
(でも……)
「このままだと夜になってしまうよ」
(そうだけど……)
森で寝泊まりしていたから夜は怖くない。怖いのは寝てしまって、寝返りとかでうっかり落ちてしまう事だ。今自分が足場にしている枝は太くない。
ここで夜を明かす危険だ。
「勇気を出して」
「頑張れ、リサ」
「そうです」
「飛んでくれたら我々が受け止めます」
「そうです。ファイトです」
みんながそう言って応援してくれる。でも、下を覘くだけで足がガタガタ震える。やっぱり怖い。
だけど、何時かは降りるしかない。今か 後かの違いだ。
だったら……。
ゴクリと喉を鳴らす。極度の緊張で体が硬くなる。
この前みたいに体が反応して着地できるかもしれない。けど何処へ着地するか分からない。
「リサおいで」
ご主人様の優しい声がそんな私を後押しする。
大丈夫。怪我はしない。
こんな小さな猫だもん。受け止めるくらい平気だ。
覚悟を決めてコクリと頷く。
「大丈夫だよ」
「リサ飛び込んでおいで」
「そうですよ」
みんなの声援を背に勇気を出して
思い切ってジャンプした。
『にゃ!』(とう!)
前に飛び出したはずが、現実は足を踏み外したみたいになってしまった。そこからは急降下。おっ、落ちる! そう思った瞬間、体が何かに掴まろうと必死にバタバタと手足が動かした。
「捕まえた」
ギュッと捕まえられると同時に頭上から声がする。
あっ! 見上げるとご主人様の顔が。良かった。降りられた。安心して顔を擦り付ける。
『にゃ~、にゃにゃ』(ご主人様。ありがとうございます)
「父上、怪我している」
(えっ?)
マーカスの言葉に、その視線の先を見ると、ご主人様の腕に赤い筋が三本残っていた。
ああ、私だ。爪を出したまま抱きついたんだ。
『にゃ~、にゃ、にゃにゃ~。にゃ?』(ご主人様、ごめんなさいどうしよう。痛い?)
そっと傷跡を見た後ご主人様の顔を見上げる。ご主人様が笑顔で私の頭を撫でた。
だけど、傷が見えないようにシャツで隠したのを見逃さなかった。
「いいからとにかく中に戻ろう」
助けてくれたのに……。なんてことしちゃたんだろう……。ご主人様は平気だと言うけど申し訳ない気持ちでいっぱいだ。見た目はたいしたこと無いように見えるけど、猫のひっかき傷は深い。
心配で、心配で、ご主人様が治療している間中ウロウロしながら付き添っていた。
痛いだろうに、私を気遣ってそんなそぶりも見せない。ごめんなさい。本当にごめんなさい。怪我をさせるつもりなんて全然なかったのに……。
**
後悔ばかりの一日だった一夜が明けた。そして今、私はご主人様と一緒に執務室に居る。
怪我をしたのは利き腕だし 少しは自分を労わって欲しい。それなのに朝から仕事を始めている。
説得しようにも人語がしゃべれない。止めさせようと膝の上に乗ったり、書類の上に座ったりした。しかし、その度に私を抱っこしてどかす。
こうなったら実力行使だ。
そうわさせまいと前脚を突き出して頬に肉球を押し付けて嫌がったがあっさりと床に下ろされる。
(………)
これくらいの邪魔では軽すぎる。もっとだ!
机に飛び乗ると両前脚でご主人様の腕を抱える。
怪我しているんだから仕事しちゃ駄目。
「リサ~。大丈夫だから」
『………』
ご主人様がジッと私を見る。
それに対して駄目だと首を振る。すると、私を落とそうと腕を持ち上げる。
そうはさせるかと後ろ足も絡める。
「………」
『………』
少しでも動かそうとすると体重をかける。ご主人様が私を諌めるように見る。しかし、私も諌めるようとお互いに睨みあう。
まったく言う事を聞きなさいと見て来るが、プイッとご主人様が視線を外すとペンを動かし出す。
「リサ。本当に平気だから」
『ノー!』
首を振るとググッと腕に力を入れる。しかし、ご主人様も止めない。腕をブルブル言わせながら文字を掻き続ける。
こうなったら意地だ。
両手足でがっちり しがみつく。
ところがご主人様も意地になったみたいで 私に全体重がのっかっているのに止めない。こめかみに血管が浮き出ているのに無理してでも仕事を続けるきだ。力を入れてるいから文字が微妙にブレてるし、太さも均一でない。
暫く攻防を繰り広げていたが、とうとうご主人様がペンを止めた。
「分かった。分かった。休むから」
勝った!
そう言う事ならと腕から手を離すとご主人様の太ももに移動する。そんな私を困った様に見ていたがご主人様が頭を撫でる。
「リサには 敵わないよ」
満足げに喉を鳴らす。
***
その日の夜 寝室に続くテラスにご主人様が オードブルやワインをセットした。
寝酒!? なのかなと思いながら ベッドの上から ご主人様を目で追っていると、突然 シャツのボタンを外しながら こっちに向かってくる。
これって……。
ご主人様のセクシーな胸から逃れるようにシーツに潜った。それでもしっかり目に焼き付いた。 何度見ても素敵だ。触りたいと思っちゃう。シーツの中で悶えていると、ドサッと何かが のしかかる音に 首を動かす。ご主人様が私の顔の両側に手をついているのに気づいた。 抑え込まれている。
それなのに、不安より 驚きより ドキドキが勝る。逃げ場をなくされたことで余計に興奮する。
そうだ。
言い訳が欲しかったんだ。
こうなるのは仕方がないことだって。
ゆっくりとシーツが捲られる。
心臓が破裂しそうなほどドキドキする。リチャードの顔が現れた。
目を細めて 私を見る リチャードが指の背で私の頬を撫でる。
「会いたかったよ」
吐息のような ささやきにカーッと全身が熱くなる。
頬を赤らめながら見つめ返しているとリチャードの顔が下りて来る。
「リサ……」
名前を呼ばれただけなのに、その熱さが伝わってくる。ゴクリと唾を飲み込む。でもそのまま。返事を待っているの?
そんなの確かめなくてもいいのに。頷くことさえ恥ずかしい。
でも、この状態が続く方が持たない。微かに頷くと、リチャードの唇が押し付けられた。
一度離れたと思ったらすぐに唇が近づいて来る。
焦らすようにリチャードが唇を甘噛みする。二度、三度と唇を求められる。
「はぁ、はぁ、はぁ」
息が上がる。初めての感触に心臓がドキドキする。何故か興奮する。でも、序の口だった。
グイッと頭の後ろに手を差し入れられたと思ったら舌が滑り込んで来た。口の中を舌でなぶられるようで怖い。本能的に、その舌から逃げた。しかし、獲物を狙うように執拗に追い掛け回して来る。
絡まって、重なって、擦り合って、蹂躙され続ける。流れ込んで来るリチャードの唾液を飲み込む。飲み込めなかった唾液が口の端からしたたり落ちる。
「はぁ、はぁ、はぁ」
口づけを止めたリチャードが起き上がった。その口から銀色の雫がツウーッと糸を引いて唾液がしたたり落ちて、私の顎に落ちて二人を繋ぐ。
私と同じくらい荒い息をついている。リチャードも興奮している。目元を赤く染めた顔に何故か、勝負などしていないのに勝った気分になる。もっとその表情を見ようと手を伸ばして 頬に触れようとしたが、急に態度を一変させて私をシーツでグルグル巻きにした。
デジャヴみたい? また途中で終わり?
爪を立てなければ ずるずる降りられるだろうけど……。それは怖い。
だからと言って、頭から降りるのも怖い。鉤爪は登るのには適しても降りるには不向きだった。二進も三進も行かない。
(どうしよう……)
脳裏に猫の救出に、はしご車を使って映像が流れる。あの時は、猫のくせにどうして降りられないのかと、馬鹿にしたけど。今なら猫の気持ちが解る。猫だって怖いものは怖い。行き成り七メートルの大ジャンプは無理だ。
『にゃにゃあー!、にゃにゃあー!、にゃあー!、にゃあー!』
(誰か助けてー! 助けに来て! ご主人様! マーカス!)
いくら呼んでも誰も探しに来ない。このまま夜まで放って置かれるかもと思うと悲しくなる。人間だったらすぐに助けに来てくれるだろうに。ペットじゃ姿が見えなくても誰も何とも思わない。諦めと心細さに泣きたくなる。それでも皆を信じて助けに来てくれるのを待った。しかし、待てど、暮らせど、誰も来てくれない。
『にゃにゃあー!、にゃにゃあー!』
(誰か助けてー! 助けに来てー!)
鳴いても、鳴いても、誰にも届かない。このまま誰も気付いてくれなかったらどうしよう……。
複数の足音と話し声にハッとして目を開ける。
「この上に 居るんだな」
下を覘くとご主人様の声も聞こえる。やっと気づいてくれた。疲れて 悲しくて 寂しかった、そんな気持ちが皆の姿に消えて行く。助かった……。
『にゃ。にゃあ~にゃあ』(ご主人様。降りられなくなったの。助けて)
「リサ、ここに居たのか。今助けるから待ってなさい」
『にゃ』(はい)
早く、早く、と様子を伺っていると小さな足音がやって来る。
マーカスが来た。
「父上、ハシゴが無いって」
「そうか困ったな……」
ご主人様が眉間に皺を寄せた。
梯子が無い……。
何ですって! それじゃあどうやってここまで来てくれるの?
「登れるか?」
「無理だよ。途中 掴まれるものがないから」
木肌がツルツルだから人間ではこの木を登って来られない。
「坊っちゃまを肩車したら?」
「それでも高さが足りないよ」
私を助けるために下で色々と意見を出し合ったる。有り難い。
「そうだ。シーツは?」
「そうよ。シーツよ」
「その手があった」
シーツか……。
結局飛び降りるしかないのね……。でも、そうするしかない。
準備が整うまで待とう。
そう思っていが、木の下は狭いからシーツを広げられないから無理だと言われた。そう言われると確かに的が小さい。どうしたらいいんだろう。他に方法があったかな? 思い出そうとしていると下からご主人様の声が届く。
「リサ、私に胸に飛び込んでおいで」
そう言って飛び込めと大きく腕を広げる。
無理。無理。首を激しく振って断る。猫だって怖い高さだから、ずっと飛び降りられなくてここに居たのに 今更そんな事言われても困る。
「大丈夫、私を信じなさい」
信じる 信じないじゃない。ご主人様が私を落とさないのは疑って無い。怖いか 怖くないかの問題だ。それなのに、期待に満ちた目で促して来る。
「さあ 早く」
(でも……)
「このままだと夜になってしまうよ」
(そうだけど……)
森で寝泊まりしていたから夜は怖くない。怖いのは寝てしまって、寝返りとかでうっかり落ちてしまう事だ。今自分が足場にしている枝は太くない。
ここで夜を明かす危険だ。
「勇気を出して」
「頑張れ、リサ」
「そうです」
「飛んでくれたら我々が受け止めます」
「そうです。ファイトです」
みんながそう言って応援してくれる。でも、下を覘くだけで足がガタガタ震える。やっぱり怖い。
だけど、何時かは降りるしかない。今か 後かの違いだ。
だったら……。
ゴクリと喉を鳴らす。極度の緊張で体が硬くなる。
この前みたいに体が反応して着地できるかもしれない。けど何処へ着地するか分からない。
「リサおいで」
ご主人様の優しい声がそんな私を後押しする。
大丈夫。怪我はしない。
こんな小さな猫だもん。受け止めるくらい平気だ。
覚悟を決めてコクリと頷く。
「大丈夫だよ」
「リサ飛び込んでおいで」
「そうですよ」
みんなの声援を背に勇気を出して
思い切ってジャンプした。
『にゃ!』(とう!)
前に飛び出したはずが、現実は足を踏み外したみたいになってしまった。そこからは急降下。おっ、落ちる! そう思った瞬間、体が何かに掴まろうと必死にバタバタと手足が動かした。
「捕まえた」
ギュッと捕まえられると同時に頭上から声がする。
あっ! 見上げるとご主人様の顔が。良かった。降りられた。安心して顔を擦り付ける。
『にゃ~、にゃにゃ』(ご主人様。ありがとうございます)
「父上、怪我している」
(えっ?)
マーカスの言葉に、その視線の先を見ると、ご主人様の腕に赤い筋が三本残っていた。
ああ、私だ。爪を出したまま抱きついたんだ。
『にゃ~、にゃ、にゃにゃ~。にゃ?』(ご主人様、ごめんなさいどうしよう。痛い?)
そっと傷跡を見た後ご主人様の顔を見上げる。ご主人様が笑顔で私の頭を撫でた。
だけど、傷が見えないようにシャツで隠したのを見逃さなかった。
「いいからとにかく中に戻ろう」
助けてくれたのに……。なんてことしちゃたんだろう……。ご主人様は平気だと言うけど申し訳ない気持ちでいっぱいだ。見た目はたいしたこと無いように見えるけど、猫のひっかき傷は深い。
心配で、心配で、ご主人様が治療している間中ウロウロしながら付き添っていた。
痛いだろうに、私を気遣ってそんなそぶりも見せない。ごめんなさい。本当にごめんなさい。怪我をさせるつもりなんて全然なかったのに……。
**
後悔ばかりの一日だった一夜が明けた。そして今、私はご主人様と一緒に執務室に居る。
怪我をしたのは利き腕だし 少しは自分を労わって欲しい。それなのに朝から仕事を始めている。
説得しようにも人語がしゃべれない。止めさせようと膝の上に乗ったり、書類の上に座ったりした。しかし、その度に私を抱っこしてどかす。
こうなったら実力行使だ。
そうわさせまいと前脚を突き出して頬に肉球を押し付けて嫌がったがあっさりと床に下ろされる。
(………)
これくらいの邪魔では軽すぎる。もっとだ!
机に飛び乗ると両前脚でご主人様の腕を抱える。
怪我しているんだから仕事しちゃ駄目。
「リサ~。大丈夫だから」
『………』
ご主人様がジッと私を見る。
それに対して駄目だと首を振る。すると、私を落とそうと腕を持ち上げる。
そうはさせるかと後ろ足も絡める。
「………」
『………』
少しでも動かそうとすると体重をかける。ご主人様が私を諌めるように見る。しかし、私も諌めるようとお互いに睨みあう。
まったく言う事を聞きなさいと見て来るが、プイッとご主人様が視線を外すとペンを動かし出す。
「リサ。本当に平気だから」
『ノー!』
首を振るとググッと腕に力を入れる。しかし、ご主人様も止めない。腕をブルブル言わせながら文字を掻き続ける。
こうなったら意地だ。
両手足でがっちり しがみつく。
ところがご主人様も意地になったみたいで 私に全体重がのっかっているのに止めない。こめかみに血管が浮き出ているのに無理してでも仕事を続けるきだ。力を入れてるいから文字が微妙にブレてるし、太さも均一でない。
暫く攻防を繰り広げていたが、とうとうご主人様がペンを止めた。
「分かった。分かった。休むから」
勝った!
そう言う事ならと腕から手を離すとご主人様の太ももに移動する。そんな私を困った様に見ていたがご主人様が頭を撫でる。
「リサには 敵わないよ」
満足げに喉を鳴らす。
***
その日の夜 寝室に続くテラスにご主人様が オードブルやワインをセットした。
寝酒!? なのかなと思いながら ベッドの上から ご主人様を目で追っていると、突然 シャツのボタンを外しながら こっちに向かってくる。
これって……。
ご主人様のセクシーな胸から逃れるようにシーツに潜った。それでもしっかり目に焼き付いた。 何度見ても素敵だ。触りたいと思っちゃう。シーツの中で悶えていると、ドサッと何かが のしかかる音に 首を動かす。ご主人様が私の顔の両側に手をついているのに気づいた。 抑え込まれている。
それなのに、不安より 驚きより ドキドキが勝る。逃げ場をなくされたことで余計に興奮する。
そうだ。
言い訳が欲しかったんだ。
こうなるのは仕方がないことだって。
ゆっくりとシーツが捲られる。
心臓が破裂しそうなほどドキドキする。リチャードの顔が現れた。
目を細めて 私を見る リチャードが指の背で私の頬を撫でる。
「会いたかったよ」
吐息のような ささやきにカーッと全身が熱くなる。
頬を赤らめながら見つめ返しているとリチャードの顔が下りて来る。
「リサ……」
名前を呼ばれただけなのに、その熱さが伝わってくる。ゴクリと唾を飲み込む。でもそのまま。返事を待っているの?
そんなの確かめなくてもいいのに。頷くことさえ恥ずかしい。
でも、この状態が続く方が持たない。微かに頷くと、リチャードの唇が押し付けられた。
一度離れたと思ったらすぐに唇が近づいて来る。
焦らすようにリチャードが唇を甘噛みする。二度、三度と唇を求められる。
「はぁ、はぁ、はぁ」
息が上がる。初めての感触に心臓がドキドキする。何故か興奮する。でも、序の口だった。
グイッと頭の後ろに手を差し入れられたと思ったら舌が滑り込んで来た。口の中を舌でなぶられるようで怖い。本能的に、その舌から逃げた。しかし、獲物を狙うように執拗に追い掛け回して来る。
絡まって、重なって、擦り合って、蹂躙され続ける。流れ込んで来るリチャードの唾液を飲み込む。飲み込めなかった唾液が口の端からしたたり落ちる。
「はぁ、はぁ、はぁ」
口づけを止めたリチャードが起き上がった。その口から銀色の雫がツウーッと糸を引いて唾液がしたたり落ちて、私の顎に落ちて二人を繋ぐ。
私と同じくらい荒い息をついている。リチャードも興奮している。目元を赤く染めた顔に何故か、勝負などしていないのに勝った気分になる。もっとその表情を見ようと手を伸ばして 頬に触れようとしたが、急に態度を一変させて私をシーツでグルグル巻きにした。
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