猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました

あべ鈴峰

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決心しました

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   ドナルドのに呼び鈴の音に部屋に行くとおつかいを頼まれた。
ドアを閉めたゲイルはニヤリと笑うと胸ポケットに入れた金貨を叩く。何時もドミニクの世話で この森に囲まれた場所に縛り付けられて、街へは滅多に行けない。
やりたいことも 食べたいものもある。久々に息抜きが出来る。想像しただけでウキウキする。

「街に行くぞ」
通りかかったドナルドに声を掛けた。同じ孤児院出身で気が合う。
途端にドナルドが笑みを浮かべた。ゲイルはドナルドと肩を組むと玄関へ向かった。
今日は夜遅くまで遊んでやる!

**

   リサは覚悟を決めた。
でもまずは、プラトニックから。

寝室に入って来たリチャードに向かって飛びつくと肩に乗っかる。また自分から誘うのか思うと嫌だけど、人間にならないと話が出来ないんだから仕方がない。
(そう、これは仕方のないこと)
「おっと」
驚いているリチャードの唇を問答無用でチュ、チュ、チュと奪う。
(これで通じるでしょ)


   通じ過ぎて 気づけば ベッドに押し倒されていた。口づけを繰り返されて、固くなった乳首がリチャードの胸と擦れる度に大事なところがキュンと切なくなる。無意識に膝を擦り合わせていた。
お尻を撫でられ思わず腰が浮く。
(ああどうしよう……)
気持ちを確認してないのにリチャードと肉体関係を持つなんて駄目だ。でも、喜びを知った体は甘い誘惑を止められない。
リチャードの太ももが私の太ももの間に割り込んで来た。閉じたくても閉じられない。このままだと
無防備になった所を攻めらる。
なまじ知識があるから余計に乱れてしまう。固く閉じられていた場所をリチャードの指が左右に分に開く。何往復もされているうちに、その指がワレメにある小さな突起をしつこく撫で回してきた。 そうされるたびに 滑りが良くなってリチャードの指が奥へ奥へと入って行く。差し込まれる指が 一本から二本になり、中で曲げた指の節が押し広げて開拓しようとしている。それを許しまっている。
駄目だ。このままじゃ話し合いにならない。

  僅かに残った理性を掻き集めてリチャードの指に自分の指を絡めた。 いわゆる恋人つなぎだ。
「リッ、リチャード……」
「何だいリサ」
息が上がって上手に息も吸えないし喋られない。でも、言わないと愛撫の手を止めてもらえない。
「はっ、話が……したいの……」
「……分かった」
そう言うと先ほどまでの熱い愛撫を繰り返していた男とは思えないほど冷静に 返事をして来た。
(えっ?)
切り替えに早さに体が追いつかない。感じていたのは私だけ? 
まだ、ジンジンしたるのに。
さっきまでの二人のめくるめく熱い夜は何だったの?
起き上がった リチャードが私に背を向けて パジャマを着だした。
ムッとして 声をかけようとしたが、その横顔が苦しそうだった。そんなリチャードを見て私と同じだと嬉しくなった。


「私……人間になるわ」
「ありがとう」
『好きだ』と言いたかった。だけど、直前で保険を掛けてしまった。リチャードが私の手を掴むと手のひらに口づけした。カーッと顔が赤くなる。キスより親密な行為に思える。

これでスタートだ。
子供だけでなく、リチャードの心も欲しい。そのためにも頑張らないと。そんなことを考えていると急に、リチャードが私の肩を掴んで自分に向かせた。その指が肩に食い込む。
(痛い……)
どうしたって言うの。
「リサ。これはとても大事な事なんだ」
「何……」
何時もと違って何処か緊張感が漂う空気に 私も飲み込まれて、つられるように自分も緊張する。
「人間の姿になりたいとだけ考えて私との関係を持つなら、もう終わりにしたい」
「えっ? はっ? ちょっ、ちょっと待って!」
リチャードの言い方に傷つく。
それにリチャードの言い方だと自分が弄ばれている被害者だと言いたいみたいだ。私はそんな軽い女じゃない。リチャードが好きだから相手に選んだんだ。それに 積極的だったのはリチャードの方だ。
それなのに、そんなことを言うなんて! 私こそ騙された。あんな事したくせに。今更 責任逃れようとしているの?
ギロリと睨みつける。

  文句を言おうと口を開いたがリチャードが首を振って止める。
「最後まで聞いてから返事をして欲しい」
「分かったわ」
「私は……私はリサと生きたい。そして……」
「そして?」
「………」
そう言ったのに、リチャードが言葉を詰まらせて私を見つめる。
何が言いたいの? 何を考えてているのかさっぱり分からない。答えを探すようにリチャードを見つめると、どこか切なげな瞳が私を見返していた。その瞳を見ると 怒りが消えて キュッと心臓が掴まれたみたいに痛くなる。何だか切実なものを感じる。リチャードは何を言おうとしているの?

「だから……だから、結婚を前提としてでは無いなら断る」
「えっ?………」
結婚を前提に交際する?
思考が二転三転して追いつかない。恋人の時間も欲しい。だけど 私もそのつもりだ。それなのに、なんでわざわざ 確かめるの?
意図が分からず。問うように顔を覗き込む。
「独身じゃないんだ。気軽に付き合う事は出来ない」
「………」
その言葉に ハッとした。
それは永遠の関係を築きたいと言う事だ。独身の私と子供の居るリチャードとでは 交際する事の責任の重さが違う。
いずれは マーカスの継母になってもいいと考えていたけど、恋愛したい、デートしたい、恋人同士になりたい。今が楽しければそれで良いと。自分の事ばかり考えていた。
(……本当に私って自己中だ)
マーカスの気持ちも考えないと、無駄に期待を持たせて傷つけたくない。リチャードも失敗しているから慎重になるのは理解出来る。先の見えない未来は不安なんだ。
でもだからと言って私の気持ちが変わる事は無い。最初からマーカスが居る事は知っていたし、奥さんがいない事も知っていた。

   告白の返事を待っている少年のようなリチャードの顔をジッと見つめる。大人の男の顔も、子供みたいな顔も、父親の顔も、欲望にまみれた顔も、全てが愛おしい。この先も色んな顔を見せてくれるだろう。ニッコリと笑うと肩に乗っているリチャードの手を掴んで包み込む。
「はい。結婚を前提でお願いします」
返事をするとパッとリチャードの顔が明るくなった。オッケーを貰えてリチャードが目じりに皺を作る。
「好きだよ」
「なっ、なっ、なっ」
改まって気持ちを伝えられて嬉しいのに、恥ずかしさの方が強くて思わず後ろに逃げてしまった。
しかしその分リチャードが距離を詰めて顔を近付けて来る。
うっ、あっ、えっとまたキスする気? そう思って目を閉じた。
「リサ、返事は?」
その言葉にパッと目を開けると、リチャードの唇がつきそうなほど近くでピタリと止まっていた。
そうだった。初告白にすっかり舞い上がって忘れてしまっていた。
「コホン……私も好きです」
咳払いして仕切り直して返事をする。すると、止まっていたリチャードが私の頬に手が触れた。
(今度こそ……)
目を閉じて、わずかに首を傾げる。唇に唇が押し付けられた。
そしてリチャードが私の唇を吸出した。さっきのキス以上にドキドキする。それは両思いになって初めてのキスだからだ。
(気付けば自分から唇を動かしていた)
本当におかしな関係だ。結婚の約束をしてから告白するなんて、順番がめちゃくちゃだ。こんからも、こんなことがありそうだ。
次はどんな事起こるのかと思うと
楽しみだ。


**

   リサが好意を寄せている事は知っていた。それでもやっぱり、バツイチ子持ちは嫌だと気が変わるかもかもしれないと思っていた。歳の差だってある。
まだ若いリサには荷が重いかもしれないと……。
それなのに、三十近くのバツイチ子持ちのオッサンに、それでも良いと言ってくれた。
私にとっては、言葉では言い尽くせない存在だ。

**

   私を抱っこしているリチャードをチラリと見る。
さらさらで柔らかい金髪。薄く引き締まった唇。色を変える瞳。
勿論スパダリ。誰だって好きにならずにはいられない男。
全部が私のもの。紆余曲折あったが私とリチャードは恋人同士になった。
(ふふっ、初彼氏)
なんて素敵な言葉。私にも春がやっと来た。
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