猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました

あべ鈴峰

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作戦会議

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   前世も含めて初めて彼氏ができました。甘々 ラブラブのスタートです。もちろん 今までだって好きな人はいた。だけど、その相手が リチャードだなんて最高。

それでも不思議だ。
相手の気持ちも知らないのに告白なんて、人間だった時は絶対しなかった。傷付くのも嫌だったし、自分に自信が無かった。
だけど、猫だからか、相手がリチャードだからか、本能のままに行動していた。指摘されたときは 穴があったら入りたい気持ちだったけど、結果両想いだと分かって めでたし めでたし。
まあ、リチャードども私が好きじゃなかったら 何度も手を出して来なかっただろう。

隣に居るにリチャードが居る。
それでも、私たち恋人同士になったんだよね? 私に好きだって告白したよね? 夢じゃないよね?そう聞きたい。でも今の私は『にゃ~』としか言えない。その事がもどかしくて堪らない。私の視線に気付いたのかリチャードと目が合った。途端ドキドキして気恥ずかしくなる。つい、目を逸らしてしまった。すると、身を屈めてホッペにチュッとキスされた。
(なっ)
不意打ちキスにホッペを押さえる。身体が小刻みに揺れている。見るとリチャードが肩を揺らしている。
「この続きは今晩ね。リサ」
そう言ってリチャードがウインクした。その言葉に 生々しく昨夜の事が甦って全身がのぼせそうになる。暫くは 慣れそうにない。

**

   ドミニクは長い廊下を歩きながら壁の装飾品を見ていた。
(美術館に来たようだ)
こんなところに 平民の私が 大手を振れるとは……。やはり、金は万能だ。ちょっとばかり袖の下を渡せば面会などたやすい。
それを受けたエリザベートも、よほど切羽詰まっているのだろう。
エリザベートは既に三十近い。子を産むのにはギリギリの年齢だ。夫の関心を引けないと捨てられる程度の女だ。長年、バンドール家を監視している私は 二人の馴れ初めから破局まで。そして、その後も知っている。だから、エリザベートがこの事に賭けている事も知っている。私としてはありがたいタイミングだ。
 例え、物だとしてもバンドール家に持ち込める千載一遇のチャンスだ。何時もは森にも 屋敷にも 入り込む事が出来ないんだから。 

   使用人がドアを開けると外観同様凝った作りの部屋になっていた。関心は無いが さぞ立派な部屋なんだろう。その中心に神経質そうなエリザベートが座っている。相変わらず美人だがそれだけだ。貴族特有の傲慢さが鼻に付く。
片肘を折って頭を下げた。



紅茶と言う色水を飲みながら、
「息子さんを取り戻すお手伝いをさせて下さい」
と切り出した。ちょっとの同情心と利害が一致、それさえあれば 計画に引き込むのは赤子の手を捻るくらい簡単だった。しかし、エリザベートは素直に返事をせず胡散臭そうに私を見る。所詮、元平民と侮っている。貴族は本当に馬鹿だ。私がここまで生き残れたのは人を出し抜く頭があるからだ。
「ドミニク、どうしてあなたがそんな事を言うの?」
そう聞かれるのは想定していた。
男爵の爵位を持っているが ずっと研究ばかで、一度も社交界に顔を出した事も無い男の突然の訪問だ。怪しまれるのは承知の上だ。そして、それを利用すればもっともらしい理由になる。ドミニクはバツが悪そうに視線を外すと、俯いたまま喋り出して言い淀む。
「実は……研究費が……」
こう言えば納得するだろう。分かるでしょと俯いたまま視線を送るとエリザベートが見下すように 笑った。
(金に困っていると思っているな)
なんて愚かな女だ。少しでも私のもう一つの顔を知っていれば、こんな態度はとれない。
「それでどんな方法なの?」
あっさりと食いついて来た。
色々と口説き文句を考えて来たのに拍子抜けするほどだ。
これだから身分の高い女は馬鹿なんだ。直ぐ信じる。
爵位が下の者は自分を騙すと考えてはいない。嫌な奴らだ。

   自分の計画を話し出すとエリザベートが身を乗り出した。
手ごたえを感じる。
このプランは小僧の裏をかける作戦だ。その為には小僧の家の見取り図が必須だ。エリザベートがメイドに紙とペンを持って来るように言いつけた。これで 準備は整う。成功すれば、私はザブマギウムを、エリザベートは息子を、それぞれ手に入れられる。しかもこれは二重の策になっている。自分の思い通りに事が進む事にニヤニヤしないように笑いを噛み殺した。


**

   ペンを置いた エリザベート はふと我に帰った。
かび臭い匂いを我慢してまで何でこんな醜い老人と話をしているんだろう……。
マーカスのプレゼントには自信がある。だけど、今年も失敗するかもと思うと不安から、どうしても
この男の話を無視出来なかった。
執事の話では私は知らないが有名らしい。その執事の薦めで会った。でなければ門前払いだ。

  エリザベートはその臭いが自分のドレスに付くのではないかと気が気では無い。それでも笑顔をキープした。老人の濁った汚い眼が私を見る。嫌悪感を出さないよう精一杯で、集中して話を聞く事など出来なかった。老人が私を見てあからさまに溜め息をつく。
それが私に対するものだと知ってムッとして睨みつけた。しかし、意にも介さず紙を一枚私に押し付けた。
「これに詳しく書いてあるから段取りを確認しておけ」
乱暴な口調に目の下が痙攣する。
それだけ藺生と老人はさっさと帰って行ってしまった。一人取り残されたエリザベートは同じ空気を吸いたくなくて詰めていた息を吐くと、同時にドアに向かって文句を言う。
「これで、失敗したらただじゃおかないわよ」
(みんなで 私をバカにして)
今に見てなさい。唇をかみしめた。


**

   リチャードはリサが動けないように両手首を押さえながらぬるりと乳首の周りに円を描く。甘いキスをするだけでリサは人間になれるようになった。前はもっと先へ進まないと駄目だったのに……。
(精神的なものも関係しているのかもしれない)
『女は心で濡れる』前に誰かが言っていた。
女は相手の事が好きだから乱れる。そして、信頼しているから体を開く。淫らな自分を見られるのが恥ずかしいくせに、見て欲しいと心の底では思っている。
まさに、今のリサだ。尖った乳首をトンと指で叩いただけで、刺激になって、半身を合わせた場所が熱くぬめって行く。間に手を差し込むと何の抵抗も無く滑るように花芯に導かれる。充分潤っている。でもまだだ。若い男のように自分優先ではない。オジサンにはオジサンのやり方がある。
しつこく、しつこくほぐして、声で、体で、哀願させるほど焦らす。そして、その手順を同じにすること。
ワンパターンで体を重ねれば重ねるほど相性が良くなる。気持ち良い事は体が直ぐ覚えるから、濡れるのが早くなる。この次はこれが来る。そう言う期待に体が反応するものだ。リチャードはリサの足を閉じさせる。閉じた太ももが作る三角形の隙間に、中に入れず、代わりに自分のモノを出し入れする。先端がぬめった道を通り、小さな突起にぶつかる。戻すと自分のカリが引っかかりながら太ももの隙間を抜ける。
行きも帰りも刺激が加わる。リサに男性経験が無いのは最初から分かっていた。だからこそのお預け。そうすれば、最高の初体験になる。リサの太ももを両脇から押さえて子種を搾り取るように挟む。
「はぁ、はぁ、はぁ」
互いに肩で息をしながら どちらからともなく見つめ合った。私を見る目は既に女だ。リサの桜色に染まったお腹に自分の子種が飛沫のように白く描かれた。それはまるで私のものだと言う印のようだ。

**

  主を待つ執務室ではニックを始め使用人が一堂に会していた。皆の顔は余り捗々しくない。
今年もあの日が近付こうとしている。その事が理由だ。雑談などもせず皆が押し黙っている。そんな重い空気の中、ガチャッとドアが開いてリチャードが入って来ると緊張が走った。皆が起立してリチャードの着席を待つ。まるで軍隊のように規律が守られている。
そして、軽く頷くリチャードも司令官のように厳しい顔をしている。リチャードが席につくと、皆も席に着いた。

  皆の視線がリチャードに向く。
その視線を受け止めると、ドンと机にリチャードが両手を着く。
「今から作戦会議を始める」
その一言に全員が同時に頷く。
そして、その瞳には作戦を成功させたいと言う強い意志があった。

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