巡り巡って風車 前世の罪は誰のもの

あべ鈴峰

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第七集

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  徐有容は 思ったようにいかないことに焦りを感じていた。いつまでたってもお父さんが来ない。ずっと同じ場所に閉じ込められている。

 立ったり座ったりを繰り返していた。待つように言われてるけど落ち着かない。別人だと分かってもらう為に色々と話したけど、俊豪さんと話をすればするほどズレていることに気付き不安になる。
光海は大きな都市なのに俊豪さんも 部下の応時さんも聞いた事も無いと言う。
(見せてもらった地図に光海はのっていなかった)
ウソをついてようでも 私をだまそうとしているようでもなかった。
「………」
一番心配なのは 私が二人の期待にこたえられないことだった。
嫌われてしまっただろうか?
私の話を聞いてガッカリするのが分かる。
その事に罪悪感がつのる。見た目は似てると言われたけど本物の徐さんはお嬢様だ。
う~ん。
でも、自分自身も どうしてこうなったか分からないんだから 知らないモノは答えられない。本物の徐さんのお父さんは死んでいて名前も違った。俊豪さんの話振りからも 私の本当のお父さんは知らないみたいだ。だったら、お父さんは私を捨てたんじゃない。居場所が分からないから迎えにこんないんだ。
だからお父さんが探しに来ないんだろうか? ここに来て初めて安心して体の力がぬける。あとは帰るだけだ。
(ここはどこなんだろう……)

  場所の名前をさがそう とあちこち視線を動かすが ヒントになるようなものがない。テーマパークや映画のセットみたいだけと考えたけど、ここに来てから今まで何一つなじみのある物がない。何より電化製品が無い。今の時代そんな事無いなんてありえない。わかってるのはすごく遠い場所だと言う事だ。
(どうしよう……)
帰るのに時間がかかったらお父さんに遅いとしかられる。ものすごく打たれる。何の連絡もしてないから 私が逃げたと思ってカンカンに怒ってるかも……。
帰りたくない。でも帰らないと、もっともっと怒られる。痛いのは嫌だ。店もずっと休んでるからきっとクビだ。
(どうしよう……)
そうだ。俊豪さんたちから無断欠勤ではないと、話してくれれば怒られない。そうだ。たのもう。いっしょうけんめい言えば、きっとやってもらえる。

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 俊豪はこの事件を再考する為、今までの資料を一から読み直していた。
徐有蓉を最初に知ったのは皇太子主催の茶会に出席したときだった。美しく才能があって一気に注目を浴びた。艶やか という言葉が似合う娘だった。しかし、私の好みではなかった。どちらかと言うと、手に余るという印象だ。そしてその美しさで男たちを虜にし、女たちの嫉妬の対象になった。皇太子の想い人では噂されていた。事実 親しげだったし 贈り物をもらっているのをこの目で見た。
徐の父親とは朝議で顔を合わせる程度で、名前を知っているくらいの関係だった。担当部署が違うとそんなものだ。歳も離れてるし。
聞き込みをしても父娘は慎ましい暮らしをしていたと言う事しか伝わってこない。
だから、知られていなかったのかもしれない。その徐有蓉を次に見かけたのは 父親の死に不信を抱いて再調査をして欲しいと頼んできた時だった。しかし、新しい証拠も証人も無い状態だったので、門前払いにされた。
(だが、二人の婚約の話しが出だした頃だった……)
その後、皇太子ではなく第二皇子に直訴して手を貸してもらったが、結局父親の死についてはそのままに。病死として確定した。
その調査をした事がきっかけとなって二人は恋に落ち。第二王子の想い人になった。
まあ、無くはない。自分の言うことを信じて手をかしてくれたのだから。自分への思いが冷めてあしらわれたことへの皇太子への恨みもあるだろう。だから、徐有蓉が第二皇子を皇太子にすべく暗殺を実行した。と、言うのも信憑性がある。

 それが事件のあらましだが……。一番の疑問は動機だ。徐家を調べたが皇室に対して恨みを持っている者は居なかった。となると、やはり徐有蓉個人の恨み?
徐有蓉の初めの想い人は皇太子だった。
皇太子妃になればその後の贅沢な暮らしが待っている。側妃だとしても皇子を産めば子を玉座につかせる事だって出来る。将来に希望が持てる。それなのに父親の再調査に手を貸してくれなかったからと言って、僅か一年で皇太子から第二皇子に乗り換えてしまったと噂されている。その事はどう考えても割に合わない。自分の命をかけてまで第二皇子に玉座を?女心と秋の空と言う言葉がある。そのように心変わりする事も無くは無いのかもしれないが……。

 二番目の疑問は金だ。
父が死に伝の無い徐がどうして、東宮に侵入出来る。手引きしてくれる者が居る。一人や二人じゃないはずだ。第二皇子との場所が離れている。徐家には大して財も残っていなかった。残っていれば何処かへ嫁入りしていたはずだ。だから絶対に、カネとコネも貸した人間が他に居る。考えられるのは徐有蓉に悪い事を吹き込んで皇太子に裏切られたと思わせる事だ。そして、その恨みを晴らすのに力を貸すと唆す。
その人物とは……。第二皇子?
う~ん。腕組みして考えを巡らせてみる。
徐は第二皇子の優しさに触れて皇太子を更に恨み暗殺を企てたと言っている。
しかし第二皇子は、同情はしても男女の中では無かったと言っていた。つまり徐有蓉が勝手に第二皇子の為に動いた事になる。もしくは自分と同じ気持ちだと思い込んで……。
第二皇子が皇太子に理不尽な扱いを受けていたとか、そう言う事件があったならば、恨みが積もって犯行に及ぶ事もあるだろう。しかし、第二皇子は政事とは無縁の生活をしている。陛下は兄弟の争いを好まない。
たとえ、暗殺に成功したとしても認められるかどうかは疑問だ。
二人は公的行事の時以外接点が無い。
私兵を持ってない。二心無しと証明する為に
(………)
余りにも準備不足。
事件の真相は完全に迷宮に嵌ってしまった。別の方向から考える必要があるな。


 「俊豪様。皇太子殿下がお越しです」
「皇太子が? お通ししろ」
考えが中断された。応時が膝をついて返事を待っている。迎え入れるために自分も立ち上がる。皇太子浩然の来訪の目的は分かっている。被害者なんだ。命を狙われたのだから捜査が進展しないことに焦れているのだろう。
俊豪は、皇太子であり私の母方の叔父である浩然を迎える。

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 眠っていた徐有容は聞き慣れない鳥の鳴き声に目を開ける。そこには蛍光灯ではなく、木のハリが目に入る。ここはどこ?
車の音は聞こえない。光が部屋に差し込んでいている。その見なれぬ天井に恐ろしくて心臓がキュッと痛む。身をかくすように布団を引き上げた。だけど、ふわふわの感触に、つかんだ手をゆっくりはなす。真新しくキレイな布団を見て昨日のことを思い出した。
(そうだ。人ちがいだとやっと分かってもらったんだ)
薬を飲んだとたんねむってしまって記憶がないけど、誰かが運んでくれたんだろう。
たしかめるように体をさする。痛くないし、息も楽に吸える。服もぬれて無い。ゴウモンも終わったんだ……。
これ以上ひどい目にあわなくて済むんだとホッとする。布団をはいでゆっくりと起き上がると辺りの様子を見る。
知らない部屋だがとてもキレイだ。

 自分が住んるアパートみたいにうすぐらくて、せまくて汚かった部屋とは大違いだ。
部屋に置いてある物はきれいだし、花がかざってあって良い匂いがする。我が家とは大違いだ。ドラマに出て来る公主が住んでそうな部屋だ。こんな部屋を利用できるなんて信じられない。服も新しい物になった。
私の所に来た女の人たちが服を用意してくれてた。初めての服にかってがわからなかったが手伝ってもらって着替えた。下着にTシャツにジーパンくらいしか着ないから、こんなにたくさん着るのかとおどろいた。
金太郎の腹巻みたいな下着にズボンにくつした。その上に二枚。最後にそでなしのみごろを着て帯に帯紐。どれも美しくてキラキラしてる。たとえ一時でもこんな事を経験が出来たんだから私は幸せ者だ。このまま幸せな気分にひたっていたい。でも、ねぼうはダメだ。
布団から出ようと床に足がつくと、その冷たさに現実が襲って来た。
頭の中に父さんの顔がうかぶ。
私がこんなに良い思いをしてると知ったら……。殺されちゃう。間違いない。お父さんの性格じゃ絶対そうなる。つまみ食いしただけでなぐられた。
帰りたくない。まだ死にたくない。なぐられのも嫌だ。そでぐちでにじむ涙をぬぐう。
このままここいられたら幸せなのに……。
そんな事を考えていると、扉の開く音にギクリと振り向いた。


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