巡り巡って風車 前世の罪は誰のもの

あべ鈴峰

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第四十五集

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「はぁ~」
朝起きてため息。昼休みのため息。家に帰ってもため息。それしか出ない。 一体どうしたらいいんだ。
「はぁ~」
天祐は星ひとつない空は見上げてため息を一つつく。


4の8

東岳国 過去

 容容は一息入れようと近くの石に腰かけた。歩いても歩いても景色が変わらない。
進む方向を間違えたのか、田舎過ぎて誰も住んでいないのか、馬車にも人にもすれ違わない。このまま森で夜を明かすことになるのかと空を見げた。照り付けていた太陽も傾き始めている。何時もなら、この時間は晩ご飯を作っていた。
急に居なくなったから天祐さんは心配しているかな? それとも勝手に入れ替わったと怒っているかな? もしかしたら私が入れ替わった事に、まだ気付いていないかも……。
天祐さん一人で大丈夫だろうか?
家事全般私がしていたから洗濯機も回せない。ご飯も炊けない。
途方に暮れる天祐さんの姿が目に浮かぶ。
こんな事なら教えておけばよかった。
心配だ。私が居ないと何も出来ないから。

 凄く困っているのが想像できる。
一日でも早く向こうの時代に戻らねば。
休んでなどいられない。コクリと頷くとスクッと立ちあがる。そして、左右を見る。
「んー、どっちに行けばいいのかな?」
ここで間違えると、余計に遠くなる。
(んー………)
悩んでいると焦げた匂いが漂って来た。
つまり家がある。
こっちだ!


 しかし、行けども行けども辿り付けなかった。臭いがするのに見つからない。
考えみれば臭いは風で拡散する……。
(こっちで、あってるのかな~)
今迄も運の良い事など無かった。そしてこれからもきっとない。自分の予想通りとうとう夜になってしまった。

 光海では夜でも明かりが消える事はない。でも此処は真っ暗だ。
(狐とか出て来そう……)
何処かで休みたいが。竹が揺れる音にも、自分の足音でさえ怖い。そのせいで歩みを止められない。
「疲れた……」
もう足が棒のようだ。それでも、疲れと恐怖と闘いながらよろめくように歩く。すると松明のような灯りが見える。
人だ! 人が居る。良かった……と
胸を撫で下ろした。しかし、直ぐに気付いた。このチャンスを逃したら、何日人に会えないかも分からない。
「居なくなる前に行かなくちゃ!」
灯りの見える方向に駆け出した。


 近づくにつれ相手の様子が分かってきた。黒ずくめの男の人が松明を持っている。身元を隠す為か、口を黒い布で隠している。
(………)
どう見ても怪しい人だ。ピタリと立ち止まった。ここのまま進むのまずいかも。例え自分が関係していなくても現場を見たと殺される。と相場が決まっている。両手で草をかき分けて、這うように草むらに隠れて様子を伺うことにした。
(こんな夜に 何をしているんだろう……)
他に人も居ないし、山の中だ。
黒ずくめの男が足下を蹴って何かを探しているようだ。


 微かだが焦げた臭いがする。
もしかして……現場に来ちゃった?
(困ったことになった……犯罪者かも……)
どうしてこんな場面に出くわすのか……。
運の悪い人間はどこまでも運が悪い。
だからといって死にたくはない。取りあえず犯人が居なくなるまで待とう。息を顰めていると、何処からか、金属が打つかり合う音がする。
(何? 今度は何が起きているの?)
こっそりと顔を出すと黒い覆面の男と誰かが戦っている。
これは犯人と刑事の構図!?
戦っている相手は誰だろう 目を細めたり 見開いたりして 二人の動きを追っていると、黒ずくめの男と戦っている人は顔を曝していることに気づく。見覚えがある。
(あれ? あの男の人……)
するとそこへもう一人が加わった。
「あっ!」
俊豪さんと応時さんだ。
二人が戦うんだから相手は悪人だ。


 三人の戦いは行ったり来たり物が飛んだりとドラマのようなアクションシーンが繰り広げられる。剣と剣がぶつかり合う音も地面を蹴る音も現実だ。ドラマとは比べ物にならないほどの迫力。本当の死闘。殺すか殺されるかだ。目の前で繰り広げられる本気の戦いにすっかり度肝を抜かれた。人の死を見るのかと想像するだけで背筋が凍る。体をガタガタ言わせながら、見つからない様にその場に座り込むと手を硬く組む。
(どうか早く終わりますように……)
そう祈った。


 かたずを飲んで見守っていたが、決着の着く気配がない。
(俊豪さんたちが、もし負けちゃったら……)
悪い方に考える自分の両頬を叩く。
駄目ダメ。二人いるんだから負けない。
物陰から頑張ってと応援していると、何か風の切る音がした。
「何? 何?」
……矢? 矢の音なの?
俊豪さんたちも物陰に隠れた。それに続いて、次々と風の切る音と何かに当たる音も聞こえる。
どっ、どこから狙っているの? 
両手で頭を隠してキョロキョロと狙撃して来る人を探すけど、真っ暗で何も見えない。

・・・

 急に静かになった。終わったの? 
どうなったのかと、恐る恐る草をかき分けて顔を出した。
……どうか俊豪さん達が勝っていますように。祈りを込めて目を向ける。
俊豪さんたちが剣をしまうのを見て戦いが終わったんだと確信した。
良かった。これで出て行ける。
「俊豪さん。応時さん」
立ち上がると手を振った。


4の9

 俊豪は小さくなっていく男の後ろ姿にガッカリしながら剣をしまった。
(取り逃がした……)
敵が向こうから来たと言うのに! 情けなさに臍を噛む。
「追うな!」
俊豪は、さらに後を追おうとする応時を呼び止めると首を振る。向こうは玄人だ。退路として馬の一頭も用意してあるだろう。
しかし、これでこの事件に皇太子が関わっているのは間違いない事が分かった。
だが、このままでは捕まえることなど到底無理だ……。
(………)
弱気な考えをした自分を
情けないぞ俊豪! とバンと自分の太ももを叩いて追い出した。
「応時、撤収だ」
「御意」
帰ろうと踵を返す。すると、
「俊豪さん、応時さん、大丈夫ですか?」
聞き覚えのある声で名前を呼ばれ辺りを見まわす。
誰だ? 女の声だ。若渓? いや違う。でも何処かで……。
闇に向かって目を凝らす。すると、自分に向かって手を振っている女を見て驚愕した。
(徐有容だ!)
そんな……まさか……しかし……。
んっ? 本物の徐有蓉が私に手を振るか?
「しゅっ、俊豪様。あの娘は……」
隣に立っている応時が指を差す。驚きを隠せないでいる。
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
自分に向かって屈託なく笑う徐有容を見て俊豪は訝しく思う。本物はこんな穏やかな顔をしたりしない。
それに、このペコペコした感じは……。
「そなた、小徐有蓉か?」
「そうです。小徐有蓉です」
どう言う事だ? 二人は入れ替わって無かったのか?
驚いていた応時も小徐有蓉だと分かると何時もの調子に戻つていた。
否……また入れ替わったと言うことか?
「何処に行ってんだ。急に居なくなるから探したんだぞ」
「ごめんなさい。私が元々いた現代に戻っていたんです」
「「現代!」」
では、徐有蓉は現代に逃げたのか?
あんなに必死に探し回っていたのに、良く我々の目を盗んで逃げられたものだ。
「そうです。そこに帰っていました」

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