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【完結】蓼食う虫も好き好き【催淫/青姦】
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しおりを挟むでも、腹が減りすぎてるこの極限状態。
虫と食い放題。どちらを取るかなんて明白だ。
極限とまで言うと大げさと思う奴も居るかもしれない。お前1週間卵かけご飯1食だけで過ごしてみろ。5日目あたりで塩だけ出して舐めるからな。
まぁ、これも人生経験と思えば…。
「もう、この際虫でもいいや。卵と醤油以外の味と栄養が欲しい」
肩を落としてそう言うと、伊織は驚いたように目を見張って身体を起こした。自分で言っといてなに驚いてんだよ。
睨みつける目線がじっとりと湿る。
「でもお前も手伝ってくれよ?俺虫なんかどうやって食えばいいのかわかんないんだから」
セミが食えるのは分かった。でもどうやって食うんだよ。焼くのか?煮るのか?いや、煮るのはなんとなく嫌だ。汁っぽい虫なんか食いたくない。そもそも虫を食いたいわけじゃないんだけど。
「あぁ、素人が勝手に食うと危ないのもあるからな。車出せよ?折角買ったんだから」
虫食う素人も玄人も、どっちも嫌だ。ついでに納車後初のドライブが虫食うためっていうのもホントに嫌だ。あぁ、嫌だ。怖い。持って帰ってる間に車内に逃げたりして、知らない所で死んでたらどうしよう。いや、死んでるならまだいい、運転中に目の前に飛び出してこられたりしたら事故る自信がある。
「…で?どうしたらいいわけ?」
諦めて先を促す。終わったら全力で車内清掃すればいいんだ。持って帰る数をしっかり数えとかないと。
「急を要するなら明日にでも行くか?準備は俺がするからお前は長袖と長ズボン着て車出すだけでいい。貴重品は邪魔になるからいらない。着替えがあると完璧だ」
そりゃあどうも。至れり尽くせりだ。できれば普通に飯奢ってくれるのがありがたいんだけどな。
何で今日金曜なんだよ。もうちょっと心の準備がしたかった。いや、いつまで経ってもそんなものは出来ないだろうから、勢いで行った方がいいのか?下手に月曜とかで、「あぁ、5日後には虫食うんだ…」とか思いながら過ごしてたら仕事ミスりそう。うん、勢い大事だ。
「まぁ、そう、だな…。お前の予定さえよければ…」
伊織は「うん」と短く頷いて缶コーヒーを飲み干すように喉を上げた。それからちょっとだけ時間を気にしてニッコリと笑う。時刻はもうすぐ12:30というあたり。
「とりあえず、昼飯奢ってやるからしっかり体力戻しとけ。山登り、結構キツイぞ」
あぁ、それだけでよかったのに。最初にそう言ってくれてたら俺は虫を食うなんて選択は絶対取らなかった。まぁ、お前が嬉しそうでよかったよ。うん、友達として、それは素直に嬉しいよ。そんなに嬉しそうなのが虫食う仲間を見つけたからってことなんだろうなってのは、うん…複雑だけど。
「なぁ、ホントに虫食うの?虫じゃないとダメ?山に行くならイノシシとか鹿とかさ…」
それならまだ普通に食われてる肉だし、魚捌くのと同じ要領で捌ける気がする。いや、無理だったら近隣の住人でできそうな人を探すとか…。
食事の列に並んで伊織に声を掛けると、振り返った伊織は「とんでもない」というような驚いた顔をしていた。
「お前、100キロの肉塊が45キロで突進してきてもそれ食うために身体張れるか?虫取り網で?」
すみませんでした。無理です。
しゅんとなって俺が首を振ると、伊織はふん、と鼻で息を吐いて、「出くわしたら急がず焦らず背を向けず、だ」と言いながら前に向き直った。
それから俺は、「服の色は黒は避けろ。黒は蜂が来る」とか「できれば足首まである靴でこい。蛇は足首を狙う」とか、やたら具体的なアドバイスを受けて、午後の仕事に戻った。
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