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【単話】SS
ルパンモデル【お気に入り500人記念SS】
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「奏さん、起きてください」
8:00
隣で眠る奏さんの頬にキスをする。
これをしないと起きないって言い張るんだ。どこの欧米人だよ。
「ん…、るいくん…今日おやすみだよ…?まだ寝てようよ…」
奏さんは寝ぼけ眼のまま僕を腕に抱き込んで胸に顔を埋めると、ずるずると布団の中に潜り込んだ。ちょっと、離してくださいよ。お尻撫でないでっ
「ダメです。あなたほっといたら一日寝るでしょう」
僕は朝から動きたいんだ。掃除もしたいし、布団も干したいし、折角ゆっくり出来るのに寝ちゃうなんてもったいない。
「…アナタってもう一回言って。新婚さんみたい」
胸の中からとろりとした上目遣いの視線が送られてきた。
……コイツ。
意識せずに言った言葉を拾われて気恥ずかしくなる。そういう意味で言ったんじゃない。
「…言ったら起きてくれますか?」
じっとりと湿った視線で上目遣いを見下ろすと、奏さんはちょっと考えるふうに「うーん」と唸ってから、いたずらっぽい顔になった。
「「大好き」もつけてくれた…」
「調子に乗らないでください」
あんたは息をするみたいに僕にそう言うけど、僕からするとそう易々と言うような言葉じゃないんですよ!
僕は先生を引っぺがして布団から出た。
8:30
コーヒーを点てる。
飲む度に点てるけど、朝一のコーヒーはちょっと特別な気がする。上手く点てれるかどうかで一日のスタートの気分が違うんだ。
豆を計って、コンコン、と空気を抜いて、慎重にお湯を注ぐ。急いじゃダメだし、ゆっくりならいいってもんでもない。中々このさじ加減が難しいんだ。
今日は大成功。きっといい事がある。
上手く点てれたやつを飲んでもらえるのも、嬉しい。そんなこと絶対言わないけどな!
8:45
砂糖を2杯入れたコーヒーを持って寝室へ。
「奏さん、コーヒー入りましたよ。起きてくれないんですか?冷めちゃいますよ?」
サイドテーブルにコーヒーを置いて、「ん゛ー」と唸る奏さんの頬にもう一度キスをする。
「…くちにして」
ホント、この人は…。
この期に及んでまだ寝穢く布団に包まろうとする先生の唇をぎゅむっと摘んで、耳元に口を寄せた。
「…今すぐ起きてくれたら、舌入れてあげます」
「おはよ」
「ん」と唇を尖らせてキス待ち顔で起き上がった先生にため息を吐いて、ちょっと大人なキスをした。
「るい君、デートしよ」
うとうとする奏さんの身支度を整えてあげて、朝食の準備をしていると唐突にそう言われた。
またそうやって思いつきでものを言って…。それがさっきまで布団でうだうだしてた人の言葉ですか。
僕はいつもそれに振り回されてるわけだけど、それが案外嫌じゃないと思っちゃってるんだよなぁ。
「いいですよ。お任せします」
掃除は午前中で終わってしまうから午後は特に予定もないし、一日天気もいいみたいだから布団は帰ってから入れればいいだろうし。
それに、デートなんて、ウキウキする。
僕はちょっと上機嫌になって奏さんのコーヒーに砂糖を入れた。
「奏さん、車持ってたんですね!しかもこんなマニアックなの!」
目の前には淡い黄色のころんとした車が停まっている。まずい、テンションが天元突破しそう。
フィアット500 チンクエチェント
某怪盗三世がとんでもないものを奪っていく映画で乗ってたやつだ。
現行モデルを似せたやつじゃない。ガチの2代目。まさか実物を拝めるなんて。
「うん、可愛いでしょ?ぼく、好きなの」
奏さんにこんな趣味があったなんて。趣味らしい趣味なんて聞いたこと無かったから。
かく言う僕も車は大好きだ。免許持ってないけど。
「探偵が怪盗の車に乗るなんて、なかなかエッジの効いたジョークですね」
助手席に乗り込んで隣に座る奏さんを見やると、奏さんは「ふふ」と悪戯っぽく笑ってギアを1速に入れた。
ごみごみした街中を抜けて、郊外の穏やかな道をのんびり走る。
よかった、例の映画みたいなスリリングな運転じゃなくて。この人外面魔人だからハンドル握ったら豹変しそうでちょっと怖かったんだ。
「どこ行くんですか?」
かれこれ1時間くらい走ってるけど一向に目的地に着く気配がない。むしろどんどん何も無くなってきてる。
だんだん不安になってきて聞いてみた。
僕やだよ?未開の地とか。
「ん?知らないよ?」
は?
え?なにその当然でしょみたいな顔。僕が間違ってるの?
…いや、僕は絶対間違ってないからな!
デートでしょ?普通はどっか雰囲気のいい所に行って、恥ずかしいけどちょっとくっついたりして…そういうのじゃないの?!
唖然として奏さんを見つめると、しれっとした顔で前を見ている。
もう、なんなのこの人…。いっつも僕の予想の斜め上を行く。僕は振り回されっぱなしだ。
でも、嫌じゃない。嫌いじゃない。
むしろ…
「はぁ…。奏さんのそういうとこ、嫌いじゃないですよ。…結構、好きです」
…ちょっと、前見て!キスは後で!!
8:00
隣で眠る奏さんの頬にキスをする。
これをしないと起きないって言い張るんだ。どこの欧米人だよ。
「ん…、るいくん…今日おやすみだよ…?まだ寝てようよ…」
奏さんは寝ぼけ眼のまま僕を腕に抱き込んで胸に顔を埋めると、ずるずると布団の中に潜り込んだ。ちょっと、離してくださいよ。お尻撫でないでっ
「ダメです。あなたほっといたら一日寝るでしょう」
僕は朝から動きたいんだ。掃除もしたいし、布団も干したいし、折角ゆっくり出来るのに寝ちゃうなんてもったいない。
「…アナタってもう一回言って。新婚さんみたい」
胸の中からとろりとした上目遣いの視線が送られてきた。
……コイツ。
意識せずに言った言葉を拾われて気恥ずかしくなる。そういう意味で言ったんじゃない。
「…言ったら起きてくれますか?」
じっとりと湿った視線で上目遣いを見下ろすと、奏さんはちょっと考えるふうに「うーん」と唸ってから、いたずらっぽい顔になった。
「「大好き」もつけてくれた…」
「調子に乗らないでください」
あんたは息をするみたいに僕にそう言うけど、僕からするとそう易々と言うような言葉じゃないんですよ!
僕は先生を引っぺがして布団から出た。
8:30
コーヒーを点てる。
飲む度に点てるけど、朝一のコーヒーはちょっと特別な気がする。上手く点てれるかどうかで一日のスタートの気分が違うんだ。
豆を計って、コンコン、と空気を抜いて、慎重にお湯を注ぐ。急いじゃダメだし、ゆっくりならいいってもんでもない。中々このさじ加減が難しいんだ。
今日は大成功。きっといい事がある。
上手く点てれたやつを飲んでもらえるのも、嬉しい。そんなこと絶対言わないけどな!
8:45
砂糖を2杯入れたコーヒーを持って寝室へ。
「奏さん、コーヒー入りましたよ。起きてくれないんですか?冷めちゃいますよ?」
サイドテーブルにコーヒーを置いて、「ん゛ー」と唸る奏さんの頬にもう一度キスをする。
「…くちにして」
ホント、この人は…。
この期に及んでまだ寝穢く布団に包まろうとする先生の唇をぎゅむっと摘んで、耳元に口を寄せた。
「…今すぐ起きてくれたら、舌入れてあげます」
「おはよ」
「ん」と唇を尖らせてキス待ち顔で起き上がった先生にため息を吐いて、ちょっと大人なキスをした。
「るい君、デートしよ」
うとうとする奏さんの身支度を整えてあげて、朝食の準備をしていると唐突にそう言われた。
またそうやって思いつきでものを言って…。それがさっきまで布団でうだうだしてた人の言葉ですか。
僕はいつもそれに振り回されてるわけだけど、それが案外嫌じゃないと思っちゃってるんだよなぁ。
「いいですよ。お任せします」
掃除は午前中で終わってしまうから午後は特に予定もないし、一日天気もいいみたいだから布団は帰ってから入れればいいだろうし。
それに、デートなんて、ウキウキする。
僕はちょっと上機嫌になって奏さんのコーヒーに砂糖を入れた。
「奏さん、車持ってたんですね!しかもこんなマニアックなの!」
目の前には淡い黄色のころんとした車が停まっている。まずい、テンションが天元突破しそう。
フィアット500 チンクエチェント
某怪盗三世がとんでもないものを奪っていく映画で乗ってたやつだ。
現行モデルを似せたやつじゃない。ガチの2代目。まさか実物を拝めるなんて。
「うん、可愛いでしょ?ぼく、好きなの」
奏さんにこんな趣味があったなんて。趣味らしい趣味なんて聞いたこと無かったから。
かく言う僕も車は大好きだ。免許持ってないけど。
「探偵が怪盗の車に乗るなんて、なかなかエッジの効いたジョークですね」
助手席に乗り込んで隣に座る奏さんを見やると、奏さんは「ふふ」と悪戯っぽく笑ってギアを1速に入れた。
ごみごみした街中を抜けて、郊外の穏やかな道をのんびり走る。
よかった、例の映画みたいなスリリングな運転じゃなくて。この人外面魔人だからハンドル握ったら豹変しそうでちょっと怖かったんだ。
「どこ行くんですか?」
かれこれ1時間くらい走ってるけど一向に目的地に着く気配がない。むしろどんどん何も無くなってきてる。
だんだん不安になってきて聞いてみた。
僕やだよ?未開の地とか。
「ん?知らないよ?」
は?
え?なにその当然でしょみたいな顔。僕が間違ってるの?
…いや、僕は絶対間違ってないからな!
デートでしょ?普通はどっか雰囲気のいい所に行って、恥ずかしいけどちょっとくっついたりして…そういうのじゃないの?!
唖然として奏さんを見つめると、しれっとした顔で前を見ている。
もう、なんなのこの人…。いっつも僕の予想の斜め上を行く。僕は振り回されっぱなしだ。
でも、嫌じゃない。嫌いじゃない。
むしろ…
「はぁ…。奏さんのそういうとこ、嫌いじゃないですよ。…結構、好きです」
…ちょっと、前見て!キスは後で!!
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