【R18】BL短編集

戌依 寝子 (旧いろあす)

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【完結】のんびり雑談【敬語S/言葉攻め】

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『オフ会しましょう。都合教えてください』

そんなメッセージを受け取ってから数日後、俺は駅前の時計台の前に居た。
あれから最低限の日時や場所のやり取りをしてここに立っている。誰が参加するとか、どんな会にするだとかいう話は一切聞いていない。
いや、聞けていない、かな。
こちらから聞いても『僕に任せといてください』と一蹴されて、それ以上の情報がまったく降りてこないんだ。
ちょっと早すぎたかなぁ。
暇を持て余してなんとなしに周りを観察する。
定時を迎えたであろう人達がまるで吸い込まれるように駅に入って行く。
眺めていると面白いもので、吸い込まれたと思っていたら今度は吐き出されていく人達もいる。
駅は息をするみたいに人を吐いては吸ってを繰り返していた。

待ち合わせの相手、“きょう”さんは僕と言うからには男なんだろう。
男のカワボで売ってる俺のリスナーは圧倒的に女性が多い。男性も居るには居るけど少数派で、コメント率も高くない。
男性リスナーが何を求めて俺のチャンネルに来ているのか、いつも不思議に思っていた。
今日はそれを聞けるいい機会かもしれない。



「!」
時計台から響いた大きな音楽に驚いて身体が強張った。
駅の呼吸をぼんやり眺めてるうちにいつの間にか待ち合わせの時刻になったみたいだ。
もう来てるかな。どこに居るんだろ。
それらしい人を探しつつ、連絡が来てないかとスマホを確認する。
そうしていると斜向かいの銅像の前で同じように周りを気にしている男性がいるのを見つけた。

目が合う。

やば、気まず…。
思わず愛想笑いを浮かべて会釈する俺を気にしながら、男性はスマホを持ち直してなにやら操作しているようだ。
直後に手元からDMが届いたことを通知する「ぴぽーん」という軽い音がした。
確認すると
『まさとさん?』
と、一言だけ。
顔を上げると斜向かいの男性と目が合った。
彼はにっこりと笑って俺に向かって手を振っている。どうやら、彼がオフ会の主催者で間違いないようだ。
なんか、まるで出会い系だな。
DMだけのやりとりで、ぶっつけ本番で知らない奴と会う。
俺は手を振り返しながら、オフ会と出会い系の違いについてぼんやりと考えた。


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