最果ての

クエスチョンはてな!

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教室に戻るとすぐにいつもの3人が話しかけてきた。
「よくもまあのこのこ教室に来れたね平民、泥棒のくせに」
「そうだぞ、泥棒」
「お金が無いからって盗みを働くのは良くないよ」

   泥棒……?  何のことなのか分からない、もしかして

「しかも盗んだ物がクッキーとパンって、どんだけ生活に困ってるんだ?  本当にこの学院の恥だよ」
「早く退学しろ」
「魔術も使えないんだし」
「罪を働いた者にはそれ相応の罰が必要だろ?  働かざる者食うべからずって有名なことわざがあるのを君は知ってる? 僕たち優しいから君がちゃーんと働いて罪を償えるように仕事持ってきて上げたんだよね、先生が今日中にやっとけだってさ。ああ、安心して。失敗したら何回でもやり直せる仕事だしそんなに大切な仕事では無いらしいから。さすがに君なんかには任せられない仕事もあるからね。ほら 」
「期限は守れよ、泥棒」
「罪の償いには全然足りないだろうけどこれで優しい皆は許してくれるよ」

   言い終わるや否や彼らは自分たちの席に戻った。
   本当に盗んだわけじゃないのにこれだ。いや、事実なんて、理由なんてどうでも良いんだろう。周りの奴らにとって平民が学校にいることが気に食わなくてただ退学に追い込みたいだけなんだ。だからこそ性格悪く学院に通い続けて魔道士になってやるんだ。
   気付きかけてしまった矛盾に気付かないように「仕事」に目を向ける。
   これはまた大変だ。とりあえず置いといて、授業受けないと。都合の悪いことは見ないフリ、なんとかなる、大丈夫。

「これで帰りの会を終わりにします。さようなら」
「さようなら」

   帰りの挨拶が済んでみんな一斉に帰って行く。僕は帰れないけど。突っ伏して寝たフリをする。
   声が聞こえなくなって誰もいなくなくなったことを確認しようと顔を上げる。良かった、みんな帰ったみたいだ。
   仕事というのは明日実技の授業で使う全員分の魔法陣を途中まで書くという物だった。魔術を使えなくてもペンで書けるので僕でも出来るが魔術の方が何倍も効率が良い。魔法陣は印刷が出来ないので全部手書きするしか無いのだ。

「よし、始めるかー」

   1人だけの教室で呟いて始める。
   昨日は教室にいた黒髪のあいつ、ノア、がいないのは当たり前なんだけど寂しく感じた。
   失敗しても良いと言われたから……。
   杖を取り出して魔法陣を書いてみようとする。
   分かりきってはいたことだがもちろん書けなくて悲しくなった。でも大丈夫だ。
「最初はこんなもんだろ」って「最初は誰でも初心者なんだから気にしなくてもいい」ってノアも言ってたから。
     感傷に浸ってても仕事は終わらないので急いで手を動かした。

   日付が変わり、今日は一限目から実技の授業だ。昨日課された仕事は何とか終わらせ、数学の課題も終わったがほとんど眠れてないため頭があまり働いてない。

「気をつけ、礼、お願いします、着席」

   挨拶をして授業が始まった。周りの皆が杖を出し始めたので僕も出す。杖を出すと後ろから大きな声が聞こえてきた。
「あれ?平民、その杖どうしたんだ?こんなのいらないだろ、僕が折ってあげるよ」
   そしてこっちに来て即座に手から杖を取り上げられて、そこでやっと僕は自分のした過ちに気付いた。
「待って、それは人から借りた物だから、返さなきゃいけないんです」
   さすがに止めなきゃいけないと思い反射的に声をかけてしまった。
「はぁ?借りた物?この時間が終わったら返しに行けよ、見ててやるから」
   僕が喋ったことにびっくりしたのかいつもより話が短い。
   と、そのとき先生が手を叩いて

「はい、授業を始めますよ。今日は魔法陣を使います」

   と言ったので授業を止めてしまっていたことに気付いた。
   杖は相手が持って行ってしまったので今日も僕は授業を受けられなかった。

   何も出来なかったので退屈でなんなら少し眠ってしまったが実技の授業が終わってあいつが話しかけてきたので背筋を伸ばす。

「おい、返しに行くぞ。この杖に書いてあるノアって魔道士の家系に生まれた出来損ないの三男ノア・ルイスであってるか?  こんなのどこで盗んだんだよ」

   出来損ないという言葉に引っかかったがなんとなく合ってる気がしたのでとりあえず頷いておいた。違ったらどうしよう。
    2-Aの前まで来て相手が急に立ち止まって杖を渡してきたので言葉を待っていると
「何で突っ立てんだよ。ここだよ、まさかクラスも知らないで盗んだの?早く返しなよ、僕向こうにいるから」
言われて教室を覗いてノアを探すと黒髪で目立つからかすぐ見つけられた。ノアは思った通り1人で寝てる、なんてことはなく数人の生徒と楽しそうに話していた。それにとても衝撃を受けて固まっていると

「何しに来たんだ?  アル」
   と声をかけられて驚く

「あの、借りてた杖を返しに来ました、急にすみません」
「はぁ?なんでまた、……なるほどねー。そういうことね」
   と言って教室からノアが出て
「その杖は昨日、私があなたに貸したものですが、新しいオーダーメイドの杖がもう手元にあるのでそれはあなたにあげます。私なんかの杖、それも古い物で申し訳ないですが、あなたにあげるので、なくしてしまった杖が見つかるまででも、大事に使ってください。では私はこれで」
   急な敬語にびっくりしてしまったがノアが目線を送ってきたのでやっとのことで口を開く
「ありがとうございます。大事に使います」
そう言うとノアは教室の中に入ってしまった。
なんだ、全然元気そうじゃないか。
「なんでお前なんかに……。まあどうせ出来損ないが持ってた古い杖なんか使いもんにならないはずだし、別に良いか。帰るぞ」
   何処から出てきたのかそう言ってクラスメイトが歩き出したので着いていく。出来損ないってなんのことだろう。
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