最果ての

クエスチョンはてな!

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聞きたいこととか話したいことがたくさんある、何よりもちゃんと「また明日」が来たかを確認したい。
   勢いよく階段を上っていると下から声が聞こえてきた
「そんなに焦ってどうしたんだ?  アル」
さっきも聞いたその声に酷く安心してしまう自分に怒りと不安を覚える。
「なんとなく、です」
「ふーん、なるほどね、屋上出ようぜ」
そう言われて扉を開けて外に出てすぐ
「あの、聞きたいこ」
「待て待て、そんなに焦っても俺はどこにも行かないからさ、とりあえずパン食べてからにしろ」
「パン……。あっ、忘れました」
そう言うとちょっとびっくりしてから相手は吹き出して
「焦り過ぎだろ、パンを忘れるレベルって」
「お昼ご飯どうしよう」
  言われなかったら多分気付いてなかったパンの存在が無いことが途端に悲しく感じられてきた。
「魔術の練習でパンを作り出してみたらどうだ?  あ、これから授業を始める、気をつけ、礼、お願いします」
「お願いします」
   反射で挨拶してしまった。とりあえず杖を出さなきゃ……、ってもう持ってた、完全に無意識で怖い。
   魔術を使えるように構える。そして魔力の流れをイメージする。さすがに三回目でここまでは出来るようになった。
   魔力の流れを体から杖に……パンを作りたいパンを食べたい……
   ポンっと音が出て二つパンが空中に出てきた。慌てて手で取る。
「おー、ちゃんと出来たな。それにしてもいつも俺の分までありがとうな、一つ貰うぞ。……あっま、いつもこんな甘いやつ食べてるのか?  逆に体に悪そうだぞ」
「購買のパンを悪く言わないでくださいよ、……う、あっま、これは全く別物のパンですね……今日も失敗か……」
落ち込んでると頭に手が置かれた。
「まあまあ、そんな落ち込むなって。いつかは成功するよ。うーん、俺が思うにアルは力を込めすぎなんじゃないかなって思う、もっとリラックスしてどんな物を作りたいかをじっくり考えてみるといいかもしれない。焦りすぎは良くない」
「そうなんですね、今度はそうやってみます、ありがとうございます」
「おう、そんで聞きたいことってなんだったんだ?」
「あー、えっとですね、隠したかったなら申し訳ないですが、今日杖を返しに行ったときに教室に案内してくれたクラスメイトが、あなたのことを出来損ないって言ってたのが気になりまして……」
「何となくそうかなとは思ったがそれ一年生の間でも言われてんだな。出来損ないなんだよ俺」
「テストがいつも満点なのにですか?」
「ああ、そうだよ。テストは満点だけど出来損ないなんだ。なんでかっていうと学年一位になれたことがないからだ。上の兄二人は毎回のテストで満点、学年一位を取ってるのに俺だけ取れてないから出来損ない。そんな理由だ。」
「テストが満点なのに学年一位じゃないって、どういうことですか」
「あー、えっとな、んー、まあアルしかいないし良いか。第一王子がさ、この学校にいるんだ。今俺と同じ二年生。そんでさ、第一王子なのに一位を取れない、なんてことがあったら色々問題になるんだよ。だから第一王子が一位になれるように俺の点数は毎回操作されてるんだ。王子よりいつも2点低く書かれて廊下に順位表が貼り出されてる」
「……そんなの」
「おかしいって思うよな?  俺も最初のときは思ったよ。まあ2回目までのテストは俺は先生が間違えたのかと思ってたけど3回目から操作されてることに気付いてその理由も分かって、解らなかったけど解ったことにして、今はもう諦めた。そんなもんなんだよ、理不尽なんだ」
「理不尽」
「まあ出来損ないって呼ぶには間違っちゃあいないんだよな」
「何でですか、実際の点数は満点でこんなに魔術を教えるのも上手いのに」
「これもアルにしか教えてないことだけど、俺の魔力は人より少ないんだ。だから魔術は使えても一日にたくさんは使えない。でも代わりに瞬間記憶が得意だぞ、それで毎回ほとんど勉強しなくても満点が取れる。皮肉だよな」
「……僕は魔力があっても余ってるくらいだから、あなたにあげられれば良いのに。」
「へー、魔力の譲渡が出来るの知ってんのか?  やってみるか?」
「やりませんよ!第一、……なんでもないです」
「冗談に決まってんだろ、想像した?  スケベ」
「うるさいです、やめてください」
   魔力譲渡の方法は2つあって僕は手から移す方を最初考えたがノアは体液からの譲渡の方を指してただろう。顔がそう言っていた。
   やりましょうって僕が言ったらどんな顔をしたのだろうと考えてそんなこと無いに決まってるのに想像してしまったのは事実だ。
「話がズレたけどそんなとこだ。だからもうこの世界に俺は期待も目標も何も無い、アルが学年一位取ってくれたら色んな意味で嬉しいよ」
「絶対学年一位取ります。テストで満点も取ります、でも」
「そうだな、アルが目標達成したら俺は安心して死ねるよ」
「取ってないのに、そんなことまだ言わないで下さい」
「前向きなのか後ろ向きなのか分かんねーな」
「誰のせいだと……」
   と言って口吃ってしまった。
「俺のせいか?  そんなわけないよな。アル、今日は早く寝ろよ、寝不足で色気が凄いことになってるから」
「色気って……」
「5人ぐらい女連れてても不思議じゃないくらいだな。」
「そんなわけ!未経験ですよ……」
「へー!見えねー!」
    棒読みで常套句を言われてとても不本意だ。
「棒読み過ぎでしょ、逆にあなたはどうなんですか」
「無いよ、こんなやつに女ができるわけ」
「じゃあ、男は?」
「いや、無いだろ、あるわけない、てかなんだよ急に」
確かに、僕は何を聞いてるんだ。今耳まで赤くなってるに違いない。今日はどうも思考がそっちの方になって良くない、別のことを考えないと……と視線を動かすとノアの赤すぎる口とか白すぎる手に目が止まり頭を振る。
「なんでもないです!あなたも早く寝た方が良いですよ!おやすみなさい!」
「さすがに早すぎだろ!」
と笑い声を聞いて逃げるように教室に帰った。
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