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砂と骨の都市、サザノール
ヨルムガンド
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窓の外で悲鳴が聞こえる。
皆上空を見上げて何かに怯えているようだ。窓からでは分からない。
「なんだ!?何をした!?」
「フェンリルが呼んだのさ。兄弟を」
「兄弟だと!?」
程なくして修道士と思われる男が応接室のドアを叩いた。
「アマン神父!大変です!蛇です!町を取り囲むほど巨大な蛇です!」
「蛇だと!?」
神父が私を睨みつける。
「言っただろ?アイツらは使い魔じゃない。アイツら自身の判断でこうしたんだ。私に止められる事じゃない」
「白々しい…!」
怒りに声を沸騰させる神父。今にも首を捻じ切れと命令しそうだが、そうはできないだろう。ヨルムガンドを止められる可能性があるのは私だけだ。
「形勢逆転、だな」
私がそう言うとアマン神父は頭を抱え、アランに放すよう指示した。アランは苦虫を噛み潰したような表情ながらも私を下ろした。
「町の人間すべてを人質に取るとは…なんたる巨悪…!」
アマン神父、残念ながらそんな罵倒は聞き飽きてるから全く心に響かないよ。
「フェンリル」
彼を呼ぶとすぐさま黒い煙が出現し、彼が飛びついてきた。私は床に押し倒され、舌でベロベロと顔を舐められる。
「ハハッ、そんなに心配だったか。ホント、小心者だなお前は」
だがおかげで助かった。
一頻り顔を舐め尽くした後、突然彼は表情を豹変させ威嚇を始めた。その先はアマン神父とアランだ。
怯える2人を横目に、私はサザニアの方へと向き直った。
「サザニア、手荒な事になってしまったが、私の目的は変わらない。君の命を救いたいんだ。世界はこの町だけじゃない。この世界を出ればきっと」
「…ッ!」
パァァンッ!
空気が弾ける音。痛烈な音と共に私の身体は投げ出され、床に転がる。彼女に…殴られたのか…?
見ると、彼女の目は怒りに燃え、沸々と煮えたぎるような涙を流していた。
「私の世界はここなの!ここしか無いの!」
叫びが頭の中にこだまする。外の喧騒も、ヨルムガンドの唸りも、何一つ聞こえない。彼女の言葉だけが響いた。
「あなたの世界では1人の命を救う為に世界をめちゃくちゃにするのが正しい事なの!?本人が望んでないのに無理やり別の世界に連れて行くのが正義なの!?」
サザニアから初めて感じる明確な拒絶。叩かれた頬の痛みで段々と頭が冷めてきた私は、何か取り返しのつかない事をした事に気がついた。
「そんな…違う。私だってこんなつもりじゃ…」
伸ばした手が叩かれる。手の痛みが曇った視界を晴れさせ、周囲の状況を明瞭にした。巨大な狼を連れ、町を取り囲む蛇を使役する強力な魔法使いが、怯える神父と巨人、そして立ちはだかる女性に迫る図。
「私はサザノールが好き…だから町を壊そうとするあなたを、私は絶対に許さない」
なるほど…この町では私はどう足掻こうと、馴染もうとしても、結局は余所者。
叫ぶ正義はこの町では悪なのか…。
「フェンリル、ヨルムガンドに帰るように伝えてくれ」
フェンリルが聞き返す様に頭を揺らすが、ひと撫ですると察したのか、黒い煙の中へと再び帰っていった。
サザニア達を見遣る。相変わらずサザニアは怒りで顔を歪ませ、その後ろの2人は怯えている。
「すまなかった」
そう言い残して、私はその場を逃げる様に去った。
皆上空を見上げて何かに怯えているようだ。窓からでは分からない。
「なんだ!?何をした!?」
「フェンリルが呼んだのさ。兄弟を」
「兄弟だと!?」
程なくして修道士と思われる男が応接室のドアを叩いた。
「アマン神父!大変です!蛇です!町を取り囲むほど巨大な蛇です!」
「蛇だと!?」
神父が私を睨みつける。
「言っただろ?アイツらは使い魔じゃない。アイツら自身の判断でこうしたんだ。私に止められる事じゃない」
「白々しい…!」
怒りに声を沸騰させる神父。今にも首を捻じ切れと命令しそうだが、そうはできないだろう。ヨルムガンドを止められる可能性があるのは私だけだ。
「形勢逆転、だな」
私がそう言うとアマン神父は頭を抱え、アランに放すよう指示した。アランは苦虫を噛み潰したような表情ながらも私を下ろした。
「町の人間すべてを人質に取るとは…なんたる巨悪…!」
アマン神父、残念ながらそんな罵倒は聞き飽きてるから全く心に響かないよ。
「フェンリル」
彼を呼ぶとすぐさま黒い煙が出現し、彼が飛びついてきた。私は床に押し倒され、舌でベロベロと顔を舐められる。
「ハハッ、そんなに心配だったか。ホント、小心者だなお前は」
だがおかげで助かった。
一頻り顔を舐め尽くした後、突然彼は表情を豹変させ威嚇を始めた。その先はアマン神父とアランだ。
怯える2人を横目に、私はサザニアの方へと向き直った。
「サザニア、手荒な事になってしまったが、私の目的は変わらない。君の命を救いたいんだ。世界はこの町だけじゃない。この世界を出ればきっと」
「…ッ!」
パァァンッ!
空気が弾ける音。痛烈な音と共に私の身体は投げ出され、床に転がる。彼女に…殴られたのか…?
見ると、彼女の目は怒りに燃え、沸々と煮えたぎるような涙を流していた。
「私の世界はここなの!ここしか無いの!」
叫びが頭の中にこだまする。外の喧騒も、ヨルムガンドの唸りも、何一つ聞こえない。彼女の言葉だけが響いた。
「あなたの世界では1人の命を救う為に世界をめちゃくちゃにするのが正しい事なの!?本人が望んでないのに無理やり別の世界に連れて行くのが正義なの!?」
サザニアから初めて感じる明確な拒絶。叩かれた頬の痛みで段々と頭が冷めてきた私は、何か取り返しのつかない事をした事に気がついた。
「そんな…違う。私だってこんなつもりじゃ…」
伸ばした手が叩かれる。手の痛みが曇った視界を晴れさせ、周囲の状況を明瞭にした。巨大な狼を連れ、町を取り囲む蛇を使役する強力な魔法使いが、怯える神父と巨人、そして立ちはだかる女性に迫る図。
「私はサザノールが好き…だから町を壊そうとするあなたを、私は絶対に許さない」
なるほど…この町では私はどう足掻こうと、馴染もうとしても、結局は余所者。
叫ぶ正義はこの町では悪なのか…。
「フェンリル、ヨルムガンドに帰るように伝えてくれ」
フェンリルが聞き返す様に頭を揺らすが、ひと撫ですると察したのか、黒い煙の中へと再び帰っていった。
サザニア達を見遣る。相変わらずサザニアは怒りで顔を歪ませ、その後ろの2人は怯えている。
「すまなかった」
そう言い残して、私はその場を逃げる様に去った。
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