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砂と骨の都市、サザノール
オモイカネ
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「あんたも見たじゃろ?あの大きな蛇!サザンの背骨にグルグルに巻きついて町を取り囲んでもまだ地平線まで続く尾の長さと言ったら!あまりの大きさに世界の終わりを予感したわい!」
宿屋で荷造りをしながら興奮した老商人の話を聞き流す。
「昔、別の世界であんな蛇の怪物の噂を聞いた事がある。元はミズガルズという世界の神から生まれた蛇で、別の神との戦いでその世界を滅ぼしてしまったとか。名前を…」
「ヨルムガンド」
「そうじゃ!それじゃ!しかし滅ぼした世界と共に消えたと言われておったが、何故サザノールに…?」
私の知り合いだからね、とは流石に言えないなぁ。
「あんた色んな世界の神話に詳しいみたいだね」
「そうじゃろうとも!」
そう声を張り上げたかと思うと、次は身をかがめてひそひそ声で話し始めた。
「実はな…この姿は世を忍ぶ為の仮の姿なんじゃ…ワシの正体は…聞いて驚くなよ…」
そう言って、老人は右掌の上に左拳を落とす。ポンという子 小気味良い音と共に瞬時に顔が変わり、凹凸の少ない顔に 黒目の少女の顔になった。
「知を司る神!オモイカネじゃ!」
…。
…。
…。
三拍の間。
「ほ、ほれ、神様じゃぞ?もっと驚かんか?」
いや、そんな珍しい物でもないし…。私も似たような物だし…。
あまりの反応の悪さに頬お膨らせるオモイカネ。
「はぁ…まぁ仕方なかろう…所詮は小さな世界の神様じゃし。今は転生して現役の頃の力も無いからの…」
「転生?」
「そうじゃ、元々は別世界の神じゃったが、その世界が滅んでの。不死ゆえに魂だけが世界の狭間に取り残され、人間の姿で生まれ変わったんじゃ。多少の術とそれまでの知識はあるが、世界の果てまで見通す千里眼も、あまねく音を聞き取る地獄耳も今はもうない」
しかぁし!とベッドの上に仁王立ちするオモイカネ。
「今は別世界を旅し、自分の足で知識を得るのが楽しくての!とうの昔に忘れていた知的探究心が目覚めてしかたないんじゃわい!」
定年退職してから改めて大学通い始めるタイプの人間だこりゃ。
「しかして旅の方、知の神としての今回の事件の推察を少し聞いてくれんかの」
お喋りな爺さんだな…。
今回、この町を混乱に陥れた巨大な蛇の怪物、名はヨルムガンドと言うんじゃがな。彼には2人の兄妹がおるんじゃ。
彼の弟に狼のフェンリル、末っ子には死の女神ヘルという者がおる。3人ともとある神から生まれ、世界を混沌に陥れる事を目的としておる。
実は今回、ヨルムガンドだけでなくフェンリルと思しき巨大な狼も見たという者がおったんじゃ。
三兄弟のうち2人が集う、この現象に説明をつけるなら一つしか考えられん。
彼らの父、悪戯の神ロキがおったからじゃ。
彼奴の世界、アースガルズはヨルムガンドと雷神トールのラグナロクによって滅びた。
おそらくロキもワシと同じく人間の姿に転生し、このサザノールに来ておったのじゃろう。
転生後の人間の身体は脆い。その彼に命の危険が及んだ故に、あの2人が駆けつけたんじゃろうな。
「しかしその2人が何故そのあと町を破壊せずに引き下がったかは全くの謎じゃ。知ろうにも2人はもうおらんからの。あとは、この世界に来ておるはずのロキに聞くしか無い」
そう言ってグイと顔をこちらに寄せてくる。
「旅の方、お主名は無いと仰ったな」
「そうだけど」
「もしや人間としての名がつけられてないだけで、本当は別の名があるのではないかの?」
感の鋭い爺さんだ事。
「ワシの転生は12回目での。900年間サザノールの様子をちょくちょく見に来てたが、別世界の怪物が現れるのは初めての事じゃ。その時丁度初めてサザノールに来る身元の知れぬ若者と出会った。我ながらご都合主義も甚だしいとは思うが、もしやと思っての」
はぁ…と溜息を深くついた。
「ヘル・デ・ゾルデロカ・シン」
「なっ…!」
地面にハラリと紙が落ちる。同時に少女の抜け殻もベッドの上に崩れ落ちた。
紙を拾い上げると、そこには少女の顔ではなく大きな涙袋と耳たぶを蓄えた禿頭の老人の姿があった。元の姿はこんなんか…。
「死の女神ヘルの魔術じゃろ!これで確信したわい!お主は」
「それ以上喋ったらこの紙でケツ拭いてトイレに流す」
「ハッ!そりゃ勘弁じゃわい!」
黙らないなぁ…もう。
「ひとつだけ聞かせてくれ」
紙の牢から解放されたオモイカネがベッドの上であぐらをかき、神妙な顔で質問する。
「何故サザノールに来たんじゃ?お主の目的は?」
目的…か。
「ここにくる前に、夢を見たんだ。ヨルムガンドが巨大な骨に巻きついてその下にある町を飲み込もうとする夢。私はそれを止めに来たんだ」
「予知夢か…。それで、実際に止められたんじゃな」
オモイカネが聞くも、私は答えなかった。実際のところは自分がフェンリルを通じてヨルムガンドを呼び、ま 町を滅ぼそうとしたなんて、言えるはずもない。オモイカネが全知の能力を失ってて良かったと思ってしまった。
「ふむ…お前さん、神話のようなカオス嗜好の悪どい神とは大分違うな」
一体私は神話でどんな酷い書かれようをしてるんだ?
「いつだってそうだよ。昔も今も。私はいつも自分の正義と良心に則って行動をしてる。それが、その他大勢と折り合いがつかない、それだけだ」
宿屋で荷造りをしながら興奮した老商人の話を聞き流す。
「昔、別の世界であんな蛇の怪物の噂を聞いた事がある。元はミズガルズという世界の神から生まれた蛇で、別の神との戦いでその世界を滅ぼしてしまったとか。名前を…」
「ヨルムガンド」
「そうじゃ!それじゃ!しかし滅ぼした世界と共に消えたと言われておったが、何故サザノールに…?」
私の知り合いだからね、とは流石に言えないなぁ。
「あんた色んな世界の神話に詳しいみたいだね」
「そうじゃろうとも!」
そう声を張り上げたかと思うと、次は身をかがめてひそひそ声で話し始めた。
「実はな…この姿は世を忍ぶ為の仮の姿なんじゃ…ワシの正体は…聞いて驚くなよ…」
そう言って、老人は右掌の上に左拳を落とす。ポンという子 小気味良い音と共に瞬時に顔が変わり、凹凸の少ない顔に 黒目の少女の顔になった。
「知を司る神!オモイカネじゃ!」
…。
…。
…。
三拍の間。
「ほ、ほれ、神様じゃぞ?もっと驚かんか?」
いや、そんな珍しい物でもないし…。私も似たような物だし…。
あまりの反応の悪さに頬お膨らせるオモイカネ。
「はぁ…まぁ仕方なかろう…所詮は小さな世界の神様じゃし。今は転生して現役の頃の力も無いからの…」
「転生?」
「そうじゃ、元々は別世界の神じゃったが、その世界が滅んでの。不死ゆえに魂だけが世界の狭間に取り残され、人間の姿で生まれ変わったんじゃ。多少の術とそれまでの知識はあるが、世界の果てまで見通す千里眼も、あまねく音を聞き取る地獄耳も今はもうない」
しかぁし!とベッドの上に仁王立ちするオモイカネ。
「今は別世界を旅し、自分の足で知識を得るのが楽しくての!とうの昔に忘れていた知的探究心が目覚めてしかたないんじゃわい!」
定年退職してから改めて大学通い始めるタイプの人間だこりゃ。
「しかして旅の方、知の神としての今回の事件の推察を少し聞いてくれんかの」
お喋りな爺さんだな…。
今回、この町を混乱に陥れた巨大な蛇の怪物、名はヨルムガンドと言うんじゃがな。彼には2人の兄妹がおるんじゃ。
彼の弟に狼のフェンリル、末っ子には死の女神ヘルという者がおる。3人ともとある神から生まれ、世界を混沌に陥れる事を目的としておる。
実は今回、ヨルムガンドだけでなくフェンリルと思しき巨大な狼も見たという者がおったんじゃ。
三兄弟のうち2人が集う、この現象に説明をつけるなら一つしか考えられん。
彼らの父、悪戯の神ロキがおったからじゃ。
彼奴の世界、アースガルズはヨルムガンドと雷神トールのラグナロクによって滅びた。
おそらくロキもワシと同じく人間の姿に転生し、このサザノールに来ておったのじゃろう。
転生後の人間の身体は脆い。その彼に命の危険が及んだ故に、あの2人が駆けつけたんじゃろうな。
「しかしその2人が何故そのあと町を破壊せずに引き下がったかは全くの謎じゃ。知ろうにも2人はもうおらんからの。あとは、この世界に来ておるはずのロキに聞くしか無い」
そう言ってグイと顔をこちらに寄せてくる。
「旅の方、お主名は無いと仰ったな」
「そうだけど」
「もしや人間としての名がつけられてないだけで、本当は別の名があるのではないかの?」
感の鋭い爺さんだ事。
「ワシの転生は12回目での。900年間サザノールの様子をちょくちょく見に来てたが、別世界の怪物が現れるのは初めての事じゃ。その時丁度初めてサザノールに来る身元の知れぬ若者と出会った。我ながらご都合主義も甚だしいとは思うが、もしやと思っての」
はぁ…と溜息を深くついた。
「ヘル・デ・ゾルデロカ・シン」
「なっ…!」
地面にハラリと紙が落ちる。同時に少女の抜け殻もベッドの上に崩れ落ちた。
紙を拾い上げると、そこには少女の顔ではなく大きな涙袋と耳たぶを蓄えた禿頭の老人の姿があった。元の姿はこんなんか…。
「死の女神ヘルの魔術じゃろ!これで確信したわい!お主は」
「それ以上喋ったらこの紙でケツ拭いてトイレに流す」
「ハッ!そりゃ勘弁じゃわい!」
黙らないなぁ…もう。
「ひとつだけ聞かせてくれ」
紙の牢から解放されたオモイカネがベッドの上であぐらをかき、神妙な顔で質問する。
「何故サザノールに来たんじゃ?お主の目的は?」
目的…か。
「ここにくる前に、夢を見たんだ。ヨルムガンドが巨大な骨に巻きついてその下にある町を飲み込もうとする夢。私はそれを止めに来たんだ」
「予知夢か…。それで、実際に止められたんじゃな」
オモイカネが聞くも、私は答えなかった。実際のところは自分がフェンリルを通じてヨルムガンドを呼び、ま 町を滅ぼそうとしたなんて、言えるはずもない。オモイカネが全知の能力を失ってて良かったと思ってしまった。
「ふむ…お前さん、神話のようなカオス嗜好の悪どい神とは大分違うな」
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